今年の【自由研究】はどうする? ~子どもが伸びるテーマの決め方・進め方~

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今年の【自由研究】はどうする? ~子どもが伸びるテーマの決め方・進め方~

毎年やってくる夏休みの自由研究。
今年のテーマはどうしよう? どうやって進めればいいの?と悩むかたが多いのではないでしょうか。日ごろから取り組んでいることではないので、悩んでしまうのは当然。たとえ高学年でも、大人のサポートが必要になってくる場合も出てきます。
しかし、やり方さえわかれば、子どものさまざまな力をぐんぐん伸ばすことができます。
そこで今回は、自由研究のテーマの決め方から進め方、オススメ題材まで、自由研究で大切なポイントを教育評論家の親野智可等先生にうかがいました。

お話/教育評論家 親野智可等

目次

自由研究の進め方には3つのタイプがある!

【その1】 熱中体験型 ~親野先生イチオシ!~

「熱中体験型」は、
子どもが好きなこと
日ごろからよくやっていること
趣味
がんばっている習い事

などをテーマにし、そこに少し研究的な視点を加えてまとめる方法。

これは、子どもが好きでよくやっていることなので、そこにはもともと“やる気”がありますから、ママパパが応援すれば、どんどん研究を深めていくことができる、とっておきの方法なのです。無理矢理やらせるわけではないので、ママパパの大変さがないのもオススメの理由です。

進め方

① 思う存分、熱中させましょう

たとえば、絵をかくことが好きだったら、たくさんかけるように画材を買ってあげたり、昆虫好きだったら、昆虫採集に出かけたり、博物館に行ったり、図鑑を借りたり、鉄道好きだったら、いっしょに見に行ってみたり、ピアノをがんばっている子だったら、たくさん聴いてほめてあげたり…。

とにかく、熱中するということが大切。しかしそのためには、ママパパの応援が必要不可欠です。そのサポートがあることで、子どもの打ち込み方が大きく変わります。日ごろ、宿題や習い事に追われて忙しくしているお子さんに、夏休みこそ、熱中体験をさせてあげたいですね。

② 熱中している様子を写真に撮っておきましょう

「熱中してものごとに取り組んでいる」ことそのものが「研究」になりますたとえば、「ピアノ」に熱中しているのであれば、弾いている姿や、つまずいてしまった様子、指使いの様子、練習している楽譜などを。「昆虫」に夢中な子であれば、捕まえる様子や、観察している姿、えさをあげているところなどを写真におさめておきましょう。

③ ノート・スケッチブック・模造紙にまとめましょう

撮った写真をプリントアウトして、大きめのノート・スケッチブック・模造紙などに貼ります。そして、写真のそばにコメント(説明・感想・気づいたこと)を書き込んでいきましょう。

たとえば、「がんばっているサッカー」がテーマならば、「この技は難しかったけど、こういうふうにしてみたらうまくいった」「コーチにこんなことを言われたから、こうしてみようと思う」「ライバルの○○くんのここがうまいから、まねしてみたい」といった具合です。

写真とともにまとめておけば研究を積み重ねてきた証拠になり、研究結果として提出することができますね。

◎ ママパパの声かけでもっと深まる!

飼い猫のポンちゃんが大好きで、よく遊んだり、お世話をしたりしているAちゃんのママは、こんな声かけをしたそう。

「ポンちゃんかわいいね、絵にかいてみてよ」
とノートを渡すと、ページいっぱいにかいてくれたAちゃん。
「ポンちゃんのどんなところが好きなの?」
「ポンちゃんの一番好きなところは、顔。立派なひげがあるのがおもしろい。肉球も大好き」
「猫のひげって、どうしてこんなに長いんだろうね? 肉球はなんの役に立つの?」
「ひげは、体のバランスをとるためじゃない? 肉球はすべり止めだと思うよ」

いまひとつ自信がない様子で答えるAちゃんに「じゃあ、いっしょに調べてみようか」と誘ったことをきっかけに、どんどんAちゃんの興味が湧いてきて、猫の体、猫を飼うときのこつと注意点、猫の病気、猫の種類、人間と猫の関係の歴史まで調べたそうです。お子さんの“好き”をさらに極められる声がけができると、自由研究ももっと深まっていくでしょう。

