「最近の公園の遊具は、私が慣れ親しんだ形とはちょっと違うものが増えている」と思ったおうちのかたはいらっしゃいませんか?
近頃見かけるようになった、背もたれのあるブランコ、段差のゆるやかな滑り台、カラフルなパネルのような遊具など……実はこれ「インクルーシブ遊具」というもの。障がいがあるお子さんも、そうでないお子さんも、楽しく遊べる遊具です。
近年こうした遊具が増えたのには、どのような背景があるのでしょうか。
今回は、インクルーシブ遊具の魅力、公園や遊び場が「インクルーシブ」である意味についてご紹介します。
文/マムズラボ
インクルーシブ遊具とは
「インクルーシブ」を日本語に訳すと、「包み込むような/包摂的な」という意味があります。
もともとインクルーシブという言葉は、「ソーシャル・インクルージョン」(社会的包摂)という社会政策の理念からきました。
ちなみに、インクルーシブの対義語はイクスクルーシブで、「排除的、排他的」という意味があります。
つまり、インクルーシブ遊具とは、体に障がいがないお子さんだけではなく障がいがあるお子さんも、一緒になって遊ぶことができる遊具のことなのです。
そして、インクルーシブ遊具を設置している公園のことを「インクルーシブ公園」と呼びます。
近年、障害のある子もない子も共に学び、共に育つことができるようにする「インクルーシブ教育」が注目を集める中で、インクルーシブ遊具もまた注目を集めるようになっています。
知っておきたい「ユニバーサルデザイン」
そもそもインクルーシブな誰でも遊べる公園は、「ユニバーサルデザイン」の視点で整備されました。
ユニバーサルデザインは、日本語に訳すと「全ての人のためのデザイン」という意味があります。
従来ユニバーサルデザインは、「バリアフリー」を軸に展開しており、高齢者や障がい者に対するさまざまなバリア(=妨げになるもの)を取り除く視点が中心となっていました。
しかし、そこからさらに発展して、子どもや外国人などを含めた全ての人にとってより快適な環境を作るために、はじめからあらゆる方法を駆使してバリアを生み出さないようにする考え方を軸として作られるようになりました。
こうして、バリアフリーの概念は年齢や性別そして障がいの有無や文化の違いなどに関わらず、誰もが利用しやすくて暮らしやすい社会になるように、街や建物だけではなく、仕組みやサービス・モノなどを作ろうといったものに変化していったのです。
インクルーシブ遊具を導入する公園が増加
東京都・豊島区公式ホームページでは、インクルーシブ遊具を設置している公園を紹介しています。
さまざまな感覚を使って遊べる「プレイビルダー」
雑司が谷公園に設置されているプレイビルダー。
視覚や聴覚、そして触覚などの、さまざまな感覚を使って遊ぶことができます。
車いすに乗ったまま遊ぶことができます。
回転遊具「オムニスピナー」
駒込7丁目第2児童遊園には、回転遊具が設置されています。
回転スピードがゆるやかで、内向きに座るよう設計されているので、子どもの表情を常に確認することができます。
車いすのお子さんが乗り移りやすいよう、低い高さに設計されているのも魅力のひとつです。
豊島区では、インクルーシブ遊具を使う際、子どもから目を離さない、遊具やおもちゃなどは譲り合うようにし、遊んだ後は元の場所に片づけるように呼び掛けを行っています。
インクルーシブ遊具は、これまでご説明したように安全に配慮して設計されていますが、特に小さなお子さんが遊ぶ際には、当然のことながら通常の遊具で遊ぶ際と同様の注意が必要です。
公園や遊び場が「インクルーシブ」である意味
遊びは子どもの権利です。
子どもの基本的人権を国際的に保障する「子どもの権利条約」は1989年に採択され、日本も1994年に批准しています。
31条に「遊ぶ権利」の条項があり、子どもの年齢に適した遊びをする権利があると記されています。
しかし、公共の場でありながら、思うように公園で遊べない子どもたちがいます。それは、障がいをもつ子どもたちです。
障がいを持つ子どもたちも含めたすべての子どもたちが公園や遊び場でのびのびと遊ぶためには、あらゆるケースを想定したつくりの公園施設や遊具が必要ですし、共に遊ぶほかのお子さんたちの理解も重要なポイントです。
公園や遊び場がインクルーシブになることで、障がいのあるなしにかかわらずに豊かな交流が生まれというメリットがあります。
障がいのあるなしに関わらず遊べる未来へ
東京都は『「だれもが遊べる児童遊具広場」整備のガイドライン』の中で、現状と課題を次のように触れています。
「だれもが遊べる児童遊具広場」は、特別な遊具を設置する広場だと考えられている。
そのため、自治体によっては整備に慎重な場合も多い。本来公園はだれでも利用できるものであり、障がいの程度によっては、アクセシビリティ※の改善や保護者等の協力次第で一般の遊具を利用することも可能である。
まずは、みんながその特性を理解し、障がいの有無に関わらず、子どもたちが一緒に遊ぶことの大切さを整備計画に反映することが課題となる。
※アクセシビリティ:近づきやすさ。利用のしやすさも含む。
出典:東京都建設局 「だれもが遊べる児童遊具広場」整備のガイドラインについて 「現状と課題」https://www.kensetsu.metro.tokyo.lg.jp/content/000052186.pdf
障がいを持つかたそれぞれの困難さや特性について、この社会で生きる一人ひとりが理解を深め、子どもたちにも伝えていくことが大切です。インクルーシブ遊具をきっかけに、子どもたちが多様な人と共に生きる社会の意義や重要性を認識できるようになるとよいのではないでしょうか。
<出典>
東京都豊島区「インクルーシブ公園の紹介」
https://www.city.toshima.lg.jp/340/machizukuri/sumai/koen/inkurushibu/2107121035.html
こそだてまっぷから
人気の記事がLINEに届く♪