「早く宿題やらないと、寝る時間がなくなるよ!」「ちゃんと片づけないから忘れ物やなくし物が多いんだよ」。保護者目線だと何かとストレスになる子どもの行動。ガミガミ言わなくても、子どもに伝わる方法を日本メンタルアップ支援機構代表理事の大野萌子先生にうかがう最終回。今回は、生活習慣に関するガミガミを改善する方法についてうかがいました。
翌日の学校の準備をしてほしい
最初から子どもにまかせっきりでは、なかなかうまくいきません。かといって、親が全部やってあげても解決にはなりませんよね。
ここでも大切なのは「いっしょにやろう」と声かけをすること。もし明日の準備をしようと提案したのに「いや」と言われたら、その理由を聞いて「じゃあ、いつにする?」と相談しましょう。そこで決めた約束は、きちんと守ることも大切です。場合によっては「決めた時間に準備しなかったら明日のゲームの時間はなしにする?」など、約束を守らなかったときのルールも決めておくとよいかもしれませんね。家庭内であっても、ルールは守るもの、という認識をもったほうがよいのです。
ランドセルを片づけてほしい・玄関の靴そろえてほしい
「ランドセルを出しっぱなしにしない」「靴をぬぎっぱなしにしない」など、否定形のことばで注意していませんか? まずは「ランドセルを自分の部屋に持っていってね」「玄関の靴をそろえてね」など、肯定形のことばで話してみてください。
幼児期であれば、ことばで説明する前に、玄関に足形のシールをはっておくと、わかりやすくてよいでしょう。少し大きくなれば「玄関の靴がそろえてあると、次にはくときに便利」「ランドセルが片づくと、リビングがすっきりする」など、理由をつけて説明することも大切です。
そしていちばん重要なのが、できたときはきちんとほめること。靴をそろえていたら「玄関がきれいで気持ちいい!」、ランドセルを自分の部屋に片づけたら「リビングが広々した!」など、少々大げさなくらいにことばにすることがポイントです。注意はするのにできたらほめない、というのはNG。子どもの立場にたつと「ほめてくれないのなら、やらなくても同じ」となってしまいます。
ハンカチや給食袋、体操着袋などを忘れずに持ち帰ってほしい
私の家では、体操着袋を複数用意していました。子どもは忘れてくるものなので(笑)。「どうして忘れてくるの‼」とイライラするくらいなら、親自身の心が平穏でいられる方法を選択肢に加えるのもアイデアのひとつです。
私は、「学校に置いてある汚れたほうを持って帰ってきてね」と言って洗濯した新しいものを持たせていました。実は私自身、幼少期に忘れ物をすると母にとてもしかられたのですが、それでも忘れ物をなくすことはできませんでした。そこで、親のイライラを解消するほうが得策だと思ったわけです。複数用意するのが難しければ、同じものを使ってもよいのではないでしょうか。洗濯したきれいなものを使いたいと子ども自身が思えば、持って帰ってくるようになります。
また、忘れ物をしてしまったときに、どう対処するかを考える力も大切ですよね。先生に忘れ物をしてしまったことを話して相談するとか、違うクラスの子に借りるとか…。そんなピンチの際の処世術を身につけるのも必要だと思います。
きょうだい仲良くしてほしい
きょうだいそれぞれを認めるサインを親が送ることが大切です。親が子どもたちに分け隔てなく向きあっていれば、きょうだい仲も自然とよくなるのではないでしょうか。
たとえば、親と子どもが1対1で過ごす時間を定期的につくる。「明日は○○といっしょにお出かけする日ね」、「来週は△△といっしょにお出かけする日ね」というように、それぞれと過ごす予定をつくっておいて、その日は1対1の会話を楽しむのです。そして、個別に「○○のこと、大好きだよ」「△△のこと、とても大切だよ」という声かけをしましょう。
「きょうだいなんだから、仲良くしなさい!」などとしかるのはNG。子どもたちをひとくくりにして対応していると、子どもたちはお互いがライバルになって争いがはじまってしまいますよ。
食事のマナーを身につけてほしい
食事をするときの姿勢や箸の持ち方など、マナーを身につけてほしいときも、「そんな姿勢じゃ、みっともない」「箸の持ち方がおかしい」などと否定形で話すのはNG。「背筋がのびているとすてき」「箸をちゃんと持つとかっこいい」など、肯定することばを使いましょう。もちろん、子どもにマナーを促す前に、親自身がきれいな食べ方をしていることも大切です。
どうしてもガミガミ言ってしまうとき
ケース別でいろいろなことばかけや対処法をご紹介しましたが、それでもガミガミ言ってしまうこともあるでしょう。そんなときは、親自身にストレスがたまっているのかもしれません。親も人間ですから、自分のメンテナンスも必要。イライラしているなと思ったら、自分のために使う時間を用意してリフレッシュしましょう。自分に余裕ができれば、大概のことは許せるようになります。
大切なわが子に、ちゃんとした大人になってほしいという思いからだとしても、ガミガミ注意するだけでは逆効果。親の思いを上手に伝えながら、よりよい親子関係を築いていきましょう。
この記事の監修・執筆者
一般社団法人日本メンタルアップ支援機構(メンタルアップマネージャⓇ資格認定機関)代表理事、公認心理師。防衛省初のハラスメント教育担当。著書「よけいなひと言をわかりあえるセリフに変える親子のための言いかえ図鑑」(サンマーク出版)、「1ステップで気分があがる 気持ちのきりかえ事典」(扶桑社)など。そのほかメディア出演多数。https://japan-mental-up.biz/
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