【実は危険!? 子どものいびき】睡眠時無呼吸症候群の疑いも!?[医師監修]

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いびきをかく子どもは、実は小児睡眠時無呼吸症候群かもしれない――そんなショッキングなツイートが話題になりました。これをきっかけに、「そういえば、うちの子もいびきをかいているんだけど……」と不安に思ったかたもいるのでは? 
そこで、子どものいびきの原因や睡眠時無呼吸症候群との関係、そして子どものいびきに異常を感じたらどうすべきかについて、「子どもの耳鼻科」の浅香大也先生にうかがいました。

目次

子どものいびきってよくないの?

通常、子どもはいびきをかきません。いびきをかく場合でも、「入眠後すぐだけ」「遊び疲れた日だけ」と、限定的であれば問題ありませんが、毎日かくようであれば要注意です。

いびきは、空気の通り道である上気道(鼻から気管の入り口まで)の一部が、何らかの原因で狭まることによって起こります。狭い通り道を空気が無理矢理通ろうとするので、粘膜などがこすれたり震えたりして、いびきの音が発生するのです。

また、上気道が狭くなっていては、睡眠時に十分な呼吸を行えず、熟睡できないのはもちろん、心身の発育・発達の妨げや顎顔面形態発育不全を引き起こすこともあります。

そのいびき、小児睡眠時無呼吸症候群かも!

いびきをかく子どもには、「小児睡眠時無呼吸症候群」という病気が潜んでいる可能性があります。小児睡眠時無呼吸症候群は、その名のとおり、睡眠時に無呼吸状態になる睡眠障害のことで、次のような影響をおよぼすとされています。

あくびをする子ども。

【小児睡眠時無呼吸症候群による影響】

・深い睡眠が取れず、成長ホルモンの分泌に影響がおよび、発育が遅れる
・あごの発育が悪くなり、歯並びが悪くなる。
・夜尿症(おねしょ)が続く。
・睡眠の質が下がり、昼間でも眠くなる。
・日中にぼんやりしたり、攻撃的な行動が増えたりする。

15歳以下の子どもでは、2%ほどが小児睡眠時無呼吸症候群と診断されています。

では、小児睡眠時無呼吸症候群の子どもには、どんな症状が現れるのでしょうか。

【小児睡眠時無呼吸症候群の症状】

・睡眠時にいびきをかく。
・寝ているときに口を開いている。
・寝返りの回数が多い。
・寝汗をかきやすい。
・夜尿症(おねしょ)を引き起こす。・咳や嘔吐で起きてしまうことがある。
・重度の場合、唇や指先などが青紫色に変化するチアノーゼを起こす。
・重症になると陥没呼吸から漏斗胸(胸郭変形)が生じる。

 

小児睡眠時無呼吸症候群では、子どもが自覚症状を訴えることは少ないため、保護者が子どもの睡眠時の状況をチェックしておくことが大切です。

小児睡眠時無呼吸症候群の原因って何?

いびきや小児睡眠時無呼吸症候群には、主に5つの原因が考えられます。

①アデノイド増殖症
アデノイド(咽頭扁桃)は、鼻の奥の突き当たりにある部分で、免疫にかかわるリンパ組織の1つです。鼻や口から入った病原菌などが体内に侵入しないように、門番のような役割を果たします。
一般的には、アデノイドは5歳くらいにもっとも増殖し、10歳ぐらいには消失しますが、何らかの原因で小さくならず、過度に大きくなってしまうのが、アデノイド増殖症です。アデノイドが大きいままでは、呼吸の際の空気の通り道が狭くなってしまうため、いびきや小児睡眠時無呼吸症候群の原因となるのです。

②口蓋扁桃肥大
口蓋扁桃は、いわゆる「のどちんこ」の左右の部分です。アデノイドと同様に、免疫活動にかかわる組織で、かぜをひいたときに喉が痛くなるのは、この口蓋扁桃が炎症を起こす(口蓋扁桃炎)ためです。
口蓋扁桃は3歳くらいから大きくなり始め、6~7歳には小さくなるのが一般的ですが、口蓋扁桃炎をくり返すなどの要因により、肥大化してしまうことがあります。それが口蓋扁桃肥大です。アデノイド増殖症と同様に、呼吸時の空気の通り道を狭めてしまうため、いびきや小児睡眠時無呼吸症候群の引き金となります。

③鼻づまり
アレルギー性鼻炎などで鼻がつまると、呼吸がしにくくなって口呼吸となり、いびきや小児睡眠時無呼吸症候群を引き起こしやすくなります。

④あごの小ささ
あごが小さいと、喉のまわりの空間が狭くなり、睡眠時無呼吸症候群になるリスクが高まるとされています。日本人をはじめとするアジア人は、欧米人よりもあごが小さく、下あごが後ろに下がっており、睡眠時無呼吸症候群の発症のしやすさとつながりがあると考えられています。

⑤肥満
肥満になると、体の内部に脂肪が蓄積します。咽頭、もしくはのどの周りに脂肪がついて、呼吸時の空気の通り道を狭めてしまいます

これら5つの原因は、単独で睡眠時無呼吸症候群を発症させることもあれば、いくつもの原因が重なることもあります。特に、①アデノイド増殖症と②口蓋扁桃肥大は、併発しやすいと考えられています。

<大見出し>

子どものいびき、何科を受診すればいい?

