【子どもに怒鳴ってしまうあなたへ】「後悔しない怒り方」のための、アンガーマネジメントとは?[専門家監修]

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子どもに対して、ついイライラしてしまうことがありますよね。でも、イライラの原因は、実は子どもの言動ではないのかも…。イライラの正体やその解消法、上手な怒り方などを日本アンガーマネジメント協会の小尻美奈先生にうかがいました。

文/こそだてまっぷ編集部 参考/日本アンガーマネジメント協会 イラスト/種田瑞子

目次

やってはいけない怒り方とは?

子どもを怒るときに、つい、次のような行動をしていませんか?

●反射的に大きな声を出してしまう
●テーブルをたたく、ドアをバタン!としめるなど、ものに当たってしまう
●「何やってるの!?」などと瞬間的に頭に浮かんだ言葉をぶつけてしまう

イライラしたからといって、上記のような反射的に感情をぶつけるような言動では、「子どもに何かを改めてほしい」という本当に伝えたいことは伝わりません。また、それによって子どもが傷ついたり、反抗的な態度を取ったりしてしまうこともあり、解決になるどころか事態をこじれさせるだけです。それなのに、なぜ反射的、感情的な言動をしてしまうのでしょうか?

子どもにイライラするのは、「べき」が裏切られたとき

子どもにイライラしてしまう2つのケース

《case 1》

子どもが遊んだおもちゃがリビングルームに散らかったまま。イライラして、「片づけなさい! 何度言ったらわかるの!?」と大きな声で怒りました。子どもは泣きながら、イヤイヤ片づけ始めます。“おもちゃで遊んだら、片づけるべきでしょ。自分で片づけてくれるようになるといいんだけど……”

《case 2》

子どもが、学校から算数のテストを持って帰ってきました。点数は70点。“テストは80点以上を取ってほしいのに……”。イライラしたあなたは、子どもを「なんで、70点しか取れないの!?」と怒ってしまいました。

保護者が子どもに対してイラつくのは、“~するべき”“こうあってほしい”という理想や願望、価値観などが裏切られたときです。そして保護者は「子どもが自分をイライラさせている」と思いがちです。しかし、理想や願望である「べき」を持っているのは自分です。たとえば「テストは60点以上ならOK」と考えていたら、同じ70点のテストでもイライラしなくてすみます。子育てのイライラを解消するには、自分が持っている「べき」を見直すことから始めてみましょう。

イライラの原因は、子どもじゃなくて「自分」?

怒りの正体は、自分の中にある「べき」

《case 1》

朝早く起きて、子どものお弁当作りや朝食作りをワンオペ。“夫も少しは手伝ってくれれば楽なのに……”。登校時刻が迫っているのに、子どもがせっかく作った朝食をなかなか食べてくれません。学校に遅刻しそうでイライラしてきたあなた。子どもに向かって「何してるの! 早くして‼」と怒ってしまいました。

《case 2》

仕事で取引先とトラブルがあった日。“自分のミスかも。どうしよう? ”などと考えながら帰宅すると、リビングルームで子どもがゲームに夢中になっています。それを見てイライラしたあなたは「また、ゲームをやっているの!? 早く宿題をしなさい!」と子どもをどなりつけてしまいました。

case 1は「朝食をなかなか食べない子ども」、case 2は「ゲームをしている子ども」に腹を立てているように見えます。このときの怒りの正体は、自分の中にある「朝食を早く食べるべき」「宿題を終えてからゲームするべき」という考えです。この「べき」がガスライターの着火スイッチだとしたら、怒りの火種を大きくさせているものは、ライターの燃料であるガスです。

燃料とは、「べき」が裏切られたときに、自分が抱えていたマイナスの感情や状態です。マイナスの感情は、夫が家事を手伝ってくれない「不満」、学校に遅刻するのではないかという「不安」や「焦り」、取引先とのトラブルで抱えていた「ストレス」などです。仕事を終えた「疲れ」や「空腹」など体のマイナスの状態も怒りの燃料になります。これらの燃料がいっぱいになると、怒りが大きくなります。

子どもに対してイライラしやすいときは、自分の心の中にマイナスの感情がたまっていないか、体がマイナスの状態になっていないかセルフチェックをすることが大切です。

あなたのマイナスの感情や状態をチェック

□配偶者に対する不満がある
□家事に対するストレスがある
□介護の負担を抱えている
□家族・親戚間に問題がある
□仕事や職場に対するストレスがある
□ママ友などの友人関係にストレスがある
□健康上の不安がある
□金銭面に不安がある
□子どもが通う学校や園に不満や不安がある
□自分自身にコンプレックスがある

上記の項目のうち5つ以上当てはまるものがある人は、マイナスの感情がたまっていたり、体がマイナスの状態になっていたりして怒りやすくなっているのかもしれません。

怒りが爆発しそうになったら、次に紹介する「イライラしたら、どうする?」を実践してみましょう。

イライラしたら、どうする?

