【小児科医がアドバイス】コロナ禍だからこそ気をつけたい! インフルエンザやノロ・ロタウイルスなど、感染症の疑いがあったら?

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【小児科医がアドバイス】コロナ禍だからこそ気をつけたい! インフルエンザやノロ・ロタウイルスなど、感染症の疑いがあったら?

新型コロナウイルスの大流行以降、感染症対策や予防について関心が高まっています。特にこれからの時期は、インフルエンザやノロ・ロタなど、冬の感染症にも気をつけなければいけません。冬の感染症について小児科の先生にお話をうかがいました。

お話/宮野孝一(みやのこどもクリニック院長)
イラスト/渡井しおり

目次

コロナ禍のいま、感染症の疑いがあったら、まずは小児科に電話!

冬の乾燥と低温が感染症流行の原因

冬、感染症が流行する理由は大きく2つあります。

1つは、感染症を引き起こすウイルスが、気温が低く乾燥した環境を最も好むこと。温度16℃以下、湿度40%以下は、ウイルスが活発に長く生存できる環境です。

もう1つは、夏に比べて水分の摂取量が減ることや、空気が乾燥して鼻腔の粘膜が乾燥ダメージを受けて免疫力が低下することで、ウイルスに感染しやすくなってしまうためです。

子どもが発熱!? どうすればいいの?

特にこの冬はコロナウイルスの感染が拡大している中、インフルエンザなどの発熱を伴う感染症が疑われる際の対応には気をつけなければいけません。

子どもが熱を出したとき、どうすればいいのでしょうか?

まずは、かかりつけの小児科に電話をします。お医者さんは子どもの様子を聞いたあと、インフルエンザの予防接種をしているかどうか、また、一緒に暮らしている家族で熱がある人がいるかどうか、などを尋ねると思います。

インフルエンザは、保育園や幼稚園など集団生活の場において、子どもたちの間で瞬く間に広がるのが特徴。

逆に、コロナウイルスは、子どもだけで感染が広がることが少なく、親など身近な大人を介して感染するケースがほとんどです。

小児科医はそういった情報収集をしたうえで、受診に際して気をつけることなどを伝えてくれるはずです。

子どもの発熱時には、まず小児科に電話をしてから行動するようにしてください。

また、これからやってくる冬の感染症とコロナウイルス感染症の対策としては、これまでしてきた「手洗い」「消毒」「マスクの着用」「換気」などを引き続きていねいにしていくことを心がけましょう。

特に、コロナウイルスについては、大人が家庭に持ち込まないことが大事。長く続けていると気のゆるみが出てきてしまうこともありますが、特に寒くなるこれからの時期には気をつけていきましょう。

この冬の「インフルエンザ」は予防接種と感染予防を

代表的な冬の感染症には、「インフルエンザ」「溶連菌感染症」「ロタウイルス感染症」「ノロウイルス感染症」「RSウイルス感染症」「マイコプラズマ肺炎」などがあります。それぞれについて、症状や治療などについてみていきましょう。

インフルエンザは、普通の風邪よりも症状が重く、感染力も強いのが特徴。毎年、秋から冬にかけて大流行します。この冬はコロナ禍という状況もあってか、例年より早くから予防接種が開始され、またコロナウイルスに感染した際に重症化しやすいとされる高齢者に対してはそれが無料になることなどもあり、地域によって差はありますが、予約が取りにくい状況になっています。

主な症状

●突然の高熱(38度以上)が1~4日程度続く

●頭痛、寒気、筋肉痛、関節痛、だるさや食欲不振などの全身症状

●咳、鼻水・鼻づまりなどの呼吸器症状

●嘔吐・下痢、腹痛を伴うことも

治療・ケアなど

インフルエンザと診断されると、抗ウイルス薬(タミフル、イナビル、リレンザなど)が処方されます。服用することで熱が下がり、症状も改善しますが、しばらくは自宅で安静にしましょう。抗ウイルス薬のほかにも症状に合わせて、解熱剤、咳やたんを抑える薬、気管支を広げる薬、二次感染を防ぐための抗生物質などが処方されます。

高熱が出ているときは、安静にして十分な水分補給を。汗をかいたら拭いたり着替えたりしましょう。部屋の温度や衣類の着せすぎにも注意を。乾燥しないよう、部屋の湿度は50~60%に保ちます。

予防・注意点など

インフルエンザは予防が大切。手洗い・うがいの徹底と、マスクの着用などです。そして、流行前の秋頃に予防接種(乳幼児は2回摂取)を受けましょう。絶対に感染しないとは言い切れませんが、もし感染したとしても軽症で済むことが多く、重症化を防ぐことができます。2回目の予防接種は、2~4週間程度開けるとよいでしょう。

