【幼小教育の専門家に聞く】年長児さんのときに伸ばしてあげたい力とは? 第2回「聞く力・話す力」

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4月から年長児さん(5・6歳)になるお子さんは入学まで1年以上先ですが、ランドセルをはじめ徐々に小学校入学を意識することが増えてくる時期になります。
小学校では、どのような場面で、どのような力が必要で、そのために就学前からやっておくことはあるのでしょうか?

幼稚園・小学校の両方で豊富な指導経験をおもちの横山洋子先生に、就学前に伸ばしておきたい力について、3回にわたってお話をお聞きしました。

お話:横山 洋子先生(千葉経済大学短期大学部こども学科教授)
取材・文:今井 美栄子
イラスト:内藤 由季子

目次

小学校で必要な「土台の力」と「4つの力」

小学校で、今、必要とされているのが4つの力、「聞く力・話す力・諦めない力・仲良くする力」。そして、それらの土台となる、もっとも重要な力が「自ら考え行動する力」です。

第1回では「自ら考え行動する力」について取り上げました(第1回はこちら)。

第2回となる今回は「聞く力」「話す力」についてお話しします。

小学校で必要な4つの力 その1 聞く力

編集部:園では先生が連絡帳やお便りで何もかも知らせてくれて、子どもを介して何かを伝達することはありませんでした。でも小学校では、子どもがちゃんと自分で聞いてこないといけません。「えっ、うち、聞いてないよ?!」なんてことにならないか心配です。

「聞く力」とは?

どうして必要なの?

小学校では入学したその日から、校舎の使い方、教科書の扱い、生活のルールなど、先生からたくさんの説明を受けます。園生活よりもぐっと情報量が増えますから、まずは先生の話に耳を傾け内容を理解する「聞く力」が必要になります。

静かに聞くことだけが「聞く力」ではない

ただ黙って話を聞いているだけで、いざ行動となると、どうしたらいいかわからない子がいます。それは、先生の声が右から左に流れているだけで、内容が頭の中まで届いていないから。理解していないから。「なんか耳に入ってきてるなー」とただ「受動的」に聞き流しているだけだからなのです。

大事なのは「能動的」な聞きかた

話を聞く際に大切なことは、まず「何を伝えたいんだろう?」と相手に注意を向けること。つまり「能動的」に耳を傾けることです。そして、聞き取った話を受け止め、理解し納得すること。そこまでできてはじめて、「聞く力」が身に付いていると言えるのです。

言葉を知らないと理解できない

外国語を聞く場合、いくら文法がわかっていても、単語を知らなくては理解できませんね。同じように、先生の話が知らない言葉だらけで意味がわからなくては、せっかく振り向けた注意力も失せてしまいます。語彙力は聞く力を支える力なのです。

「聞く力」を伸ばすには、絵本がおすすめ!

絵本の中での「体験」が聞く力に

「聞く力」を伸ばすために効果的なのは「絵本の読み聞かせ」。これに勝るものはないでしょう。子どもの力は「体験」によって伸びます。絵本の中では主人公と一緒に冒険し、ドキドキやワクワク、喜び、悲しみなどを疑似体験することができます。その「体験」を「言葉」で心にインプットすることで、聞く力も身に付き、語彙力も増すのです。

どんな絵本がおすすめ?

絵本は、お子さんが好きなもの、保護者が好きなものを選びましょう。能動的に「自ら読みたい!」と思えることが重要です。より体験を広げるなら、いろいろな国の文化にも触れられる「世界の名作」がおすすめ。科学系の絵本や図鑑もいいですね。物の名前を読み上げるだけでも楽しめます。また、時には悲しい話や怖い話もぜひ読んであげてください。そのようなお話は「心の予防注射」。安心できる人と一緒に疑似体験することで、心に、つらいことも乗り越えられる「免疫」が付いてきます。

1日1冊を目安に無理なく

無理して一度に何冊も読む必要はありません。1日に1冊でも読めればラッキーですが、疲れているなら、物語の動画を視聴したっていいのです。できる範囲で頑張りすぎないことが、続けるコツです。

上手に読めなくても気にしない

棒読みでもかまいません。文字を音にするだけでもよいのです。上手下手よりも、保護者が自分のために時間をさいて肉声で読んでくれることが、子どもはうれしいのです。また、子どもが先にページをめくってしまっても、戻さずにそこからまた読みましょう。話が飛んでも、「めくりたい!」という気持ちを大切に。子どもが途中を知りたくなったら、自分で戻るでしょう。それも、その子の絵本との出会い方であり、親しみ方であり、体験なのです。

編集部:「楽しみながら聞く」ことが「聞く力」につながります。まずは保護者も一緒に楽しみながら、いろいろなお話に、いろいろなかたちで、ふれていきたいですね。

小学校で必要な4つの力 その2 話す力

編集部:いろいろな園からたくさんの子どもたちが集まる小学校。1年生は最初のうちは「トイレに行きたい」と言うのもドキドキするとか。園では先生のほうから声をかけてくれることも多かったけど、小学校ではうまく自分から伝えられるかな……と気になりますよね。

「話す力」とは?

