虫歯ゼロを目指す! 歯の生え替わり期の虫歯予防対策【小児歯科専門医監修】

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虫歯ゼロを目指す! 歯の生え替わり期の虫歯予防対策【小児歯科専門医監修】

11月8日は「いい歯の日」。「乳歯から大人の歯へと生え替わりが始まったけれど、この時期は何をしたらいいの?」と、虫歯や食生活などが気になりますね。とくに生え替わり期は、生えてきた幼若(ようじゃく)の歯質が柔らかく、虫歯になりやすい時期です。虫歯の主な原因は「歯磨きが十分でない」「甘いものを食べる回数が多い」のふたつ。つまり、このふたつの問題を改善すれば虫歯を防ぐことができます。まだ歯磨きスキルが十分に身についていない子どもの虫歯予防について、小児歯科専門医の坂部潤先生にお話をうかがいました。

イラスト/湯沢知子 文/こそだてまっぷ編集部

目次

Q:ひとり磨きが不安。どうしたらよい?

A: 8歳くらいまでは、1日2回はひとり磨き(本人磨き)を行い、1日1回は保護者が「仕上げ磨き」をしましょう。朝と昼の食後は本人が磨き、夜寝る前に保護者が仕上げ磨きをするのが理想です。

まず、子どもに虫歯になるしくみをかんたんに説明しましょう。歯に汚れがたまり、虫歯菌(ミュータンス菌など)が増殖して、糖質(ショ糖)をもとに酸を作り出し、その酸で歯が溶けるのが虫歯です。もともと人間の口の中にはさまざまな微生物が生息しており、菌があることが問題なのではなく、虫歯菌がふえやすい環境であることが問題です。虫歯菌を増やさない環境を整えるために行うのが歯磨きです。とくに、虫歯菌は唾液が減る夜間に増殖しますので、寝る前の歯磨きが大切です。

仕上げ磨きとは、磨き残しを防ぐために大人が子どもに行うケアのことです。子どもがひとりで歯を磨いていても、実際はほとんど磨けていないケースが多いのです。幼児のうちは仕上げ磨きをしても、小学校に上がると仕上げ磨きをやめてしまう保護者の方がいます。ですが、歯が生え替わる小学校低学年の間は虫歯になりやすい時期でもあるので、8歳くらいまでは、ぜひ仕上げ磨きを実践してください。

仕上げ磨きは、8歳くらいまで行いましょう。

《仕上げ磨きのコツ》

1.子どもを膝の上に仰向けに寝かせる

2.歯ブラシを“鉛筆持ち”する

3. 歯磨き粉をつけずに “水磨き”(泡で歯が見えなくなってしまうため)

4.子どもが嫌がらないように1~2分で

5.小学生になったら1週間に2、3回でもOK

磨き残しやすい場所はここ。仕上げ磨きをするときは、磨き残しやすい場所をていねいに。

Q:歯ブラシはどんなものを選べばよい?

A:子ども用として販売されている小さめの歯ブラシを選びましょう。

子ども用の歯ブラシは、持ちやすいように柄が短めで、ヘッドがやや小さめになっています。ヘッドが小さいほうが、磨きにくい場所にも歯ブラシが届きやすいのです。

歯科医院で販売している子ども用の歯ブラシは、一般的な歯ブラシより少し値段が高めに設定されていることが多いです。その理由は毛質の違いです。歯と歯の間に歯ブラシを押し当てた際、ブラシの毛先が歯のすき間にしっかり入る毛質にこだわっているからと考えていいでしょう。

子どもの場合、「ひとり磨き(本人磨き)」は、歯磨きの習慣を身につけることも目的のひとつなので、キャラクターがついているような歯ブラシなど子どもがお気に入りの歯ブラシを与えてもかまいません。ですが、保護者が行う「仕上げ磨き」「点検磨き」には、毛質のよい歯ブラシを使ってしっかり歯の汚れを落としましょう。

Q:子どもでもデンタルフロスを使ったほうがよい?