お子さんが小児睡眠時無呼吸症候群かどうかを診てもらうには、まずは耳鼻咽喉科を受診しましょう。耳鼻咽喉科では、お子さんの状態について問診します。その際、医師から尋ねられることの多いポイントは次のとおりです。ぜひ、チェックしてみてください。

【問診のチェックポイント① 睡眠時について】

・毎日の睡眠時間はどれくらいか。
・いつからいびきをかき始めたか。
・いびきの音量はどれくらいか。
・いびきをかいているときに、呼吸が止まることはあるか。
・夜尿症(おねしょ)はあるか。
・睡眠中に陥没呼吸(呼吸時にみぞおちがペコペコへこむ)を認めるか。

 

【問診のチェックポイント② 日常生活について】

・昼間に眠気が出るような症状はあるか。
・集中力が低下していないか。
・疲れやすい、または疲れが取れにくくなっていないか。
・口を開けてボーッとしているようなことはないか。
・食の細さは見られるか。

また、子どものくわしい状態を確認するために、睡眠時の様子を録画・録音したほうがよい場合もあります。医師の指示に従いましょう。

問診の次には、診察と検査を行います。診察では、主に口のまわりやあごの形などを確認し、全身の状態を確認します。検査では、鼻から内視鏡スコープを挿入し、口蓋扁桃やアデノイドなどの大きさを確認します。

これらの問診や診察、検査を経て、総合的に小児睡眠時無呼吸症候群かどうかを判断します。

小児睡眠時無呼吸症候群の治療法を知りたい!

小児睡眠時無呼吸症候群の治療には、主に手術や薬物療法を用います。治療法は、原因や子どもの年齢などを考慮に入れたうえで、医師・保護者・子どもの三者で話し合って決定します。また、状況によっては、いくつかの治療法を組み合わせることがあります。

①薬物療法
アレルギー性鼻炎が大きな原因である場合や、肥大化した扁桃組織を小さくする目的で、点鼻薬と飲み薬による治療を行います。子どもがまだ小さいときには薬物療法を行い、成長してから手術に移行することもあります。

②手術
アデノイド増殖症や口蓋扁桃肥大が重度である場合には、全身麻酔をしてアデノイドと口蓋扁桃を切除する手術を行います。入院期間は7~10日程度です。手術による改善率は80%以上と報告されています。
免疫にかかわる扁桃組織は、免疫機能の低下を防ぐためにも、4歳までは摘出すべきでないとの考えも以前はありましたが、現在では摘出しても支障がないことがわかっています。

③CPAP(シーパップ)治療
肥満が原因の場合には、CPAP治療を行うことがあります。これは、寝るときに鼻にマスクをつけて空気を送り込み、ふさがった空気の通り道を広げる方法です。また、肥満を改善するために、運動や食生活の指導もあわせて行います。

まとめ

子どものいびきは、「たかがいびきぐらいで」「鼻が悪いだけ」などと、見逃されてしまうこともあります。しかし、いびきは、体が発している異常のサインであることが少なくありません。もし小児睡眠時無呼吸症候群だった場合には、十分な睡眠が取れないのはもちろん、子どもの発育や発達に大きな影響をおよぼしてしまいます。お子さんのいびきが気になったときには、「たかがいびき」と思わず、迷わずに耳鼻咽喉科を受診してください。

この記事の監修・執筆者

浅香耳鼻咽喉科クリニック院長 浅香 大也

1997年、東京慈恵医科大学卒業後、同大学病院に勤務。2018年に東京都世田谷区に浅香耳鼻咽喉科クリニックを開業。

「みみ、はな、のど」に関するさまざまな病気について、乳幼児から年配のかたまで安心して受診できる、地域のかかりつけ医としての役割を果たすこと、そして、アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎などの炎症性鼻疾患に対して、免疫療法や日帰り手術など、専門的かつ総合的医療を提供していくこと、質の高い医療の提供、患者にとってわかりやすい説明、大学病院などとの緊密な提携を柱に、信頼できるクリニックを目指している。

また、キッズスペースも完備した「子どもの耳鼻科」として、乳幼児へのていねいな診察・対応も特長のひとつとしている。

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