かるたといえば、ことわざや慣用句、ご当地もの、キャラクターもの、百人一首など、いろいろありますね。じつは、かるたは絵や文字に親しむだけではなく、子どものいろいろな力を伸ばしてくれる万能なツールなのです。では、お子さんにどんな影響を与えてくれるのでしょうか。教育評論家の親野智可等先生にうかがいました。
文/こそだてまっぷ編集部 イラスト/石崎伸子
かるたあそびで伸びる力は大きく8つ!
——かるたあそびが子どもに与える影響には、どんなことが考えられますか?
親野)
かるたあそびは、読むこと、聞くことで聴覚・視覚がきたえられ、脳の発達がうながされます。
かるたの読み札は知識の宝庫です。その内容を聞いて興味を深めることができます。
【かるたで伸ばせる8つの力】
① 集中力
② 判断力
③ 瞬発力
④ 空間認知力
⑤ 記憶力
⑥ 協調性
⑦ 社会性
⑧ コミュニケーション力
親野)
読み札を聞く「集中力」、どの絵札かを瞬時に選び取る「判断力」や「瞬発力」、絵札がどこにあるかさがして絵札に手を伸ばす「空間認知力」、絵札の位置を覚えるあるいはことばを聞いて覚えた絵札を取る「記憶力」が伸ばせます。
また、かるたあそびには一定のルールがあります。複数であそぶことが多いので、自己主張することでけんかになることもあるかもしれませんが、けんかにならないように相手に譲ったり歩み寄ったりといった「協調性」や「社会性」、「コミュニケーション力」が育つことも期待できますね。
かるたは1歳からでもあそべます
——かるたにはルールがありますが、何歳からあそべるのでしょうか。
親野)
あそぼうと思えば、1歳からあそべます。
最初は、絵を中心にあそぶとよいでしょう。「かるた」として市販で売っているものでなくても、絵カードだけでも十分楽しめます。
年齢に合ったかるた選びとあそび方
先生に、それぞれの年齢にあったかるた選びとあそび方を教えていただきました。
◆1~2歳
「お馬さんはどこかな?」「かえるさんはどこかな?」と絵をさがすあそびがよいでしょう。子どもは小さいものが認識しづらいので、絵札がなるべく大きいものを選ぶようにします。
市販のものは小さいサイズのものが多いので、家庭でつくるのもオススメです。札に使用する紙は100円ショップで購入できる画用紙やらくがきちょうでかまいません。
絵をかくときは、子どもが認識しやすい鮮やかな色を選びます。いぬ、ねこ、うさぎ、かえるなどの生き物、チューリップやひまわりなどの花など、子どもに親しみのあるものをかきましょう。
文字を入れるなら、うまの「う」、つきの「つ」などの最初の文字、あるいは「うま」「つき」など、ことばを書いておきます。
また、子どもはひらがなよりも漢字のほうが認識しやすいので、「馬」「月」と漢字で書いてもOKです。
◆3~4歳
かんたんなルールを少しずつ理解してくる年齢なので、市販で売っている「いろはかるた」や「どうぶつかるた」など、わかりやすいテーマのかるたを選び、通常のルールであそびましょう。
4歳くらいになると、好ききらいも出てくるので、好きなキャラクターのかるたもいいですね。
数字に興味があるなら、かるたでなくても、「2」「5」などの数字や、「●」がかいてあるカードを利用(つくってもOK)しましょう。「2はどこかな?」「5はどこかな?」、「●が6つかいてあるのはどこかな?」といった絵札をさがすあそびは、数の理解を深めるきっかけにも役立ちます。
この時期は、絵札が速く取れなくてもいいので、じっくりあそびましょう。
◆5~6歳
知識をインプットできるかるたを選ぶとよいでしょう。
交通ルールや食育など、親が「教えたい」「身につけさせたい」こと、理解を深めたいことなどにも、かるたを利用することができます。市販のものもいいですが、企業や自治体、警察署などが作成しているかるたを、ダウンロードして活用しましょう。無料のものもたくさんありますよ。
また、星座に興味がある子どもには「星座かるた」、恐竜に興味のある子どもには「きょうりゅうかるた」など、子どもの興味に合ったかるたあそびもぜひやってください。
◆小学校1年生~
勉強に繋げるという視点で選ぶのもありです。
「ことわざかるた」「歴史かるた」「地図記号かるた」「都道府県かるた」「戦国武将かるた」「俳句かるた」など、勉強に通じるかるたはたくさん販売されています。
また、各自治体で発行している「ご当地かるた」もあります。
子どもは、「知っている」「やったことがある」「聞いたことがある」ことを先生が話したり、授業で取り上げられたりすると、とても興味をもって話を聞きます。
かるたで触れたものが授業に出てくると、「あれ、これ知ってる」と感じて興味をもって授業に取り組めたりするのです。
いいね! 親子で手づくりかるた
親子でかるたをつくるのも楽しい時間。文字の勉強だけでなく、知識も得ることができます。インターネットや図鑑を利用すれば、安くて優れた、我が子に合ったかるたがつくれます。
親野)
親がかるたをつくってくれたことや、親といっしょにいろいろ調べてかるたづくりをしたことがいい経験となって、のちの学校での調べ学習や自由研究に生かされます。
これも“アウトプット学習”のひとつと言えます。知りたいことや、覚えたいことをかるたにするとき、教科書や参考書、図鑑を見たり読んだりするので、とてもいい勉強になります。
こんなかるたはいかが?
