「専業主婦だから、育児も家事もきちんとやらなきゃ」「仕事と家のことをうまく両立しなきゃ」と、がんばりすぎていませんか?
一人で抱えこんで、心も体も疲れ切ってしまわないためには、夫婦間の育児・家事分担を見直すことが大切です。
でも、「育児や家事にあまり興味のなさそうな夫と、どう分担すればいいかわからない…」というのが実際のところだったりします。
そこで、内閣府「子ども・子育て会議」委員や厚生労働省「イクメンプロジェクト推進チーム」委員などを兼任し、2児の母でもある、株式会社ワーク・ライフバランス代表の小室淑恵さんに、夫婦の協力体制の上手な作り方を教えていただきました。
お話:小室 淑恵さん(株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役社長)
実は、夫だって本当は協力したい!
育児・家事に参加しようとしているようでいて、妻の不満を買ってしまっている夫の話はよく耳にします。
娘の熱が下がったので登園させようとしたら、夫に「まだ今日は休ませた方がいいんじゃない?」と言われた…私だってそうしたいけど、仕事が休めないんだよ! 代わりに休もうともしないくせに!
手作りの離乳食を子どもが食べないのを見て、夫が「この前の市販品はよく食べたよね」と一言…子どものために時間をかけて作ったのに。自分で作ってみろとイライラ。
手伝ってくれない夫にイライラしたり、分担しているつもりでも、妻の負担のほうがはるかに大きく、「もっと夫がやってくれたら」と思うことも少なくありません。
そこで、育児・家事について、普段なかなか聞くことのできない、夫側の意見も聞いてみました。
皿洗い、洗濯干し、風呂・トイレ・リビング掃除、ごみ捨て、息子の風呂から寝るまでの準備、保育園への見送りなどを担当していて、ピンチヒッターでお迎えに行くこともよくあります。
たまに妻からダメ出しを受けると、「やっていないならまだしも、やっているのに…」といい気はしないですが、指摘は受け入れています。
夫婦で分担するのが普通だと思うし、育児・家事に堂々と関われる、いまの世の流れをありがたく思っています。
最初は私がなにを手伝ってよいかわからず、妻もなにも言ってくれず不機嫌なのが一番嫌で、お互いフラストレーションが溜まっていたと思います。
今では役割分担ができていますが、当時は妻に無理をさせていたと後悔しており、妻が仕事、育児、家事を抱えこんでしまわないよう、手伝わなければと思っています。
育児休業をとることにしたとき、はじめは妻や義父に、「今のご時世、休みはとりにくいのでは」「今後の会社での立場は大丈夫なのか」と心配されましたが、子育てに真摯に向き合いたかったし、お金には替えられない貴重な経験ができたので満足しています。
このように、家事分担はやぶさかではないし、実は子どもともっと関わりたいと思っている夫もいるのです。
「専業主婦はもちろん、仕事を持つ妻も時短勤務や育休などで、『自分のほうが家にいる時間が長いし、夫は仕事が大変だから』と、家事のほとんどをしてしまう方も多いようですね。しかし、それでは夫は妻に任せることに慣れてしまって、協力を頼まれてもどうやればいいのかわからなくなってしまいます。また、妻が育児を進んで受けもってしまうことで、夫は子どもとの接し方がわからず、子どもからもなつかれなくなり、育児からどんどん遠ざかってしまうのです」と小室さん。
「家庭の事情で仕事を調節してもらうのは申し訳ない」「夫より自分のほうが得意だから」などと、妻がよかれと思って家事や育児をがんばっているうちに、協力しようと思っても夫が手を出しにくくなり、結果的に妻が一人で追い込まれてしまうのです。
「共働きで仕事も家のことも妻一人でこなすのは難しいですし、専業主婦も家のことばかり抱えこんでしまうと、孤立して心身とも疲弊してしまうリスクが高くなります。少しずつでも夫を育児・家事に巻きこみ、協力体制を作りましょう。」(小室淑恵さん)
まずはコミュニケーションをとろう
慣れてしまった体制をいきなり立て直すのは、なかなか難しいものです。
特に、夫が現状に不満がなかったり、仕事で疲れていたりすると、反感を持たれてしまうかもしれず、どうしたらよいのでしょうか。