【その2】 何かのついで型

家族旅行やお盆の里帰りなどの中で体験したことをテーマにする方法です。わざわざ自由研究のために新しいことをするのではなくて、夏休みの予定のついでに自由研究をしてしまおうということです。また、夏休みには、いろいろな自治体や企業、大学などが開催している体験型イベントなどもありますから、自由研究の題材にもってこいですね(参加申し込みが早くに締め切られてしまう場合もあるので要注意!)。

これも、普段やったことがない“本物体験”をしているので、子どもの興味を引き出せる可能性が高い方法なのです。

進め方

① 計画からいっしょに!

家族旅行であれば、旅行の計画段階から、子どもを巻き込んでいっしょに調べてみましょう。
●どこに行くか
●何をするか
●交通手段はどうするか
●宿泊先の比較
●行先の名所や名物は何か

などがオススメ。

② 体験の記録も残しておきましょう!

旅行やお出かけでの、
●体験したこと
●見たもの
●聞いたこと
●食べたもの
●通った町や駅
●ひとこと感想

なども、貴重な研究材料です。忘れないように、手帳などに「体験メモ」として残しておくとよいでしょう。体験中の写真も撮っておきましょう。

③ ノート・スケッチブック・模造紙にまとめましょう!

【その1】と同様に写真とコメントでまとめます。ここで、事前に調べたこと・計画内容・体験メモが役立ちます。これらは、計画を立てる力、調べる力、まとめる力にもつながり、「旅の経過とその土地の研究」というテーマの立派な研究にもなるのです。

ただ、子どもに無理強いするのはNG! イヤイヤやることになると、旅行の計画や記録が大嫌いになってしまい、せっかくの本物体験も台無しです。声をかけてみて、興味が湧かないようだったら、無理に取り組ませることは避けたいですね。

◎ 日々の生活体験にも自由研究の題材はたくさん

この方法は、旅行やイベントごとに限った話ではありません。
たとえば、お手伝い、買いもの、節電、節約など、テーマは日々の生活の中にもあります。わざわざお出かけしなくても、“身近なできごと”が研究の題材になりうるのです。普段、何気なくやっていることに注目し、工夫を加えて試したことや、じっくり観察して気づいたことを記録し、まとめても十分な研究になります。

【その3】 思いつき単発型

宿題をムリなく終わらせたいなら、自由研究用のキットを利用してみましょう。これは、書店で手軽に手に入るキット、本やネットで紹介されている自由研究から、おもしろそうと感じたものを直感で選んでやってみる方法です。

ただキットを利用して終わるのではなくて、「記録としてまとめる」工程を加えると、立派なオリジナル作品にすることができます。

進め方

① 自由研究用のキットを作ろう!

思いつきでも、やってみたら意外に楽しくて子どもの興味が広がる場合もあります。また、親子であれこれと考える中で親子のコミュニケーションが深まることも。これらは、子どもにとってひとつの楽しい経験になりますから、やってみる価値がありますよ。作っている最中に写真の撮影も忘れずにしておきましょう。

② ノート・スケッチブック・模造紙にまとめましょう!

キットを利用した場合も、【その1】【その2】と同様に写真とコメントでまとめることができます。親子のおしゃべりの中で「ここでどんなことがわかったの?」「やってみてどうだった?」と聞いてみれば、コメントの内容を深めることができます。提出が難しいようなキットもありますが、写真といっしょに記録しておけば、困ることもありませんね。

自由研究は子どもをこんなに伸ばす!

好きなことに熱中すると、脳が活性化!

好きなことに夢中になっているとき、実は、脳内でこんなことが起こっています。

血流が高まり、ドーパミンという「幸せホルモン」が放出される

脳内で情報を伝達する「シナプス」がどんどん増える

シナプスが増えれば増えるほど脳内に回路が広がり、脳の処理能力がアップする

好きなことを思い切りやっているときに、脳がどんどん活性化して地頭がよくなることが脳科学の研究でわかっています。

「熱中する」=いろいろな力を使っている

たとえば、魚が大好きな子がいたとします。「魚の世界」に興味をもち、楽しみながら深めていく最中に、実は次のような力が育っているのです。

●魚のことをよく観察しますから、いろいろな魚の微細な違いがわかってきます⇒【認識力】
●魚のことが知りたくてさまざまな図鑑や文献を読みます⇒【読解力】【語い力】
●たくさんの知識を覚えようとして、記憶のメカニズムが強化されます⇒【記憶力】
●好きなことについて誰かに伝えようとたくさんお話をします⇒【話す力】