A:歯と歯の間の汚れは歯ブラシでは除去しきれないので、子どもでもデンタルフロスを利用したほうがよいでしょう。ただし、どんな子どもでも必要というわけではありません。乳歯は、歯と歯の間に1~2㎜程度のすき間がある状態が正常で、この場合はフロスは必要ありません。ですが、今はあごが狭くて乳歯が「叢生(そうせい)」「らんぐい歯」、つまり“おしくらまんじゅう”状態になって生えている子どものほうが多い傾向があります。歯と歯がくっついて生えている子どもは、1日1回はデンタルフロスを使って歯と歯の間の汚れを取ったほうがよいでしょう。

デンタルフロスを選ぶ際、子どもには、片手で使えるホルダーつき(柄がついたタイプ)がオススメです。子ども用の小さめのものがよいでしょう。

ちなみに、「歯間ブラシ」は歯茎が下がってしまった大人向けのアイテムです。時々間違う方がいるので、注意しましょう。

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子どもには、ホルダーつきのデンタルフロスを。

Q:磨き残しをチェックするよい方法はある?

A:歯垢染色剤を使ってみるとよいでしょう。毎日使う必要はありませんが、磨き残しを確認するために週に1、2回は使ってみてはいかがでしょう。

歯垢染色剤とは、口腔内の歯垢の染め出しを行う薬品のことです。プラークチェッカーなどとも呼ばれており、ドラッグストアなどで購入できます。

歯垢染色剤は、家庭で子どもが歯磨きの練習をする際にとても便利です。とくに、ひとりでしっかり歯が磨けるようになってほしい8~9歳くらいの子どもにとっては有効です。たとえば、ひとり磨きのあとで、保護者が歯垢染色剤を使って磨き残しがないかどうかをチェックします。磨き残しがあるようだったら「奥歯の後ろが磨けてないよ」などと具体的にアドバイスします。磨き残しがなくなってきたら、保護者による仕上げ磨きを卒業するタイミングと考えましょう。

Q:歯そのものを丈夫にする方法は?

A:仕上げ磨きのあと、または歯磨きのあとにフッ素ジェルを歯にぬると、歯質そのものが丈夫になります。1日1回、歯にフッ素をぬることは、虫歯予防に有効です。

現在市販されている歯磨き粉にはたいてい低濃度のフッ素が配合されています。ですが、フッ素配合の歯磨き粉だけでは十分な効果が期待できないので、歯磨き後にフッ素ジェルをぬるとよいでしょう。

家庭で使用するフッ素には、ジェルタイプ以外にうがい薬タイプ、スプレータイプなどもあります。歯の表面に比較的長く残るのはジェルタイプです。歯磨き粉とは使い方がそれぞれ異なりますので、使用前に使用方法を確認しましょう。

一般的なフッ素ジェルの使い方は、通常の歯磨きで歯の汚れを除去したあと、歯ブラシにつけて歯にぬります。その後、20~30分間は飲食をせずに、できるだけフッ素が歯の表面に接している時間を持続させます。

Q:食生活では何に気をつけたらよい?

A:お菓子やジュースなど、甘いものをだらだらと食べないようにしましょう。虫歯菌のえさになる砂糖を含んだ食べものを、だらだらと長い時間をかけて食べるのがもっとも虫歯になりやすい食べ方です。とくに、飴やガム、グミなど口の中での滞在時間が長くなるお菓子は虫歯になりやすいので要注意。甘いもの(ジュースなど飲み物も含む)は、1日2回までにしましょう。

たとえば、ケーキなどはパクッと食べてしまえば、口の中に滞在する時間は短いので、たとえ砂糖の量が飴1個より多くても、虫歯対策としては比較的安心ということになります。何かの待ち時間など、どうしても飴やガムなどで間をもたせる必要があるときは、キシリトール配合のものを与えるとよいでしょう。

成長期の子どもにとっては、栄養を補うという意味でもおやつ(間食)は必要です。「おやつは3時」などと時間を決めて食べさせるようにしましょう。お菓子やフルーツなどは食べる量を決め、皿などに盛って与えるのも“だらだら食い”を防ぐよい方法です。

一度虫歯になってしまうと、どんな治療を施しても本来の健康な歯とまったく同じ状態に戻すことはできません。ですから、歯が健康なうちからしっかり予防することが重要です。とくに小学校低学年は、虫歯になりやすい歯の生え替わり期でもあります。十分な虫歯予防対策を行い、虫歯になりにくい食生活の習慣を身につけておきましょう。

この記事の監修・執筆者

小児歯科専門医院キッズデンタル代表 坂部 潤

日本小児歯科学会認定小児歯科専門医、歯学博士(小児歯科学)、日本大学歯学部兼任講師(小児歯科学)。日本歯科矯正学会会員。UCLA小児矯正歯科客員研究員。4児の父親としての経験も生かし、小児歯科専門医院キッズデンタル(東京都)では、継続管理型の小児歯科専門医療を提供している。

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