「甘えさせる」と「甘やかす」の違いは?~正しい「甘えさせ」が子どもの自立のカギ

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「甘えさせる」と「甘やかす」の違いは?~正しい「甘えさせ」が子どもの自立のカギ

可愛いわが子の要望にはこたえてやりたい…。でも、“甘えさせる”と“甘やかし”の差って何? 自分勝手な子に育ったらどうしよう?

そこで、元幼稚園教諭で、幼児教育に詳しい、田宮由美さんにお話を伺いました。

お話:田宮 由美

目次

子どもが甘えてくるのは親の愛情を確認したいとき!

子どもが甘えてくるのは、

  • かまってほしい
  • 寂しい
  • 親の愛情を求めている
  • 親の愛を試している

などの理由があります。

赤ちゃんの頃は、生活の全てを親にゆだねて生活しています。お腹が空いて泣けば、ミルクを飲ませてもらい、オムツがぬれて気持ち悪ければ、泣いて取り替えてもらいます。

こんな風に、いつもそばに親がいてお世話をしてくれるのは、赤ちゃんにとって、心地よくて安心できる状況です。

身体が成長すると、1人でできることが増え、心も自立に向っていきます。

そして、“心地よくて安心できる状況”である親から離れ、自分でやってみたくなる時期がくるのです。これがいわゆるイヤイヤ期と言われている2歳前後の時期。親の言うことに対し、なんでも反抗し「イヤイヤ」「自分でする」など、親を困らせることが多いでしょう。

このように、段々と親から離れて自立していくのですが、1人でできると思っていたことができなかったり、いつもそばにいてくれた親がそばにいなかったりすることで、ふと、不安や寂しさを感じるときがあります。

そんなとき、かまってほしくなったり、今も自分のことを愛してくれているか愛情を確かめたりと、親の愛情を求めて、甘えるのです。

甘えることは、心の自立に必要な成長過程

子どもは親から離れ、不安を感じたときに甘えます。

その甘えにこたえてもらうことで、安心を得ることができるのです。そして安心を得ると、心は自立に向かってまた少しずつ成長していきます。

子どもの甘えは、心の自立、順調な成長の過程と思ってよいでしょう。

甘えられないと、不安を抱いたままになる

親に甘えられなかったり、こたえてもらえなかったりした場合、不安を抱いたままになり、心が自立に向かうことが妨げられる状態になってしまいます。

不安があるままでは、親子の信頼関係が築けません。

親子の関係が安定している=“帰る場所が必ずある”という安心感のもとで、初めて子どもは周囲に目を向け、興味をもった物事に挑戦することができます。

人間関係も同じで、親子の信頼関係があることで、家庭、社会へと広がっていきます。

最初に築かれる親子の信頼関係が構築されていないと、他人との人間関係もうまくつくれないでしょう。

また、親に愛されているという確信がないため、何事にも自信がもてなくなります。

自信をもてないことで被害妄想をもったり、自分の価値を感じられなくなったりすることもあります。

“甘えさせる”と“甘やかす”はどう違う?

“甘えさせる”と“甘やかす”の明確な線引きは難しいですが、見分けるための2つのポイントがあります。

“甘えさせる”の2つのポイント

  1. 子どもが情緒的なことや、スキンシップを求めてくるとき
  2. 子どもが抱く気持ちから出る要求

 例えば、「ママ、お話聞いて!」「抱っこして~」と膝の上に座ってきたりしたときは、情緒的なこと・スキンシップを求めているので、“甘えさせる”に当たります。

しっかりと甘えさせて、子どもの思いを満たしてあげましょう。

また、日頃一人で牛乳をコップに移せるのに、「ママ、手伝って」と言ってくるのは、子どもが不安を感じたり、注目してほしかったりなど、子どもの思いから出る要求ですので、少し手をとめて手伝ってあげてくださいね。

幼い頃から十分に甘えさせてもらった子は、成長するにつれ、自然と甘えることが減っていきます。

“甘やかす”の2つのポイント

  1. 金銭的や物質的な要求全てにこたえる
  2. 親の都合からの行為

 例えば、「○○買って」「おこづかい、もっとほしい」など、金銭的・物質的な要求が子どもから出たときに、「仕方ないわね、今日だけよ。全部買ってあげる」。これは、“甘やかし”です。

こういった要求が出たときには、全部OK・全部ダメ! とするのではなく、「おもちゃは、今度のお誕生日に買ってあげる」「今日は、おやつ1つだけ買おうね」など、ご家庭での約束を作るとよいでしょう。

その他、子どもが牛乳をコップに入れようとしているとき、こぼすと後片付けが大変だからと親がコップに牛乳を入れてしまうことは、親の都合による行為なので“甘やかし”に当たります。

