【子どもの脳の「聞く力」を育てる】秘訣は保護者自身の“接し方”と“遊び方”にあった[脳科学者監修]

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【子どもの脳の「聞く力」を育てる】秘訣は保護者自身の“接し方”と“遊び方”にあった[脳科学者監修]

何回言っても同じことを繰り返す子どもは「聞けない脳」が原因なのかも!? 脳科学の専門家として子どもの脳の育て方などを指導している加藤俊徳先生に脳の「聞く力」の育て方をうかがいました。

文/こそだてまっぷ編集部

目次

「聞ける脳」へ変えるには保護者の“接し方”にコツがある

「服を着替えなさい」と何回言っても伝わらない状態が続いてしまう子どもは、保護者のことばを聞けていない「聞けない脳」が原因かもしれません。「聞けない脳」とは、物理的に音が届いていても、それを適切に理解したり、その情報を記憶してうまく処理したりする機能が十分に育っていないために、「聞く力」が弱いことをいいます。

しかし、子どもの脳はそもそも未熟で、生まれてからの保護者の接し方によって育つものです。脳の「聞く力」は、何歳からでも育てて伸ばすことができます。しかも、保護者のちょっとした働きかけで「聞けない脳」から「聞ける脳」に変えることができます。保護者が意識して行動を変えていきましょう。

「聞く力」を育てることが子どもの「脳育て」につながる

脳の「聞く力」を理解するために、まず、脳のしくみを簡単に解説します。

脳には1千億個を超える神経細胞があり、似た働きをする細胞同士が集まり脳細胞集団をつくっています。その細胞集団は、担当する機能によって大きく8つの系統のエリアに分けられます。加藤俊徳先生は、それぞれのエリアを「脳番地」※と呼んでいます。

情報収集や理解などインプットを担当するのが「聴覚系」「視覚系」「記憶系」「理解系」で、思考や行動などアウトプットを担当するのが、「思考系」「伝達系」「運動系」、両方を担当するのが「感情系」の脳番地です。

人の話を聞くためには「聴覚系」だけでなく、「記憶系」「理解系」さらに「伝達系」の脳番地も働かなくてはなりません。「聴覚系」脳番地によってインプットされた情報を記憶し、理解し、「思考系」「伝達系」脳番地の働きによって、「話す」「書く」などの形で情報をアウトプットします。

「聴覚系」は、ほかの脳番地と連動して成長するため、「聴覚系」の成長が遅れると、記憶力や言語能力、コミュニケーションを司る脳番地まで育ちにくくなってしまうことがあります。つまり、聞く→記憶する→理解する→話すといったルートのスタート地点である脳の「聞く力」を育てることが子どもの「脳育て」にとってとても重要です。

※「脳番地」は加藤俊徳先生が代表を務める「脳の学校」の登録商標。

脳の「聞く力」を育むために大切な4つのポイント

子どもの「聞く力」を育てるために保護者ができることをご紹介します。大切なのは、子どもを変えようとするのではなく、保護者自身が行動を変えることです。なぜなら、子どもは、家庭の中で保護者の姿を見ながら脳の使い方を学んでいるからです。子どもと向き合ったときに、保護者自身がどんな態度で接したらよいか、また、どんなコミュニケーションのとり方が子どもに対してよりよい影響を与えられるかなどを意識しましょう。

●子どもの話を最後まで聞く

脳の「聞く力」を育てるには、しっかりと受け止める模範になるような態度で子どもの話をよく聞くことが最も大切です。「自分の話をやさしく聞いてもらった」という記憶が残ると、そこから脳が学習し、今度は子どもが人の話をしっかり聞こうとします。このとき重要なのは、子どもの話す内容について一切、否定をしたり、さえぎったり、評価したりしないことです。

たとえば、学校で起きた出来事を話している際に「そんなことをしたら、だめだよ」というような否定的なことばでさえぎると、「思考系」脳番地がシャットアウトされ、子どもは話すこと自体が嫌になってしまいます。保護者にとって困った話でも、まずは最後まで聞きましょう。

●子どもに指示を伝えたいときは、淡々と話す

子どもを叱る際に、やってはいけないのは感情的になって怒鳴ることです。「何回言ったらわかるの!?」「まだやっていないの!?」というようなネガティブな言葉をかけると、子どもの脳はフリーズして、保護者が本当に伝えたいことが伝わりません。なんとかルールを守らせようと、長々とお説教をするのも逆効果です。感情的な言葉をはさまずに短いことばで「服を着替えてね」などと本当に伝えたいことだけを淡々と話すようにしましょう。

●保護者自身が多くの人と交流する

子どもは保護者がほかの人と話している姿をよく見ています。話す様子や話を聞いている姿を見て、子どもの脳は日々「聞く」「話す」行為について学んでいます。たとえば、保護者が近所の人とちょっとした挨拶をかわす、友人と楽しそうに話すなど、さまざまな人と交流する姿を子どもに見せましょう

