大人だって、怒られているところを誰かに見られたくはないですよね。それは子どもも同じです。他の人がいる前で怒られると、子どもは恥ずかしさで頭がいっぱいになり「なぜ怒られているのか?」が分からず逆効果になるそうです。
教育評論家の親野智可等先生にお話を伺いました。
他の子どもの前で、大声で叱る先生
過日私が講演に行ったある幼稚園で見たのですが、ある先生が年長児とおぼしき子どもを叱っていました。
何を叱っていたのかよくわかりませんでしたが、よくないと思ったのは他の子どもたちの前で大声で叱っていたことです。
子どもはかろうじて立ってはいましたが、上半身を前に深くかがめて今にも倒れ込みそうな様子でした。
先生の話に心を開いているようには到底見えませんでした。
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人前で叱られると自尊心が傷つき、恥ずかしさで頭がいっぱいに
大声で叱るのもよくないですが、他の子がいるところで子どもを叱るのは、本当によくないです。
人前で叱られると、子どもの自尊心が非常に傷つきます。
小さな子どもでも、恥ずかしく感じる気持ちは十分にありますし、こういう状態では恥ずかしさで頭がいっぱいになってしまうものです。
すると、なぜ叱られているのかとか、これから何をどう改めるべきなのかなどを考えるところまで頭が回りません。
他の子のいないところで、静かな落ち着いた声で
これは家庭においても言えることです。
親はつい他のきょうだいのいるところで叱ってしまいますが、これはよくないですね。
他のきょうだいにも聞かれているということだけで、子どもは素直になれません。
他の子のいないところで、目の高さを合わせて、静かな落ち着いた声で話すことが大事です。
また、親が一方的に言いたいことを言うのではなく、子どもの言い分も共感的に聞きながら進めてください。
そして、ときには問答によって子どもにも考えさせながら、子どもが納得するように上手に教えてあげてください。
子ども自身が、「本当にそうだなあ。これからは気をつけよう」と思えるようにしないと、意味がありません。
「見せしめ効果」をねらっても、本人の心には届かない
親や先生が他の子どもの前で叱るのは、「見せしめ効果」をねらっているからです。
1人の子どもを叱ることで、他の子どもにもわからせようというねらいがあるのです。
でも、そもそも、見せしめにされた子ども、つまり一番肝心な叱られている子どもの心に届いていません。
ですから、その子の成長に結びつかないのです。
さらに、たびたびこういうことがあると、子どもは親を恨むようになります。
きょうだい関係にも悪影響が出ます。
これは大人の例で考えればすぐわかることです。
例えば、職場において、上司が部下を人前で叱ったとします。
一度でもこういうことがあれば、人前で恥ずかしい思いをさせられた部下は上司を恨むでしょう。
素直に反省するどころの話ではありません。
こういう上司の下では、職場の人間関係も悪くなります。
お互いがオープンな気持ちで付き合うことはできなくなり、心を許せない人間関係が支配するようになります。
「これは大人同士でもできることだろうか?」を判断基準に
こういう心理は大人でも子どもでも同じなのです。
ですから、子育て中の親は、常に、「これは大人同士でもできることだろうか?」と考える習慣をつけるとよいと思います。
大人同士でやってはいけないことは、子ども相手にもやってはいけないのです。
「これは大人同士でもできることだろうか?」を判断の基準にしてください。
この記事の監修・執筆者
長年の教師経験をもとに、子育て、親子関係、しつけ、勉強法、家庭教育について具体的に提案。著書多数。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても著名。X、Instagram、YouTube、Blog、メルマガなどで発信中。オンライン講演をはじめとして、全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも大人気となっている。
音声配信サービスVoicyの配信番組「コソダテ・ラジオ」の2022年12月の金曜マンスリーゲストとして出演。「家庭での学習習慣」について熱いトークを配信しています。
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