甘やかすことは過干渉であり、正しく甘えられていない

“甘やかす”ことは、親が過干渉や過保護の状態でもあり、子どもは正しく甘えられなかったということにもなります。そのため、心の自立は妨げられるでしょう。

いつまでも心が自立しないと、問題が起こったときに他人に責任転嫁したり、相手の気持ちを考えることが苦手になったり、自己中心的な考え方になります。

また、相手と譲り合うことも苦手になるでしょう。そうなると、社会に出てから、生き辛さを感じることが多くなることも考えられます。

「甘えさせる」「甘やかす」のお悩みQ&A

判断に迷うような「あるある」の悩みを、先生にお答えいただきました。

皆さんならどうするか、一緒に考えながらご覧ください。

Q1.子どもに、いつもはできることを「今日だけやって」と言われた。または、保育園では自分でできるのに、家では「自分で着替えられない、ママやって!」と言われることがある。手伝ってあげるのは甘やかし?

A1.これは“甘えさせる”に当たります。ぜひ手伝ってあげて。

日頃、自分でできることを「手伝って」と言ってくることは、心に何らかの不安を感じているのです。

それは、「今日はたまたま早起きできなくてうまくいかず、嫌だった」気持ちかもしれません。「保育園ではがんばっているから、家ではママに手伝ってほしい」のかもしれません。

ここでは、親の愛情を確かめるため、甘えてきていると思って、ぜひ手伝ってあげてください。

しっかり甘えさせると、親は自分のことを愛してくれている、と感じ、また1人でチャレンジするようになるでしょう。

Q2.買い物に行った先で「これ買って!」「だっこ~」と言う子ども。こたえない方がよいとは思うけれど、放っておくと騒いだり泣いたり、正直、周りの目が気になります…。

A2.買い物前に約束を! こたえられない場合は子どもが理解できるよう、説明を。

「これ買って!」という物質的な要求はわがままと捉えてください。前述のように、ご家庭で決めた約束を、買い物に出かける前に確認して、「お約束したよね?」と伝えるのがベスト。

一方、「だっこ~」と言うのは、スキンシップを求めて甘えてきている状態です。できれば、だっこしてあげられるとよいでしょう。でも、買い物の途中だと、荷物を持っていたりして、子どもの要求にこたえられないときもありますよね。

そのときは、「今、ママは荷物をたくさんもっているから、家に帰ったらいっぱいだっこしてあげるね」などと、子どもが理解できるように話してみましょう。

その約束は、ママも必ず守りましょう。

でも…これで子どもが納得しない場合もありますね。

時には騒いだり、大泣きしたりで、周囲の目を気にして、子どもの要求にこたえる場合もあるでしょう。

そんな場合もあってOK!

実は、「駄々をこねる」原因の1つには、日常の親の関わりが少ないことが挙げられます。子どもは、ここで大泣きすれば親はかまってくれる、とわかっているのです。

親の関わりが子どもにとって足りておらず、「ここでならきっと叶えてもらえる」と思っている場面で受け入れてもらえなければ、親への不信感を募らせます。

それが蓄積すると、「どうせ私は…」「いつもぼくばかり…」と負の感情が生じてきます。

そのため、一旦、子どもの要求を可能な限り、受け入れましょう。その後、日頃の親子の関係を振り返ってみるとよいですね。

「甘えさせる」ことが子どもの自立につながる

「正しく甘えさせて」もらえずに育つと、絶対的な安全基地を得られず、安心して外の世界に向かうことができなくなってしまいます。

自己中心的な考えになったり、自分に自信がもてなかったり、不安を抱いたまま放り出されることになるのです。

でも、「上手に甘えさせる」ことで、子どもは満足感を得て、自分に自信をもって育っていきます。

親は“甘えさせる”と“甘やかし”の違いをしっかりと見極めて、子どもの心の自立を支援してあげましょう。

この記事の監修・執筆者

家庭教育協会「子育ち親育ち」代表 田宮 由美

小学校教諭・幼稚園教諭・保育士資格を持ち、幼児教室指導者、幼稚園、小学校勤務、小児病棟への慰問や子どもの声を聴くボランティア活動などを通し、多くの親子に関わる。2010年に、「子ども能力開花くらぶ」を開設。執筆活動や講演会、個別教室など、幅広く活躍中。日本子育て学会所属。著書に『子どもの能力を決める0歳から9歳までの育て方』(中経出版)。

All About子育てガイド
https://allabout.co.jp/gm/gp/1662/

家庭教育協会「子育ち親育ち」
https://kosodate-ai.com/

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