【専門家監修】なぜかイライラ、不機嫌な「プレ思春期」の乗り越え方

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小学校中学年にさしかかって、友人関係や学習面、運動面などでのつまずきからイライラ、反抗的な態度が多く見られるようになるのが「プレ思春期」。成長の一過程ではあるものの、今後の親子関係にも影響する難しい時期です。プレ思春期をどう乗り越えていけばいいか、臨床心理士・公認心理師のたかだ ちかこ先生にお話をうかがいました。

文/こそだてまっぷ編集部

目次


 

小4になって口数が少なくなり、話しかけても機嫌が悪そうなのはなぜ?

小学校4年生ぐらいになると、低学年のころとはお子さんの様子が変わったなと思うことが増えてくると思います。「学校どうだった?」などと聞いてもあまり話したがらず、「別に」「うるさいな」などと、イライラして反抗的な態度になることも。
原因としては、精神面が成長して自分を客観視できる、いわゆる「プレ思春期」にさしかかっていることが考えられます。

学力・運動能力・容姿などで、友だちと自分を比較する機会が増え、その結果として、劣等感を抱いたり自信をなくしていたりするのです。
反抗的な態度を取られると、保護者のかたは寂しく感じる時もあるかもしれませんが、こうした子どもの変化はごく普通の成長過程で起こること。親からの精神的自立が始まっているだけなので、それほど心配する必要はありません。

 ≪関連記事≫【小4の壁ってなに?】原因やのり越え方、保護者のNG行為とは? 

以前よりも友だちの話をしてくれなくなった理由は?

3、4年生になると、これまでとは友だちとのつき合い方が変化していきます。保護者に話さなくなる理由としては、主に次のようなことが考えられます。

①説明が面倒

親子での交流が多かった低学年までとは違って、子ども同士でのつき合いが中心となり、保護者の知らない友だちも増えてきます。友だちの話をしている時に、保護者が「○○くんって同じクラスの子?」「どんな子なの?」などと聞かれると、いちいち口をはさまれて話すのが面倒と感じる子もいます。まずは子どもの言葉をさえぎらずに、耳を傾けることが何より大事です。

②友だち関係がうまくいっていない

3、4年生では、低学年の時期に比べて、友だちとの関係が親との関係以上に大切になっていきますが、そこは経験の浅い子ども同士のこと。まだうまく関わることができず、落ち込んだり悩んだりする機会も増えていきます。
そうした微妙な友人関係を説明するのは、子どもにとって簡単ではないものです。保護者の側で、「友だちの話をしたくない日もある」ことを理解しておく必要があります。

③金銭トラブルやSNSでのトラブルの可能性も

中学年になると、習い事や塾などに自分で通うなど行動範囲が広がることから、物やお金の貸し借りなども増える傾向があります。
友だちといっしょに行動していて、「自販機のジュースを何度もおごった」「コンビニでお金を貸したまま、返してもらっていない」などといった、金銭トラブルになるケースも少なくありません。
また、最近では低年齢から、スマートフォンやタブレットなどでゲーム用に自分のアカウントを持つ子が少なくないため、悪口を言ったり言われたり、といったSNSを通じたトラブルも増えているようです。
金銭トラブルやSNSでのトラブルについては、子どものほうから助けを求めてこないことも。ふだんの様子をよく観察し、何か困っている様子があれば、事態が大きくなる前に保護者が介入する必要もあるでしょう。

中学年になって急に勉強がきらいになった?

「低学年の時は、特に問題なく楽しく勉強に取り組んでいたのに、中学年になってテストの点数が取れなくなり、勉強に苦手意識を持つようになったようだ」という声は少なくありません。
その理由として、3年生になって教科の内容や授業数が増えること、抽象的でより高度な内容を扱うため、つまずきやすくなることなどが挙げられます。
3年生になると、「生活」の教科が「社会」と「理科」に分かれます。
3年生の算数では、子どもがイメージしにくい小数や分数の学習が出てきて、つまずくケースが多くなります。
国語では、3年生は画数の多い漢字が増え、4年生の国語の読解問題では説明文が増えるな
ど、やはり難易度がアップします。 このように、授業数が増えたうえに学習内容が高度になるため、授業についていけなくなる子が多くなってくるのです。

プレ思春期に親子関係をよくするにはどうしたらいい?