これらの力が身につき、地頭がよくなった状態で勉強に取り組むと、どんどん吸収して子どもはさらに伸びていきます。

何より、「好きなことを深めていくのは、こんなに幸せなんだ」ということを、身をもって経験していますから、また自分で好きなことを見つけて熱中する力がつくのです。それは、自分がやりたいことを自分で見つけられる大人になっていくためにも大事なことだと言えるでしょう。

アウトプットが学びを深める!

これまで紹介してきた自由研究の3つの進め方に、かならず「ノート・スケッチブック・模造紙にまとめる」という工程が入っていましたが、これには理由があります。

「書く」ということは、自分の中にインプットした情報を、文章としてアウトプットするということ。自分を振り返り、思考を整理しなければ文章は書けませんから、理解や認識が深まったり、新しい発見ができたりと、学びの質を一層深めてくれるのです。このことから「思っているだけ」と「書き出してみる」との間には大きな差がありそうですね。実際に、有名なスポーツ選手の中にも考えをノートにまとめるということをして成功している人がたくさんいます。

また、「聞く」「読む」「見る」といったインプットの学びだけでなく、「ほかの人に教える」といったアウトプットをすることが、学習定着率をより高めるという研究結果もアメリカの国立訓練研究所で発表されているんですよ。

夏休みにいろいろな体験をしてたくさんインプットをすることも大切ですが、最後にアウトプットをして、さらに学びを深められたらよいですね。

自由研究で親が大切にしたいこと

子どもが熱中していることを応援!

お子さんの「好き」を応援し、どんどん熱中体験をさせてあげましょう!
そうすれば、お子さんの脳はどんどん活性化し、「もっとやりたい!」「知りたい!」という経験そのものが自由研究になります。それに、お子さん自身も、ママパパに好きなことを応援してもらえるのですから、親子の絆もさらに深まり、いいことずくめなのです。

一番避けたいのは、自由研究を叱る材料にしてしまうこと。
夏休みの最後まで自由研究を残してしまって、親子でストレスになってしまうという話は多いですよね。そういったときは、先ほど紹介した「思いつき単発型」で、市販の自由研究キットなどを利用してしまうのも手です。

どれくらいの時間、お金、労力をかけるか方針を

親御さんに意識してほしいのは、自由研究をなんのためにやらせるのか方針を明らかにすること。

たとえば、一応提出できる程度にできればよいのか、子どもの力を伸ばせるものにしたいのか、コンクールで賞を狙いたいのか…、といった自由研究に臨むレベルをお子さんと話し合いながら明確にしてみましょう。それによって、かける時間や金額、労力も決まってきますし、どの進め方が合っているのかも見えてくるでしょう。

ただ、親御さんだけががんばり過ぎてしまうと、お子さんがイヤになってしまうこともありますから、気をつけたいですね。

親野先生からのメッセージ

折角、自由研究をやるんだったら、親子で楽しめるものにしてほしいと思っています。
自由研究で一番大切なことは、子どもがやる気になるかどうか。

でも、もともと大好きで夢中になっていることを題材にすれば、なんのリスクもありませんね。親御さんもそれを応援してあげれば、親子双方のハッピー体験になるのですから、「熱中体験型」の自由研究は心からオススメします。

実は、まとめ方を知らないだけで、すでにお子さんは「自由研究の題材=熱中していること」をもっているはずです。運動でも音楽でもモノ作りでも科学でも…、テーマはなんでもOKなのです。ぜひ試してみてくださいね。

この記事の監修・執筆者

教育評論家 親野 智可等

長年の教師経験をもとに、子育て、親子関係、しつけ、勉強法、家庭教育について具体的に提案。著書多数。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても著名。Twitter、Instagram、YouTube、Blog、メルマガなどで発信中。オンライン講演をはじめとして、全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも大人気となっている。

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