乳幼児は重症化すると、気管支炎や中耳炎などの合併症、まれにインフルエンザ脳症を起こすこともあります。早めの受診・治療が大切です。

「溶連菌感染症」は、高熱とのどの痛み&イチゴ状の舌が特徴

突然の高熱とのどの痛みから、全身にかゆみの強い赤い発疹が広がり、舌には赤いプツプツができて、まるでイチゴのように赤く腫れるのが特徴。熱やのどの痛みなどの風邪症状だけで治まる場合もありますが、重症化するケースも。

主な症状

●突然38~39度の高熱●のどが赤く腫れて、強い痛みも出る

●舌に赤いブツブツができて、イチゴ状に腫れる

●首や胸、手首や足首など全身にもかゆみの強い赤い発疹が広がる

●嘔吐、リンパ節の腫れ なども

治療・ケア

発熱やのどの痛みがあったら、病院で診察を受けましょう。治療には溶連菌に有効なペニシリン系の抗生物質が処方されます。薬を飲むと1~2日で熱は下がり、舌や皮膚の発疹も数日で収まります。かゆみがひどい場合は、かゆみを抑える薬も処方されます。熱や症状が治まっても、処方された薬は必ず飲み続けましょう。急性腎炎やリウマチ熱、血管性紫斑病などの合併症を引き起こすことがあります。

のどが痛い間は、食べたり飲んだりがしにくくなります。脱水症状予防に水分補給に気をつけながら、食事や離乳食はのどごしがよく消化のよいものを。

予防・注意点など

手洗い・うがいで感染予防を。かゆみが強いため、子どもが発疹をかき壊してしまわないように、爪は短く切っておきます。3歳児未満児は、溶連菌感染症にかかりにくいといわれていますが、ゼロではないので、発熱やのどの痛みがあった場合は病院を受診しましょう。

2歳児未満に多い「ロタウイルス感染症」は1、2月がピーク

2歳児未満の乳児への感染が多く、5歳までにほとんどの子どもが発症するといわれる、冬に多いウイルス性の胃腸炎。激しい嘔吐と下痢、白っぽい下痢便が特徴です。

主な症状

●激しい嘔吐と下痢、発熱、腹痛 など

●嘔吐と下痢に伴う脱水症状やけいれんなどで、入院治療が必要になることも

治療・ケア

嘔吐や下痢の症状が現れたら、小児科を受診します。ただし、院内感染を予防するためにも、受診前に病院に電話をし、子どもの症状を伝えて、注意点などを確認してから向かいましょう。

このウイルスに直接効く抗ウイルス薬はありません。脱水を防ぐための水分補給と、体力を消耗させないための栄養補給が大事です。脱水症状がひどい場合は、点滴を行う場合があります。下痢が続くと、お尻がかぶれたりただれてしまったりすることもあるため、トイレやおむつ替えの都度、シャワーで流すなど、きれいにしてあげてください。

予防・注意点など

今年の10月から、ロタウイルスのワクチンが定期接種の対象となりました。接種できるのは、生後2か月~生後14週6日までの乳児です。詳細は、お住まいの市区町村の予防接種担当窓口にお問い合わせください。

また、普段から気をつけたいのが手洗いです。ロタウイルスは感染力が非常に強いため、感染者の嘔吐物や下痢便の処理をした際、わずかでも残っていると、感染してしまいます。ていねいな処理を心がけてください。調理する際も、食品・調理器具などの加熱や消毒を徹底することが大事です。

秋から冬にかけて流行「ノロウイルス感染症」

秋から冬にかけて流行する感染性胃腸炎。ノロウイルスは、手指や食品を介して感染し、腸管で増殖をして、嘔吐や下痢、腹痛を起こします。子どもだけでなく、大人も感染します。

主な症状

●嘔吐と下痢、腹痛

●発熱を伴うことも

治療・ケア

「ロタウイルス感染症」と同様です。

予防・注意点

ロタウイルス感染症に大人が感染するケースは少ないですが、ノロウイルス感染症は大人にも感染します。そのため、嘔吐物や便の処理には、十分に気をつけましょう。

また、ノロウイルスは食材を十分加熱することにより死滅します。食品や調理器具は、ていねいに洗浄、消毒をし、調理する際も食材を十分に加熱するようにしましょう。

嘔吐・下痢便の処理の仕方

感染症による嘔吐や下痢が疑われる場合は、家族に感染症をうつさないためにも、嘔吐物と下痢便の処理に気をつけなければいけません。

用意する物

・使い捨てのマスク、手袋、エプロン 

※エプロンがない場合は処理後に着替える

・ペーパータオルや雑巾

・ビニール袋

・消毒液(次亜塩素酸ナトリウムを加えた消毒液など)

消毒液の作り方

嘔吐物などの処理には、次亜塩素酸ナトリウムを加えた消毒液を使いますが、家庭用塩素系漂白剤で代用できます。

嘔吐物や便には約0.1%液が適しています。500mlのペットボトル1本分の水に、ペットボトルのフタ2杯分(約10ml)の家庭用塩素系漂白剤を入れ、さらに水を加えて500mlとします。

