最近、「自己肯定感」という言葉をよく耳にします。
「自己肯定感の高い子どもは…」とか、「子どもの自己肯定感を伸ばすには…」など、子育て中の方にとって気になるフレーズですね。
自己肯定感の高い子どもと、低い子どもとでは、何が違うのでしょうか?
保育の現場で、子どもたちと関わり、保護者の相談に乗ってきた、元保育士で日本児童教育専門学校専任講師の、今泉良一先生にお話を伺いました。
お話:今泉 良一(日本児童教育専門学校専任講師)
自分の存在を肯定的に捉えられる感覚=自己肯定感
「自己肯定感」とは、自分の存在を肯定的に捉えられる感覚を表します。
自己肯定感の低い子は、自分の思い通りにならなかったことに対して、必要以上に気落ちしてしまいます。なかなか気持ちが切り替えられずに、ネガティブな思考から抜け出せない状況に陥ってしまうことも。
それに対して、自己肯定感の高い子は、苦手な部分やうまくいかない面も含めて「自分」だと捉えることができます。だから、気持ちの切り替えがうまく、物事を前向きに考えることができます。
こうした「しなやかな心」が、学校や社会に出たときにも、柔軟に対応できる力となるのです。
【乳児期】否定語や禁止語はNG!子どもの姿を肯定的に捉える
わたしが保育の現場で、子どもの自己肯定感を伸ばすために心がけていたのは、子どもの姿を肯定的に捉えるということです。
例えば、0~2歳児の乳児クラスの場合、子どもがテーブルの上に登ってしまったとします。
これを否定的に捉えると、「テーブルの上には乗らないの!!」「なんでそんな所で遊ぶの!!危ないでしょ!!」と終始イライラ…。
逆に、肯定的に捉えると、「この子はもうテーブルに乗れるようになったのね!」「高い所からの景色に興味があるのかな?」と考え、例えば、園の巧技台などで段差を作り、登って遊べるような場所へ子どもを連れて行くなどの対応になるでしょう。
子どもの姿を肯定的に捉えられるようになると、否定語や禁止語を使わずに、また子どもの満足感も削がれることなく対応できるようになると思います。
子どもも、自分のやりたいことが十分にできたこと、大人に共感してもらえたこと、応答的な関わりをしてもらえたこと、そんな経験の積み重ねが、自己肯定感の高まりにつながっていきます。
【幼児期】成功体験⇒自信の獲得へ! 親は共感し、努力する過程を認める
3~6歳の幼児クラスの場合は、「成功体験の積み重ね」⇒「自信の獲得」もポイントの1つです。
運動会のかけっこを例に説明します。
- 速く走れるようになりたい
- 友だちに負けて悔しい
- 1位になりたい気持ちが高まる
- 一生懸命走る練習をする
- まだ1位になれない
- さらに早く走る方法を考えて、練習する
- 1位になれた!!
上記のようなイメージで、子どもの心情や行動も変化していきます。その時に、大人(親)が子どもの気持ちに寄り添いながら、がんばっている部分を認めたり、励ましたり、一緒に考えたりしながら援助していくことで、子どもの気持ちはより前向きになります。
「一生懸命に努力したらできるようになった!」という成功体験が積み重ねられることで、自信につながり、自己肯定感を高めることができます。
もちろん、かけっこで最終的に1位になれなかったとしても、それまでのがんばりを認める声かけを大人(親)がすることや、その過程で子どもが学んだことや感じたことを、具体的に言葉にして子どもに伝えることで、子ども自身もその過程の意味を認識でき、自分の内面を受け止めることができます。
できないことに目がいきがち!! できて当たり前を具体的にほめる!
わたしも、保護者からいろいろと相談されたことがありますが、大人は「子どものできていないことに目がいきがちで、注意ばかりしてしまう」という傾向があります。
その反面、「子どもができていること」については、当たり前のことほど、認める声かけが少なくなりがちです。
保護者面談でもよく、「うちの子は○○ができない」「こんなところがダメだ」という相談を受けました。しかし、そんな時には「当たり前のことを認める声かけをしてみてください」と話していました。
そうすることで、子どもも“できるようになったこと”を改めて認識でき、自己肯定感が高まります。
例えば、「帰宅後にかばんを片づける」という当たり前のことだとしても、「自分でかばんが片づけられるようになったね! 前はお母さんがやっていたけれど、今は自分でできてるもんね」などと、子どもの成長を具体的に言葉にして伝えましょう。
子どもも「こんなこともできるようになった!」と自信につながり、自己肯定感も高まってくると思います。
また、4~6歳の幼児に対しては、大人がモデルとなって体現して見せることも効果的です。
例えば、「先生もこんな失敗をしちゃったことあるんだけど、その時にこうやってがんばってみたんだよ」と伝えたり、「お母さんも、こんな大変なことがあったんだけど、そういうことも起きるってわかったの」などと言うことです。
大人でも失敗したり、思い通りにならないことがあるけれど、そこから「こんなことがわかった」「こんなことが学べた」ということを、具体的に言葉にして子どもに伝えるとよいでしょう。
大事なことは、失敗したり、うまくいかなかったりした経験は、決してマイナスではないということです。
親も自分の内面を分析して、自己肯定感を高めよう
保護者自身が自己肯定感が低いと思っている場合は、まずは「自分自身の内面」を分析し、認識してみることが大切です。
「どんなときに自信をなくすのか?」といったことを、紙に書き出してみましょう。自分の内面について理解でき、認識が深まります。
書き出していくと、「そんなに思い悩むことではなかった」と感じることや、「このときの経験は○○○につながった」などと、物事を前向きに捉えられるようになっていきます。
そうしたことの積み重ねで、親自身の自己肯定感も高めることにつながると思います。
この記事の監修・執筆者
日本児童教育専門学校専任講師。東洋大学大学院修了。13年間、保育士を経験したのち2017年より現職。保育者養成とあわせて「子どもの表現活動」について研究している。
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