冒頭で、イライラした際に反射的に感情をぶつけてはいけないことをお伝えしました。では、どうしたら反射的な言動を防げるのでしょうか。日本アンガーマネジメント協会では「イラッときたら、6秒待つ」とアドバイスしています。怒りの感情は6秒間程度経つと理性が働き、その後は冷静な判断ができるようになるとされているのです。

《6秒待つためのアンガーマネジメント》

子どもを前にしてカッとしたら、6秒待つために、次の方法を試してみましょう。6秒待つことができれば、子どもに感情のまま怒りをぶつけずにすみます。

1.深呼吸をする

大きく息を吸ってゆっくり息を吐ききります。深呼吸をすることで、副交感神経の働きが高まって、心が落ち着き、冷静になれます。

2.数を数える

「1、2、3…」と6まで数えます。また、100から3ずつ引いて「100、97、94…」と数えるようなカウントバックは、集中力を要するので、頭から怒りを切り離すことができます。

3.タイムアウト

その場を離れることをタイムアウトといいます。トイレに行ったり、ベランダに出たりしてみましょう。距離と時間を置くことで、子どもに怒りをぶつけることを防げます。保護者がいきなりその場からいなくなると、子どもは不安や恐怖を感じることもあるので、「落ち着きたいから〇〇〇にいるね。」と一言声をかけてから離れます。

4.スケールテクニック

イラッとしたら、怒りの温度計を思い浮かべ「今の怒りのレベルはどのくらい?」と10段階に数値化して考えます。レベル10が人生最大の怒りだとすれば、「子どもがグズグズしているのは、レベル2くらいかな。そんなに怒る必要はないか」「宿題をやらないのはレベル5。強く怒りすぎないようにしよう」などと、自分がどのくらい怒っているのかを客観視するのに役立ちます。

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上手な怒り方とは?

子育てをする中では、怒ることが必要な場面もあります。そんなときは、ここで紹介する上手な声のかけ方を参考にしてみましょう。

《脱いだ服を洗濯機に入れないことに対して怒るとき》●NGな声のかけ方
「なんで脱いだ服を洗濯機に入れないの!」

●上手な声のかけ方
「脱いだ服を洗濯機に入れて欲しいの。床の上に脱ぎっぱなしにしていると、洗濯できなくて困るの」

ポイントは、子どもにやってほしいリクエストを「私は、こうしてほしい」と伝えることです。これを「アイ(Ⅰ)メッセージ」といいます。NGな声のかけ方は「なんで(あなたは)脱いだ服を~」と主語が相手になっているため、子どもを責めるメッセージとなり、反発を招くおそれがあります。

《読んだ本を片づけないことに対して怒るとき》●NGな声のかけ方
「ちゃんと片づけなさい!」

●上手な声のかけ方
「読んだ本を自分で本棚に戻してね」

「ちゃんと」「きちんと」「早く」などの表現は、人によって受け取り方が異なります。「何」を「どうすればいいか」行動に移せるような具体的なリクエストで、やってほしいことを伝えましょう。

《忘れ物をしたことに対して怒るとき》●NGな声のかけ方
「なんで忘れ物をしたの!? 先週も忘れ物をしたでしょ!」

●上手な声のかけ方
「どうしたら、忘れ物をしなくなると思う?」

問題の“原因”や“過去”に焦点を当てずに、「どうしたらこれから忘れ物をしなくなるか?」という解決思考で、“未来”を変える方向に目を向けましょう。

怒ることで子どもを傷つけたり、自分が後悔したりしないようにしたいものですね。怒りをがまんするのではなく、感情の表出をコントロールして上手に怒る方法を身につけ、子育てに生かしていきましょう。

この記事の監修・執筆者

一般社団法人日本アンガーマネジメント協会公認講師 小尻 美奈

幼稚園教諭を経て、現在は保育・教育分野を中心にアンガーマネジメント研修を行うほか、保護者向け講演会、子ども向け授業でもアンガーマネジメントを教えている。

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