●家庭で楽しい会話のキャッチボールを

子どもにとって、大人同士の会話は重要です。とくに家庭での楽しく豊かな会話が子どもの脳の「聞く力」を育てるのに有効です。

たとえば、夫婦の会話がどちらか一方的だったり、「でも」「だけど」などと言い返してばかりだったりすると、子どもも相手の意見を聞き入れにくい脳になってしまいます。「相手の言ったことを聞き入れずに言い返す」という保護者の行動習慣が、子どもの脳の成長を阻みます。

夫婦間や家族間の会話では、まず「そうだね」と相手の言ったことを引き受け、理解しようとする態度を心がけましょう。大人同士が楽しい会話のキャッチボールのお手本を示すことが大切です。

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遊びを通して「聞く力」を育てる

人間の脳は「楽しい」と感じたときに、活性化します。子どもの場合は、楽しい遊びの中に「聞く」という行為を組み込みましょう。「聴覚系脳番地を使うと楽しい!」という体験が「聞く力」を育てます。ここでは、子どもの脳の「聞く力」を育む遊びを紹介します。

●逆さことば遊び&しりとり

声には出さず、自分の頭の中に浮かべることばを「内言語(ないげんご)」と呼び、声に出すことばを「外言語(がいげんご)」といいます。子どもは年齢が上がってくると、外言語から内言語へ少しずつ移行します。移行がスムーズにできると、耳から聞いたことばが記憶に残るようになります。

「聴覚系」や「伝達系」の脳番地が未熟な子どもは、内言語化が遅れる傾向があります。たとえば、遊んでいるときにひとりごとを言うようなケースです。

子どもの内言語化を助ける取り組みとしてオススメなのが「逆さことば遊び」です。

「逆さことば遊び」とは、ことばを逆さから言ってみる、という遊びです。

たとえば保護者が、「“ポテトサラダ”を逆さまに言うと?」と子どもに出題してみましょう。紙に書いた文字を逆さに読むのは簡単ですが、聞いただけのことばを逆さにするのは、大人でも難しい作業です。これで内言語化する力(心の中でつぶやき、それを聞く力)が育ちます。

最初は、文字数の少ない単語からスタートし、慣れてきたら文字数を増やします。さらに、促音や拗音(小さい文字で表記される音。「はっぴょうかい」など)や長音符(「伸ばし棒」で表記される音。「ハーモニカ」など)が含まれたことばにもチャレンジしましょう。

幼児なら「しりとり遊び」でも、内言語化する力を育てることができます。

●ひらがな計算

「ひらがな計算」とは、数字も記号もすべてひらがなに置き換えた計算問題のことです。紙に「よんたすにはいくつ?」「はちひくさんのこたえは?」などとひらがなで書いて子どもに見せ、子どもが答えます。数や数式は、目でみるとすぐに理解できますが、ひらがなにすると内容を理解するのに時間がかかります。子どもはこれを読み、頭の中でひらがなを音にして数字に変換し、計算します。

この遊びは、頭の中で、自分で読み上げたことばを内言語として「聞く」ので、「聴覚系」脳番地が刺激されます。

算数という観点ではく、なぞなぞを解くように親子で楽しみましょう。

●手遊び歌

幼児にオススメなのが、歌を歌いながら手を動かす「手遊び歌」です。昔ながらの子どもの遊びが、子どもの「聞ける脳」を育てるのに役立ちます。保護者が歌う歌声を聞き、そのリズムに合わせて手を動かすことで、「聴覚系」→「運動系」脳番地のルートが強化されます。

たとえば、「大きな栗の木の下で」「げんこつ山のたぬきさん」「ずいずいずっころばし」「おちゃらかほい」などがあります。親子で歌いながら楽しみましょう。

脳の「聞く力」は、記憶力や理解力、コミュニケーション能力などさまざまな能力と深く関わっています。「聞く力」を育むには、日常生活での親子のコミュニケーションが大切。子どもが「自分の話をしっかり聞いてもらえてうれしい」と感じることで「聞く力」が育ちます。成長過程にある子どもの「聞ける脳」をじっくり育てていきましょう。

この記事の監修・執筆者

加藤プラチナクリニック院長・株式会社「脳の学校」代表 加藤 俊徳

小児科専門医。昭和大学客員教授。脳科学、ADHDの専門家。脳を機能別領域に分類した脳番地トレーニングや助詞強調音読法の提唱者。独自のMRI脳画像法を用いて、脳の成長段階を診断。脳番地のトレーニングの処方などを行う。近著に『1万人の脳画像を見てきた脳内科医が教える 発達凸凹子どもの見ている世界』(Gakken)など著書多数。加藤プラチナクリニック公式サイトhttps://nobanchi.com

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