衣類の消毒や、手すりやドアノブ、おもちゃなどの消毒には、0.02%の消毒液を使います。2Lのペットボトルに水を入れ、ペットボトルのフタ2杯分(約10ml)の家庭用塩素系漂白剤を入れて、さらに水を加えて2Lになるように作ります。衣類は色落ちしてしまいますが、減菌が優先です。

下痢便のオムツの処理

❶使い捨てのマスク、ビニール手袋、エプロンを着用。他にきょうだいがいる場合は、離れた場所で行います。使い捨てのエプロンがない場合は処理後、着替えをしましょう。

❷下痢便のついたオムツは、二重にしたビニール袋に入れ、袋の口をきつく結び密封します。

➌バケツなどに消毒液を入れ、ペーパータオルや雑巾を浸して、オムツ換えをした場所を拭きます。

❹換えたオムツとビニール手袋、ペーパータオルや雑巾、エプロンなどをビニール袋に入れて捨てます。手も石けんなどでしっかり洗い、消毒します。

嘔吐物の処理

❶使い捨てのマスク、ビニール手袋、エプロンを着用。嘔吐物の上から新聞紙やペーパータオルをかけて覆い、外から内側に向かって静かに拭き取ります。二重にしたビニール袋に入れ、袋の口をきつく結び密封します。

❷バケツなどに消毒液を入れ、ペーパータオルや雑巾を浸して、嘔吐物のあったところを拭きます。

※じゅうたんなどは色落ちする場合があります。

➌拭き取りに使ったペーパータオルや手袋、マスク、エプロンと、嘔吐物を入れたビニール袋を、まとめてビニール袋に入れて捨てます。手も石けんなどでしっかり洗い、消毒します。

「RSウイルス感染症」乳幼児に多く、咳症状が特徴

秋から冬、早春にかけて流行する、呼吸器に感染するウイルス。1歳頃までに半数が、2歳までにほぼ100%が一度は感染するとされます。軽い風邪症状で済む場合もありますが、乳児の場合、重症化する恐れも。

主な症状

●発熱、鼻水、咳など

重くなってくると、ゼイゼイと呼吸困難になり、細気管支炎、肺炎を引き起こすことも

治療とケア

特効薬はないので、解熱薬やたんを出しやすくする薬などで対症療法を行います。咳をしていたら、上体を起こして背中をさすってあげましょう。発熱時は脱水症状を起こしやすくなるので、水分補給を十分に。部屋が乾燥していると咳も出やすいので、加湿も行います。

乳幼児は、夜間に病状が急変することもあります。呼吸が苦しそうだったり咳がひどかったりした場合は、夜間でも小児科を受診しましょう。

予防・注意点など

感染経路は、飛沫感染と接触感染です。2歳未満の子どもの感染が多いため、年上のきょうだいや身近な大人で、せきなどの症状が出ている人がいたら、接触を避けること。また、そういう大人は子どもと接する際、手洗いをすることと、マスクをつけることが大事です。子どもが触れるおもちゃや手すりなどは、こまめに消毒しましょう。

「マイコプラズマ肺炎」は風邪症状から、長引く咳に

幼児~小学生が多く感染。初期はかぜのような症状から、咳がひどくなり、長く続くことも。抗菌薬(抗生物質)での治療が必要。

主な症状

●発熱、頭痛、だるさ、のどの痛み

●咳(熱が下がった後もせきが長く続くことも)

治療・ケア

多くは、気管支炎だけの軽い症状で済みますが、重症化すると、肺炎や、髄膜炎、脳炎を起こすことも。重症化するのは大人が多いですが、子どもは、咳がひどくなると体力的にもつらくなります。早めの受診が大事です。

マイコプラズマ肺炎は、他の肺炎で使われる抗菌薬(抗生物質)が効きません。長引く咳症状があり、肺炎の疑いがあると、血液検査や胸部エックス線検査などをし、診断します。最近では、「マイコプラズマ抗原検査」により、30分ほどで判定できる場合も。

処方された抗菌薬(抗生物質)を服用すれば2週間ほどで治まります。処方された薬は、最後まで飲み切るようにしましょう。

予防・注意点など

感染した人の咳のしぶきや飛沫を吸い込んだり、飛沫がついた手で目や鼻、口を触ったり、感染した人と身近で接触することなどによって感染するといわれています。咳症状のある人が近くにいる場合は、マスクをし、手洗いと消毒をしっかり行いましょう。

この記事の監修・執筆者

みやのこどもクリニック院長 宮野 孝一

みやのこどもクリニック院長。日本小児科学会認定専門医、日本アレルギー学会認定専門医であり、ぜんそくやアトピー性皮膚炎などの診療にも積極的に取り組む。

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