小学校に入ると、子どもがおうちのかたから離れて過ごす時間がグッと増えますよね。登下校はもちろん、公園遊びや習い事にも1人で行けるようになり、行動範囲も年齢を追うごとに広がっていきます。子どもが1人の時間を安全に過ごすためには、どのような準備が必要なのでしょうか。
教育評論家の親野智可等先生にアドバイスをいただく連載の2回目は、「防犯・防災」をテーマにお送りします。
文/須藤美紀
【事例1】「知らない人についていかない」とわかりやすく教えたい!
どうして知らない人について行ってはいけないのか、世の中はよい人ばかりではないことなど、防犯について子どもにわかりやすく伝えたいです。どのように教えるのがよいのでしょうか?
子どもが自分の身を守るときの行動について東京都と警視庁がまとめた、「いかのおすし」という標語をご存知でしょうか?
「いか=知らない人についていかない」
「の=車にのらない」
「お=おおごえをだす」
「す=すぐにげる」
「し=大人の人にしらせる」
警視庁のホームページなどでも紹介していますので、この標語を解説している絵や動画を見ながら、「こんなときはどうする?」と、お子さんと話し合ってみましょう。
その際、親子で役割演技=ロールプレイをしてみるのもオススメです。知らない人に声をかけられたときに、何と言うべきなのか。頭ではわかっていても、いざとなると言葉にするのは難しいものです。「急いでいます」「大人の人に聞いてください」など、実際に声に出して言う練習をしておくとよいですね。
年齢が上がって、子どもを取り巻く環境が変われば、子どもが気をつけるべきポイントも変化していきます。1度確認したからOKではなく、学年が上がったり習い事が変わったりするごとに、ロールプレイで確認するようにしてください。
もう一つ大切なのは、知っている人から声をかけられても、おうちのかたが「いいよ」と言っていないときには毅然とした態度で断ること。悲しいことですが、知り合いの人が犯罪の発端になることも多いのです。
「お菓子をあげる」「車で家まで送ってあげる」などと言われても、「おうちの人に確認します」と返せるようにくり返し練習しておきましょう。
【事例2】1人で登下校させるのが不安!
来年4月から子どもが小学生になるのですが、1人で登下校させるのが不安で、送り迎えをしたくなってしまいそうです。入学前に準備しておいたほうがよいことは、ありますか?
絶対にやってほしいのは、登下校の時間に子どもと一緒に通学路を歩いてみること。それぞれの時間の通学路の車や自転車の交通量、さらに、閑散として人の目が届かなさそうな場所を、まずはおうちのかたがしっかりと確認します。
そして、歩きながら「ここから車が出てきたらどうする?」「ここで知らない人に声をかけられたら、どこに逃げる?」というふうに、話し合うことが重要です。「いざ」というときに子どもが逃げ込むことができる「子ども110番の家」の場所なども、覚えておくとよいですね。
通学路は学校から決められていることでしょう。しかし場合によっては、お子さんの個別の事情を理解している、おうちのかたが安全だと判断したルートを通ったほうがよい場合もあると思います。例えば下校時は、「6年生と一緒に帰れる曜日はこのルート」というように決めてもよいですね。ただし、通学路を変更する前に、その情報を学校にきちんと共有しましょう。
あやしい人に声をかけられたり、追いかけられたりしたときには、ランドセルをおいて逃げようね、という約束もしておきましょう。ランドセルを背負っていないほうが、背負っているときと比べて10秒間で3mも遠く逃げられるというデータもあります。子どもはもちろん、おうちのかたも入学前は不安で当然ですから、具体的な行動をイメージしておくとよいですよ。
【事例3】子どもが1人のときに災害が起きたら心配!
子どもが1年生になり、1人で外出する機会も増えました。登下校中や1人で外にいるときに、災害が起きたらどうしよう…と心配です。子どもとどんなことを話し合っておくとよいですか?
困ったときの対応方法を、ロールプレイで練習しておきましょう。ハザードマップなどを活用して、通学中の避難場所や災害時に危険な場所を確認しておくのもよいですね。
同様に、習い事なども機会を見つけて一緒に行き、心配なポイントについて確認しておきましょう。また、一緒に行動することが多いお友だちのおうちのかたとは、万が一に備えて情報交換できる関係を作っておくのがベター。GPS機能付きのキッズ携帯なども、上手に活用してください。
そして、防犯や災害の対策のためにも、親子関係をよくしておくことが肝心です。親子関係がよければ、「親に心配をかけたくない」という気持ちから、自然と危険な行動を避ける意識が芽生えます。
一方、親子関係がよくないと、子どもは自分のことを大切にできなくなってしまいます。「親が自分のことを心配してくれるか、試してみよう」という意識が働いて、あえて危険な選択肢を取るなどの愛情確認行動に走ってしまうことも。子どもの安全を守るためにも、親子関係はとても大切です。
さまざまな場面を想定して、「こんなとき、どうする?」というロールプレイをしておくことが、いざというときに子どもの安全を守ることになります。
子どもが普段どんな場所でどんなお友だちと行動しているのか把握するためにも、話し合う時間をたくさんとるようにしましょう。
おすすめの書籍
「防犯や防災について話すきっかけは、どうやって作ったらいいの?」「防犯についての心構えを、どうやって教えたらいいかわからない」…というかたにオススメなのが、親野先生監修の「おやくそくのれんしゅうちょう」です。
親野先生が教えてくれた「いかのおすし」や、知らない人に声をかけられたときの対応など、さまざまな場面で注意したいことがわかりやすくまとまっています。
「こんなとき、どうする?」とお子さんと話しながら、一緒に取り組んでみてはいかがでしょうか?
次回、最終回では、「友だち関係」をテーマにお話をうかがいます。
この記事の監修・執筆者
長年の教師経験をもとに、子育て、親子関係、しつけ、勉強法、家庭教育について具体的に提案。著書多数。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても著名。X、Instagram、YouTube、Blog、メルマガなどで発信中。オンライン講演をはじめとして、全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも大人気となっている。
音声配信サービスVoicyの配信番組「コソダテ・ラジオ」の2022年12月の金曜マンスリーゲストとして出演。「家庭での学習習慣」について熱いトークを配信しています。
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