夏休みの家族旅行を子どもの学びにつなげてみませんか? 旅を通じて子どもの心と脳を育む「旅育」について、旅行ジャーナリストの村田和子先生にうかがいました。
文/こそだてまっぷ編集部
そもそも「旅育」って何?
旅育とは、旅を通じて子どもの「生きる力」を育むことです。たとえば、普段の生活では出会うことがない人とのコミュニケーションや体験を通じて他者理解や社会性を身につけたり、体験を通して探究心や観察力を育んだりします。家族旅行は楽しいだけでなく、親子にとって学びのチャンス。子どもの興味や関心を深めるために旅を活用してみましょう。
子どもが興味を持っている分野の“本物”に触れる旅を
旅は「どこに行くか」も大切ですが、「何をするか」というテーマが重要で、学びにつながりやすくなります。テーマは自由に設定してかまいません。わかりやすいのは「子どもが興味を持っている分野の“本物”に触れる旅」です。たとえば、鉄道好きなら人気のローカル線に乗る、歴史が好きならその舞台となった場所を訪れる旅など、子どもの希望を聞きながら決めるとよいでしょう。写真などで見たことはあっても、リアルな“本物”に触れる体験は、子どもの「なぜ?」「もっと知りたい」という好奇心や探究心をさらに刺激します。
子どもの「もっと知りたい」という意欲が高まったら、保護者はインターネットで調べる手助けをしたり、観光パンフレットを取り寄せたり、地域の資料館のような場所を訪れるなど、その好奇心に寄り添うサポートをしていきましょう。子どもが、調べることや知ることの楽しさに気づけるとよいですね。
子どもが体験できるプログラムに参加する
旅先で子どもが体験できるプログラムやワークショップなどがあったら、活用してみましょう。たとえば、乗馬やラフティングなどのスポーツ教室、伝統工芸やクラフトなどの手作り教室、星空観察などの自然教室などです。旅先での、インストラクターや職人さんなどスキルを持った大人との出会いは貴重な体験となります。また、同世代の初対面の子とのコミュニケーションを通して新鮮な発見があるかもしれません。さらに、旅先で体験したプログラムを通じて、思わぬ自分の才能を発見したり、新しい分野へ関心を広げたりするきっかけになることもあります。体験に参加する際に大切なのは「親がさせたいこと」ではなく「子どもがやってみたいと思うこと」を選びましょう。事前に説明をするなど、子どもの意欲を引き出してから参加すると、学びが深まります。
これらの体験教室に親子で参加するのもオススメです。その際は保護者自身も“初めて”のプログラムに挑戦してみましょう。というのも、保護者も「生徒」になって「先生(専門家)」から教わることで、親子が同じ目線で感動を共有できるからです。また、保護者が本気で楽しく学ぶ姿を見せると、子どもの学ぶ意欲も高まります。
オンラインを活用して学びを深めよう
スマホやタブレットなどの端末を利用して、旅の学びを深めることもできます。
コロナ禍で通常営業をすることができなかった動物園、水族館、科学館など多くの社会教育施設が、今、オンラインで動画など各種バーチャル・プログラムを制作・公開しているのをご存じでしょうか。これらは、リアルでは見ることができない世界を見ることができるので、事前にチェックしておくというのもオススメです。たとえば、動物園や水族館などの飼育員の目線で見たバックステージの動画などがあります。これらの動画を先に見ておくと、子どもの「ここへ行きたい」「もっと見たい」という好奇心や探究心が深まります。
最近は、旅先で出会った昆虫や植物などについてすぐに詳細が調べられる子ども向けアプリなども充実しています。事前にインストールしておいて、旅先で「この虫はなんていう名前だろう?」などと疑問を持ったら、その場で利用すれば、子どもが答えにたどり着くサポートになります。
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子どもにカメラを預けてみよう
家族旅行では、子どもは写真の被写体になることが多いですが、子どもにカメラを預けて写真を撮ってもらうのもオススメです。子どもの目線で自由に撮影すれば、思いがけず興味や関心を持つものと出会えるかもしれません。子ども自身が何か好きなテーマを決めて撮影するのもよいでしょう。たとえば「旅先で食べたもの」「出会った生き物、昆虫、植物」「旅先での乗り物」など子どもが興味を持ったものでかまいません。旅先で見つけた珍しい標識(たとえば「鹿に注意!」など)や看板なども、ユニークな被写体になるはずです。
重要なのは、子どもが撮影した写真を見ながら、家族で「これは、なんの写真?」「すごいね。なぜ、この写真を撮ったの?」といった会話をし、作品をリスペクトすることです。このような振り返りは、自分の体験にどんな発見や価値があったのかに気づく探究学習の基盤になります。
旅の思い出を形に残せば、自由研究にも
旅を通じて感じた「おもしろかったこと」「驚いたこと」などは、そのままにしておくと、子どもは忘れてしまいがちです。先ほど紹介したように写真を撮影して形に残しておくのはもちろんですが、ほかにも観光パンフレットや施設の入場チケットなども旅先から持ち帰ってくるとよいでしょう。そして、家に帰ってからそれらを整理し、家族で思い出を振り返ってみましょう。旅先で撮影した画像をプリントアウトしてそのときの感想などを書き添えるだけで、低学年でも取り組みやすい自由研究になります。
旅先で挑戦した果物狩りなどの収穫体験や、その地域の伝統工芸品などを手作りする体験教室などの実体験が、のちに学校の授業で学習する内容と直結することも少なくありません。
旅先でポストカードを購入して、自分あてに郵便を出すのも楽しい振り返りになります。旅の思い出を形にして残し、家族で振り返ることで、学びへのモチベーションにつなげていきましょう。
家族旅行は、ちょっとしたコツを押さえれば子どもの学びにつながります。旅を楽しみながら、子どもの好奇心や探究心を刺激して、貴重な学びのチャンスとして活用していきましょう。
この記事の監修・執筆者
「旅を通じて人・地域・社会が元気になる」をモットーに活動。家族で旅をする魅力やヒントを伝え、講演やワークショップ等も実施。旅を通じて、子どもの生きる力を育む「旅育メソッド®」を提唱。著書に『家族旅行で子どもの心と脳がぐんぐん育つ旅育BOOK』(日本実業出版社刊行)。
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