「毒親」になってない? 親の過干渉が子どもの成長を妨げる

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「毒親」になってない? 親の過干渉が子どもの成長を妨げる

最近話題になっている「毒親」。親としてはドキッとしますよね。「わたしは子どもを愛しているから大丈夫」と思っていても、愛し方を間違えると「毒親」になってしまいます。
過干渉・過保護に思い当たるあなたは「毒親」予備軍かも⁈ そこで、「毒親」にならないための心得を専門家にうかがいました。

お話/横山洋子(千葉経済大学短期大学部こども学科教授)

目次

「毒親」とはどんな親?

ドキッとするネーミングですが、かみ砕くと「子どもの成長の妨げ(毒)になってしまう親」といえます。表立って虐待している親だけでなく、「我が子のため」と思いつつ、自分の思いを通そうとするのも毒親の典型的な例。

具体的には、以下のようなタイプに分かれます。

過干渉タイプ

よかれと思って我が子にあれこれと指示を出して、自分の思いどおりに行動させようとするタイプ。子どもは、自分の意見が通らないことを感じ、親の顔色をうかがう、親の期待に応えなくてはと思うなど、親の価値観に支配されてしまいます。ですから自分で進路の選択が必要な場面でも、自ら判断することができません。

こうして育ってきた子は、親の期待に応えられないと「自分はダメな人間」と思い込み、無気力になり、不登校になってしまう場合も。そこに、親が「学校行きなさい」「勉強しなさい」などとさらにコントロールしようとすると逆効果。子どもはさらに追い込まれてしまいます。

過干渉には、さらに2つのタイプがあります。

親の立場を利用した支配タイプ

「○○しないと△△してあげないよ」などと、子どもが嫌でも従わざるをえないことを言い続けます。親にとっては手っ取り早い方法ですが、子どもにとっては脅し文句以外の何物でもありません。反対に「○○したら△△してあげる」と交換条件を出し、自分の思いどおりに行動させます。

子どもの自尊心を削ぐタイプ

「あなたは何もできないんだから、お母さん(お父さん)の言うことを聞いていれば間違いない」が常套句で、我が子を調教してしまうタイプ。子どもは、自分には価値がないと思い、親の言うことを聞くしか生きる手立てがないと考えてしまいます。

過保護タイプ

子どものことを心配するあまり、子どもの身の回りのこと、生活のことなどをすべてやってあげるタイプ。子どもは、人生のなかで壁に当たったことも、試行錯誤したこともないので、課題や困ったことを自分で解決できません。人に依存する癖がついているため、友だちどうしで何かトラブルがおきたときも「自分は関係ない」「知らない」という調子で、解決方法を考えることもしません。何事も親がなんとかしてくれるだろう、と思っているのです。

「毒親」になりやすい人の特徴とは?

「毒親」が怖いのは、自分では意識していなくても、気がつくと「毒親」になってしまっているところ。では、どんな人が「毒親」になりやすいのでしょうか。大きく分けて、3つのタイプがあるようです。

自分も「毒親」に育てられた

「百聞は一見にしかず」という言葉がありますが、子育て観も「経験」に基づくことが多いよう。自分自身が親にされた(してもらった)ように、子どもにも接してしまうのです。自分は○○されて嫌だったから子どもにはしないようにしよう、と思っていても、ほかの関わり方がわからず、気がつくと同じように接しています。

自分は人生に失敗したから、子どもには成功してほしいと願う

自分自身の人生が思うようにいかないことを深く後悔し、「我が子には自分のようになってほしくない=自分の果たせなかった夢を我が子に託す」という思いで、子どもに過度な期待をかけてしまいます。よい大学に行ってほしい、○○の選手になってほしい、音楽家として成功してほしい…などと英才教育にも熱心。一見子どもの将来のために尽くしているように見えますが、実は子どもの気持ちとかけ離れ自分の思いを満足させようとしています。

子どもに依存することでしか生きられない

自分の世界をもたず、子どもの存在だけが生きがいになってしまっているタイプ。生活のすべてが子ども中心なので、いつ、どこに我が子がいて、今何をしているのか把握していないと気が済みません。「○○をやってほしい」「これ、どうしたらいい?」などと、子どもに頼られることで、自分が生きていることを実感します。

「毒親」かも…と思ったら

ここまで読んでいるうちに「もしかして、わたし “毒親”になっているかも…」と心配になった人もいるのでは? でも大丈夫です。心配になる時点で「毒親」に変身する可能性は低いでしょう。

しかし、自分の言動で思い当たることがあれば、今からでも遅くはありません。以下のようなことばかけで子どもとの信頼関係を取り戻しましょう。

「強制するようなことば」や、「決めつけたようなことば」を言ってしまった場合

「言い過ぎたよね。ごめん」「嫌な気持ちになったよね」などと話し、素直に謝りましょう。

子どもにとっても、“大人も間違えることがある”“間違ったと思ったら謝るものだ”と認識することは、成長するうえで大きなプラスとなるでしょう。

子どものことなのに、親が判断してしまった場合

もう一度、子どもの気持ちをたずねる機会を設けましょう。「○○はどう思う?」「どうしたい?」と子どもの思いに耳を傾け、共感しましょう。「○○の気持ちは、わかったよ」「自分で考えられたね」などとほめることも忘れずに。

「毒親」にならないコツ

「毒親」にならないためには、これまでお話ししてきたことと、逆のことを心がければよいでしょう。たとえば…

子どもを一人の人間として尊ぶ

我が子の人格は自分の人格とは別だということを常に心にとめておきましょう。

「自分の人生」を生きる

子どもの人生と自分の人生は別物です。子どもの成功は喜びますが、それを自分の人生の目標にするのは間違っています。親という側面はあなたの一部。自分自身で探求したいこと、楽しみたいこと、やりたいことをもち、自分の世界を生きることが大切です。そんなあなたの背中を見て、子どもも多くを学ぶでしょう。

「子どもが自分で決めたこと」に共感し寄り添う

子どもが自分で決めたこと、考えたこと、選んだことを大切に考えます。「○○のほうがよいのに」と思っても、それは、あなたの都合で考えたことかもしれません。

もしかしたら、ときには失敗することもあるかも。でもそれも大切な経験なのです。失敗から学ぶことも財産です。子ども自身でよく考え、決断できたことを認めましょう。

子どもが助けを求めた場合は全力で応える

子どもが自分で考え、決断し、行動するのも、安心できる環境があるからこそ。もし、子どもが困り、助けを求めるような状況になった場合は、全力で力になりましょう。必要とされる分だけサポートするのがポイントです。

親にとって我が子は何よりも大切な存在ですよね。その愛情を十分に伝えつつ子どもが自分で生きていく力を育てたいでもの。そのキーワードは「親は子どもの応援団」

「○○の人生は○○のもの」

「自分の思いどおりに生きて、それで○○が幸せなら十分」

「何かあったときは、親として全力でサポートするから安心して」

そんな言葉をかけながら、子育てを楽しみましょう。

この記事の監修・執筆者

千葉経済大学短期大学部こども学科 教授 横山 洋子

富山大学教育学部附属幼稚園・教諭、富山市立古里小学校、富山市立鵜坂小学校・教諭を経て、現在は千葉経済大学短期大学部こども学科の教授を務める。著書には、『保育者のためのお仕事マナーBOOK』、『保育に生かせる!年中行事・園行事ことばかけの本』、『毎日のちょこっとあそび』(学研)などがある。

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