「宿題しなさい!」、「勉強した?」小学生のお子さんがいるご家庭では、このような声かけが日常的に行われているのではないでしょうか。学校から疲れて帰ってきていることがわかっていても止められないこの声かけ……。また、家庭学習を促すことで起きる親子バトルも避けたいものです。そこで今回は、家庭学習をスムーズに進めるための勉強法と習慣化するために親ができることを家庭学習サポート専門家の大沢有貴子先生にうかがいました。
① どうして勉強するのかを教え、目標を立てて取り組もう!
小学校低学年の子どもの多くが、勉強に対して苦手意識を抱いています。低学年が自ら予習するのは難しく、何もわからない状態で授業に臨めば当然といえます。先生の言葉がまるで入ってこなくて、いったい何をやっているのか理解できないお子さんも多いでしょう。それを放置した状態でテストを迎えれば結果は容易に想像できてしまいます。
テストで低い点数を取ってしまうと、子ども自身がショックを受けるだけでなく、自信喪失や勉強嫌いにもつながりかねません。そこで親が子どもを厳しく叱ってしまうと、勉強に対する苦手意識にさらなる拍車がかかってしまいます。
反対に、そのテストで高得点を取るという経験をしたらどうでしょうか。子どもはうれしさから勉強に対する自信ややる気がアップします。さらに、勉強が得意だと感じるようになってくると、“勉強”を継続することにつながり、最終的に成績が上がっていくという好循環も期待できます。
このような好循環を生み出すために、テストの目的や、それが成績にどうつながるかを子どもに教えることが大切です。実は「どうすればテストの点数が高得点になるのか」「なぜテストで高得点を取ると成績が上がるのか」ということを、低学年の子どもの多くは理解していません。そもそも、いつテストがあるのか把握していないかもしれません。
子どもが「テストで高得点を取りたい」と今すぐやる気を出すためには、すぐ目の前にあるテストなどを目標を掲げることです。そして「何点取れたら〇〇にお出かけしよう!」「何点取れたら大好きなハンバーグを作るね!」など、その目標を達成したくなるごほうびを用意することもおすすめです。低学年の子どもには、学期末の成績は遠い将来に感じてしまうため、小さな達成感の積み重ねが大切です。子どもが達成できそうだと思える目標なら、「勉強してみよう!」という意識が湧いてきます。
テストと成績の関係を子どもに教え、高得点を目指すという可視化できる目標を抱かせることが勉強に対する意識改革につながります。そして、それが学習継続への大きな一歩になっていくことでしょう。
② 何がわかっていなくて、何を覚えていないのかを把握しよう!
お子さんの学習意欲が少しでも湧いてきたら、学校の宿題プリントやドリル、テストを見直してお子さんが間違えた問題やつまずいた問題、空欄の状態の問題を探します。授業のノートも日頃から管理しておくと、お子さんは何がわからなくて、何を覚えていないのかを探し出しやすくなります。
「もう、今さら何がわからないのか、どこから理解していないのかわからない……」というかたは、市販の問題集をはじめ、今はインターネット上で無料公開されている教材もあるのでお子さんと一緒に取り組んでみましょう。私がおすすめする無料教材はこちらです。
③ 学習計画を立てて取り組もう!
お子さんの理解度やわかっていない箇所、覚えていない点を見つけたら、学習計画を立てていきます。「やることリスト」と「スケジュール表」を作成し、習い事や遊び、お出かけなどをひと目見てわかるよう管理するといいでしょう。低学年の子どもに自分で学習計画を立てさせるのは難しいので、保護者が一緒につくります。高学年や中学生になったら、保護者がサポートしながら自分で計画を立てられるようになるといいですね。
まずは「やることリスト」の作成です。子どもに自分がやりたいことを書き出してもらいリストアップします。この時、遊びだけを書いて勉強や宿題を書かなくても気にしないようにします。それが終わったら、今度は保護者がやりたいこと、やらせたいことをリストアップし、外出や習い事などの予定も書き出します。
全てを書き出したら、カレンダー形式のスケジュール表を用意します。市販のカレンダーでも手書きのものどちらでもO Kです。そこに、リストアップした内容を書き写せばスケジュール表の完成です。
1週間ごとのものでも1か月ごとのものでも構いませんが、最初は土日だけや平日だけなど短期間の計画をおすすめします。慣れてきたら、夏休みなど長期の計画に挑戦してください。スケジュール表は子どもが今日、明日、何をする日なのかを自分で確認できるようにすることが目的です。保護者はいつテストが行われるのか、テスト範囲はどこなのかをしっかり把握し、目に見えるようにしてあげるとよりいいでしょう。
④ 解けなかった問題が解けるようになる成功体験を繰り返し経験させよう!
学習計画を立て終えたら、いよいよ学習スタートです! 学校で「今」習っていることや「先取り」に取り組みたくなりがちですが、はじめは、先ほど探し出したお子さんのわかっていない箇所や間違えていた問題の解き直しから取り組んでいくことをおすすめします。
「解けなかった問題が解けた!」という経験を重ねることは大きな自信につながるからです。もし間違えても「頑張ってるね」と認めて、子どもが勉強を続けられるように後押ししてください。「この調子で頑張ろう!」と声かけしながら“できる”を増やしていきましょう。
解き直しをするにもいろいろな方法がありますが、記入済みの解答欄に付せんを貼って空欄状態にする方法は、忙しいご家庭におすすめです。また、付せんを貼った状態でコピーを取っておくと、その枚数だけ解き直しに取り組むことができます。
⑤ 計画通りに進まない、やる気が起きない日の声かけはI(アイ)メッセージで伝えよう
いきなり勉強に前向きになるわけない、三日坊主になるんだろうな…。親はそんな後ろ向きにならず、何があってもサポートに徹する強い意志を持っていきましょう! しかし、実際にせっかく立てた学習計画が途中で終わってしまうのは残念です。そして、それは子ども自身の経験にも良い影響にはなりません。
だからと言って…
「あなた、今日やること、終わってないよ! やりなさい!」
「計算ドリルを始めなさい!」
ついついヒートアップしてしまっては元も子もありません。そんなときは、ぜひユー(You)言葉をやめて、主語をアイ(I)にしてアドバイスするといいでしょう。
Iメッセージでは、保護者の気持ちや感じたことを伝えます。「ママ・パパは、今日やることをやったらうれしい!」「アニメを見る前に計算ドリルが終わったら、ママ・パパは安心だな」などと、子ども自身が命令ではなく、選択肢の一つを提案されたという認識で受けとめられるように主語を変えるのです。自分で考え自分で決めた通りに進めることは、子どもの成長や自立にもつながります。どうしても声をかけたくなった時は、Iメッセージを心がけましょう!
ただし、Iメッセージでも「ママ・パパは、◯時から計算ドリルを始めたらいいと思うよ」「次のテストで100点満点とれたら、ママ・パパはすごいと思うよ」のように、意見や正論を押しつけるような内容を伝えると子どもが反発することもあるので注意してください。
勉強嫌いにならないように子どものやる気をうまく引き出し、家庭学習の習慣がつくまでは、親も根気強くサポートを続けていくことが大切です。
この記事の監修・執筆者
家庭学習サポート専門家として活躍する二児のママ。自身の子育て経験とこれまでの活動をもとにママの不安に寄り添えるアドバイスを発信。親の手間やお金の負担を最小限に、家庭学習をサポートする方法を紹介している。
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