「大切なのは信頼関係を深めることです。夫婦に限らず、誰かに行動を変えてほしいとき、普段からのコミュニケーションで信頼を築けていないと、聞き入れてもらうのは難しいもの。以下のステップで、コミュニケーションを見直すことから始めてみましょう」(小室淑恵さん)
① “褒める”&“感謝する”
「その服、似合っているね」など、どんなことでもよいので、褒めることを習慣にしてみましょう。褒め言葉は循環するので、夫から褒められる機会も増え、お互いを認め合う気持ちが生まれてきます。
たとえ気に入らないやり方をしていたとしても、ダメ出しだけをすると「せっかくやったのに」と、夫のやる気を削いでしまいます。
そんなときは「もったいない」という言葉を使ってみましょう。
やってくれたことへの感謝の気持ちをしっかり伝え、「さらにこうすると完璧! もったいないね」と伝えるのがよいでしょう。
できていないことがあると「電気をつけっぱなしにしないでよ」などと責めてしまいがちですが、むしろ電気を消してくれたときに「電気を消してくれてありがとう! 助かる!」とプラスの言葉で伝えるほうが、お互いに気持ちもよく、夫が進んで電気を消すようになってくれます。
② 困っていることを伝える
妻が言葉にして伝えていないために、夫がうまく協力できないという場合もあります。
「帰りがけに買い物くらいしてよ」と伝えても、その背景が理解できていないことが多いのです。「子どもが寝てしまうと買い物に行くタイミングがうまくとれないんだ」「仕事帰りにお迎えと買い物に行くと、慌ただしく料理することになって大変なの」と、困っていることを具体的に伝えて、実際に夫が行動してくれたらタイミングよく「本当に助かった!」と褒めます。
どうしても仕事の都合で協力が難しいという夫でも、「ごはんはできあいのものにしてもいいし、暑い日や雨のときなどはタクシーを利用してもいいのでは」「ベビーシッターやハウスキーピングを頼むのもありだよね」と提案してくれる人もいるので、困っていることはどんどん相談して擦り合わせていきましょう。
③ 1つのカテゴリーを任せる
「夫に『手伝おうか?』と言われて、手伝い気分でいるのかとムカついた」ということはありませんか?
夫にもっと主体的になってもらうためには、「料理は全て夫の担当」など、一つのカテゴリーを完全に任せてしまうとよいでしょう。
このときも、“褒める”&“感謝する”ことがポイント。
「この煮物すごくおいしい! どうやって作ったの? 私だとこんなにうまくできないよ」などと褒めると、夫は「そんなに上手なら、これは俺がやらないとな」という気持ちになり、やりがいをもって取り組んでもらえます。
“ポイント表”で分担を見える化しよう
「育児・家事の分担を考える際、気をつけなければいけないのは、子どものお迎えや掃除など、毎日のことや目立つ項目だけを分担して、三角コーナーの掃除やシーツの交換など、不定期で細かな作業はうやむやにしてしまうことです。
細かい作業は結局妻のほうが気づいてやる事が多くなり、不公平感が生まれてしまいます。
そこで、育児・家事を事細かにリストアップした“ポイント表”を作るのがおすすめ。
面倒・苦手なものを高得点にして全ての項目に点数をつけ、取り組んだほうにその点数を加算していき、月ごとに集計します」(小室淑恵さん)
二人のどちらがどのくらい負担したかがわかりやすく、ゲーム感覚で楽しめますね。
ただし、項目や負担感は変化するので、ポイント表は定期的に見直しましょう。
夫婦二人がプレイヤー
近くに両親がいるとつい頼ってしまいますが、夫を疎外してしまわないよう、基本的にはまずしっかり夫を頼りたいもの。
「家のことに協力してもらうことで、夫が“残業ありき”の働き方を見直すきっかけになった例もあります。
忙しい毎日でも、子どもが寝たあとに二人のお茶タイムを作って、子どものことや仕事の状況を話したり、夫が外出するときは、玄関まで見送ったりなどと、日頃からちょっとした工夫でコミュニケーションをとっていくだけでも、お互いの信頼関係が変化し、しっかりとした協力体制を作ることにつながります。
テニスのダブルスのように、二人がプレイヤーとなってサポートし合いながら、かけがえのない家族の生活を築いていってください」(小室淑恵さん)
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