【めっちゃかわいいーー】森の妖精*ニホンヤマネ

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体長約8cm、体重約18gと、手のひらに乗るくらいのニホンヤマネ。
くりくりした目、ふさふさの尾で、愛らしい姿です。
ニホンヤマネは日本だけにすむ哺乳類で、よくねむることで知られています。なんと、1年の半分は冬眠しています。
親子で日本の小動物に目を向けると、お子さんが生き物への関心を抱くきっかけになるかもしれませんね。

文/こそだてまっぷ編集部

目次

ニホンヤマネはどんな動物?

ニホンヤマネの分類

ニホンヤマネは、丸まって冬眠する様子から、“マリネズミ”と呼ばれることもありますが、ネズミよりもリスに近い仲間です。リス亜目ヤマネ科には28種ほどが含まれますが、その中のヤマネ属に分類されるのはニホンヤマネ1種だけです。
似た仲間はヨーロッパから中央アジア、アフリカなどで見られますが、東アジアにはほとんど見られません。もともとヨーロッパで現れたヤマネが世界に広がり、日本にまで達したものの、アジアでは大部分がほろびてしまい、極東の日本で生き残ったものがニホンヤマネのようです。

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日本で最も古い哺乳類のひとつ

ニホンヤマネは、祖先の姿や生態のままで、今もあまり変わらないため、「生きた化石」と呼ばれます。日本列島が大陸と陸続きだったころに日本にやってきて、約510万年前には日本にいたことがわかっています。日本で最も古くからすんでいる哺乳類のひとつで、現在は本州・四国・九州と、隠岐諸島の島後(どうご)にすんでいます。すんでいる範囲が徐々にせまくなっており、国の天然記念物に指定されています。
普段は木の上でくらし、おもに夜活動します。

リスやネズミとの違い

ニホンヤマネは体長8cmほど、尾を含めても14cmくらいです。体重は約18gで、ウズラの卵2個分ほどしかありません。姿はリスにも似ていますが、リスに比べて体が小さく、背中に黒い線が1本あるのが特徴です。この線は、木の枝やその影に見えて、敵からのカモフラージュになっていると言われます。尾にはリスほどではないものの、ふさふさした毛が生えています。

背中の黒い線は、敵の目をあざむくため?

ニホンヤマネのくらしぶり

木の上でのくらしに適した体

ニホンヤマネは、木の上ですばやく行動し、植物の実や種、昆虫などを食べてくらしています。時には、木の枝を下向きに走り下りることもあります。また、後ろあしだけで枝に逆さにぶら下がって、前あしで昆虫などをつかんで食べることもできます。
そんな驚きの動きができるのも、木の上での生活に適した体のつくりをしているからです。前後のあしを体の横から伸ばすことができ、木の幹や枝に抱きつきやすいこと、木の幹や枝に引っかけやすいかぎ爪やバランスのとりやすい尾をもつことなどが特徴です。また、それぞれのあしの裏によく発達した肉球があり、ねばりけがあるので、つるつるしたところでもつかんで登ることができます。

短い子育て期間

ニホンヤマネは、普段は群れや家族ではなく、1頭ずつでくらしています。決まった巣はつくらず、あちこちを転々としています。
妊娠したメスは、木の幹にあいた穴や木の股・すき間などに樹皮やコケで丸い巣をつくり、そこで3~5頭の子どもを産みます。子どもたちは母親から食べ物をもらうなどして20日間ほど育てられたあとに独り立ちしていきます。

木の幹の穴から外をうかがうニホンヤマネ

ニホンヤマネの冬眠

冬眠する動物たち

動物たちの中には、食料が乏しくなる冬の間、体温を下げてじっとしてエネルギーを使わないように過ごすものがいます。これが冬眠です。体温が気温に大きく影響される外温動物(変温動物)には、冬眠するものがたくさんいます。ヘビ、トカゲ、カメなどの爬虫類、カエル、イモリなどの両生類、ドジョウ、フナなどの魚類、昆虫類の多くがこれに当たります。
普段は気温に関係なく体温が一定の内温動物(恒温動物)の中にも、冬眠をするものがいます。ツキノワグマ、キクガシラコウモリ、シマリス、ニホンアナグマなどで、ニホンヤマネもそのひとつです。

体を丸めて冬眠する

秋の終わりが近づくと、ニホンヤマネは、たくさんの食べ物を食べ、春~夏の2倍もの体重になります。いよいよ冬になると、木の穴や樹皮のすき間、落ち葉や土の中など、さまざまなせまい場所に入り、体をボールのように丸めて冬眠します。体を丸くするのは、表面積をできるだけ小さくして体から逃げる熱の量を減らすためだと考えられます。このようなポーズは、シマリスなどにも見られます。
冬眠期間は半年にも及びます。その間、食べることも水を飲むこともせず、ふんもしないでねむり続けます。

ねむりのエキスパート!?

冬眠している間のニホンヤマネの体温は、周りの温度に合わせて上がったり下がったりします。しかし、外気温が下がり過ぎると命の危険がせまるので、その場合は体温が上がり、目をさますようにできています。目覚めたニホンヤマネは、安全な場所に移動してまたねむりにつきます。そして、春になって暖かくなると、体温が上がって長いねむりからさめるのです。小さな動物に備わった、厳しい冬を無事に乗りこえる知恵には感心させられます。

落ち葉の下で体を丸めてねむるニホンヤマネ

ヤマネの研究が宇宙開発に役立つ!?

このような冬眠のしかたは、ニホンヤマネに限らず、アフリカなど海外のヤマネも似ています。これらヤマネたちの冬眠の研究が、意外な分野で行われています。それは宇宙開発の分野です。
将来、人間が何年もかけて遠い宇宙に旅をする時代に、人工的に冬眠状態にして旅をすることが想定されています。その間食事などをしなくてすむからです。ヤマネの冬眠に、人間も長いねむりにつくことができるヒントがあるかもしれません。そのためにヤマネの冬眠についての研究が行われているのです。ヤマネと宇宙がつながっているなんて、おもしろいですね。

小さく、愛らしい姿のニホンヤマネにも、さまざまなひみつがあることを、お子さんとともに話し合ってみましょう。ただし、天然記念物なので、つかまえたり、飼ったりすることはできないのでご注意を。

この記事の監修・執筆者

肉食爬虫類研究所代表 富田京一

とみた きょういち/1966年福島県生まれ。爬虫類・恐竜研究家。TCA東京ECO動物海洋専門学校 恐竜・自然史博物専攻講師。おもに沖縄のマングローブ地帯に生息する爬虫類の生態を研究している。

「奥出雲多根自然博物館」「恐竜王国2012」など博物館や博覧会の監修、『映画ドラえもん のび太の恐竜2006』『映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生』など映像作品の時代考証も行ってきた。

著書に『そうだったのか! 初耳恐竜学』(小学館)、『恐竜は今も生きている』(ポプラ社)、『日本のカメ・トカゲ・ヘビ』(山と溪谷社)、監修書に『あたまがよくなる! どうぶつクイズ』(Gakken)などがある。

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