どうして必要なの?

「何が要るの?」「どこの教室へ行くの?」。小学校入学当初は、慣れない環境でわからないこともあるでしょう。そんな時は、友だちに聞いたり、先生にたずねたりして自分で解決をしていかなくてはいけませんね。いろいろな場面で「話す力」が求められるのです。

まずは話したいことを「見つける力」が必要

語学が上達するのは、必要に迫られ何とか伝えようとするときですよね。どんなに流ちょうに言葉を操れても、伝えたいことが無ければ話はできません。まずは、自分が発見したこと、感じていること、困っていること、してほしいことなどに気付いて、「話したい!」と思うことが必要です。

自分の体験から生まれる自分の言葉で

例えば、何かの感想をたずねられた際に、「おもしろかったです」と、はきはきと流れるように話せていても、実は何に対してもオウム返しのように決まったフレーズを繰り返しているだけだったり、例文のような決まり文句を言っているだけだったりする場合があります。その結果、みんな似たような感想になることも…。そんなはずはないですね。体験から感じることは、一人ひとり違うはず。「話す力」とは、あらかじめある例文を選んで話すことではなく、自分が感じたことを、自分の言葉で伝えることなのです。

「話す力」を伸ばすには、「楽しかったこと話」がおすすめ!

1日を振り返り、楽しかったことを話そう

寝る前に布団の中でその日を振り返り、親子で「今日はこんなことが楽しかったよ、うれしかったよ」と話し合ってみましょう。今日の「自分にとっての幸せ」を見つけることは、話のタネを見つける力になります。今日という1日が意味あるものだったと感じ、もう一度幸せな気持ちになることもできます。「明日は何を食べたい?」「次の休みには何がしたい?」と未来の話をするのも楽しいですね。

「体験」をきっかけにすると話しやすい

楽しかったことを思い出して言葉にすることは、それをもう一度体験(追体験)することでもあります。楽しい体験は、「言葉にして相手に伝えたい!」という動機になるのです。また、実際に「自分の身をもって」体験したことなので、リアリティのある「自分の言葉」を見つけやすくなります。

「話してくれてありがとう」の気持ちを伝えよう

もしも思うように言葉が出なくて、もどかしそうにしていたら、子どものタイミングをじゅうぶんに待ちながら、「いつ?」「どこで?」「だれと?」「どんな気持ちだった?」などの助け舟の質問を出してもいいですね。あまり話したくなさそうなら、「続きはまた明日にね」と切り上げましょう。そして最後には「話してくれて、ありがとう」のひとことを添えてください。「話すって楽しい! 喜んでもらえてうれしい!」と思えることは、「話す力」をぐんと伸ばしてくれるでしょう。

編集部:まずは「話したい!」という気持ちになることが大事なんですね!小さなお話のタネをたくさん見つけて、家族でおしゃべりを楽しみたいですね。

今回は、小学校で必要な4つの力のうち、「聞く力」「話す力」についてお話ししました。
第3回は、「諦めない力」「仲良くする力」の伸ばし方についてご紹介します。お楽しみに!

横山 洋子(よこやま ようこ)先生
幼稚園・小学校の教諭として17年間勤務。その経験を生かした、具体的で温かいアドバイスが指示されている。
ヤフーニュース公式コメンテーター
船橋市子ども・子育て会議 会長
船橋市社会福祉審議会児童福祉専門分科会副会長
主な著書に
「子どもの育ちをサポート! 生活と遊びから見る『10の姿』」ナツメ社
「0〜5歳児 非認知能力が育つこれからの保育」池田書店(監修)
ランドセル名作シリーズ「3つのまほう」「3つのプレゼント」学研(監修)など

この記事の監修・執筆者

千葉経済大学短期大学部こども学科 教授 横山 洋子

富山大学教育学部附属幼稚園・教諭、富山市立古里小学校、富山市立鵜坂小学校・教諭を経て、現在は千葉経済大学短期大学部こども学科の教授を務める。著書には、『保育者のためのお仕事マナーBOOK』、『保育に生かせる!年中行事・園行事ことばかけの本』、『毎日のちょこっとあそび』(学研)などがある。

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