話しかけても返事がなかったり、イライラしていたり。プレ思春期の子と接するのは、なかなか手がかかるもの。保護者の態度としては、次のようなことに気をつけたいですね。

①否定しない

子どもが自分のことを、「私なんて○○ちゃんみたいにはできない」「ぼくには無理だ」のような自信のない発言をしていると、保護者としては励ますつもりで、「そんなことないよ」「きっとできるから、弱気なことを言っていてはだめ」などと、言ってしまいがちです。
しかし、そうして否定することで、むしろ子どもに反発される可能性もあります。
まずは、「そうなんだ」「あなたはそう思ったんだね」と、言葉をそのまま受け止めてあげるとよいでしょう。子どもの考えに寄り添うことで、お子さんが心を開くきっかけになります。

②完璧を求めない

友だちと自分を比較すると、どうしても得意・不得意があるため、自分が劣っていると感じることもあるでしょう。人に負けている部分に、必要以上に落ち込むことも。
そんな時は、「全部がうまくできなくていい」「完璧でなくていい」ことを伝えてあげてください。無理せず、自分らしくいていいことがわかると、きっとお子さんの気持ちが楽になるはずです。


③具体的にほめる

自信を失っている子どもにとって、ほめることは自己肯定感につながりますが、中学年の子どもには、単純におだてるような言葉ではあまり響きません。 「冬休みは、縄跳びの練習を1日も欠かさずがんばっていたね」「発表会の準備のために、毎日ひとりで早起きできていたね」などと、子どもの様子を観察したうえで具体的にほめてあげることで、自然と親子関係がよくなります。

④気分にむらがあることを理解する

プレ思春期の子どもは、機嫌よく会話ができる時もあれば、イライラして反抗的な時もあります。大人っぽかったり、子どもっぽかったりして、ゆれ動く時期でもあります。「気分にむらがあって当たり前」なのだと理解していれば、保護者も腹を立てずに対応できます。そして、保護者の対応がいつも一定であれば、子どもも安心して自分の気持ちを打ち明けることができて、悩みを相談したり、解決につなげたりすることができるでしょう。


⑤他の子やきょうだいと比べない

自分を客観視できるようになってきている子を、だれかと比較するような発言は、できるだけ避けたほうがいいですね。きょうだいと能力的に違っているところがあると、「○○(きょうだい)はできたのに」などと、つい口にしてしまうこともありますが、そうした言葉は本人の劣等感を強めてしまいかねません。同級生との比較も同様です。
人と比べたりせず、お子さん自身の成長を見てあげることが、とても大切です。

⑥深掘りしすぎない

保護者が話しかけても、何も答えてくれない場合もあるでしょう。そんな時は、根ほり葉ほりうるさく聞きだそうとしないことです。
「今日は話したくない日なんだね」「そのうち話したくなったら教えてね」などと言って、子どもの気持ちに寄り添います。日によって気分にむらのある時期ですから、話したくなったら、聞き出そうとしなくても話してくれます。
ただし、何か重大なトラブルの可能性がある、犯罪に巻き込まれそうなど、状況によっては保護者として早めに介入しなければならないこともあるので、ふだんから様子をよく観察して判断する必要があります。


⑦必要に応じて学校と連携する

いじめや、友だちに何度も物を隠されるなど、「学校で起きていることで先生に知っておいてもらいたいこと」は、速やかに学校側と相談する必要があります。 子どもの気持ちもふまえて、「このことは先生に話しておくね」などと、本人に事前に知らせたほうがいいのですが、「相談しないで」と言われることもあるでしょう。
その場合は、問題の程度によって判断する必要があります。

最後に

保護者の態度としていちばん大切なのは、「子どもの様子をよく観察すること」です。
気をつけないといけないのは、「自分の時はこうだった(だから、うちの子も同じはず)」などと、保護者が無意識にフィルターをかけて子どもを見てしまうこと。
我が子とはいえ、自分と子どもとでは、性格や考え方に違いがあって当然です。「こうであるはず」という思い込みを捨てて、だれとも比較せず、お子さんのありのままの姿を見てあげることが重要です。
プレ思春期は、子どもの成長の証。保護者のほうからあれこれと指図をせず、子どもが必要な時に、必要な言葉でサポートできれば、お子さんのさらなる成長につながります。
口出しを控える代わりに子どもの様子をしっかり観察することで、難しい時期をきっと乗り越えられるはずです。

この記事の監修・執筆者

臨床心理士・公認心理師 たかだちかこ

心療内科や児童相談センター、学校、被害者支援施設など、多くの現場で相談や心理検査を経験。親子・夫婦関係・子育て・発達障害・ハラスメントやDV被害など様々な相談を得意としている。うららか相談室にてビデオ・電話によるオンラインカウンセリングを受付中。

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