先生がかるたをたくさん薦めてくださいました。その中からご紹介します。
普通のかるたより大きいA5サイズの、漢字のなりたちがおもしろい「ようちえんかんじカルタ」。
親野智可等先生が考案した、「星座カルタSP」。星座の名前を覚えられるだけでなく、夜空の星の配列も3ステップであそびながらわかるようになります。5歳くらいから楽しめます。
読み札にことわざがそのまま書かれている、「ことわざかるた」。漢字にはふりがながふってあり、解説もついています。読み上げ音声を利用すれば、一人でもあそべます。対象は小学1年生から。
「百人一首」は3歳からチャレンジできる
かるたといえば、やはり「百人一首」ですが、
そもそも百首も子どもに覚えられるのか? 上の句を聞いて下の句の札を取るというルールを理解できるのか? という疑問がわくかもしれません。
でも、あそぼうと思えば3歳でもあそべると親野先生はおっしゃいます。
親野)
「五色百人一首」という、百人一首の札を1色20首ずつ、5色に分けた「百人一首」があるのをご存知ですか?
これなら1色20枚から始められるので、子どもでも覚えることができます。
また、初めて百人一首に挑戦する人に、オススメです。
最初は意味がわからないまま覚えた句も、あとで意味を知ったり、興味をもって調べたりということもあります。
また、日本の伝統文化であることを子どもに伝えるきっかけにもなりますね。
続けるコツは、その子に合ったかるた選びと
勝ち負けのバランス
——一度やったかるたに繰り返しチャレンジしたり、新しいかるたを買ってほしいと子どもに思ってもらったりするには、どうしたらいいのでしょう。
子どもの発達や興味から選ぶ
親野)
どのかるたが子どもに合っているかわからないときは、かるたのパッケージやホームページに対象年齢が書いてあることが多いので、参考にするとよいでしょう。
そうはいっても個人差があるので、年齢表示はあくまで目安としてとらえ、無理強いをしないこと。
かるたは、子どもの発達ペースや興味に合わせて選び、楽しくあそべることが大切です。
——絵札を速く取りたくても人に取られてしまって勝てなくて飽きてしまう、勝てなくて大泣きして手がつけられなくなる子にはどう対処したらいいですか?
子どもの反応から勝ち負けのバランスをとる
親野)
こういうあそびは、勝ち負けのバランスが大事です。
大人がいっしょにやる場合、子どもの年齢、発達、性格によって大人が合わせる必要があります。
ときには大人が負けてあげたほうがいい子、負けることでがぜんやる気が増す子もいます。
ごくたまに、わざと負けたりするのはよくない、と真剣に勝負して、子どもをコテンパンにしてしまう保護者がいますが、そうすると、子どもはずっと負けっぱなしになってしまうので、イヤになってしまうので、
子どもの反応を見ながら勝ったり負けたりのバランスをとるようにして、子どものやる気を高めるようにしましょう。
また、ズルをする子もいますが、そこはあまり神経質にならなくて大丈夫。相手は子どもなので、子どものズルに大人があまり目くじらをたてないようにしましょう。外でも同じズルをするのでは? と心配する親もいますが、子どもは家では親に甘えているので、家でズルをしても、外でもズルする子はほとんどいません。
中には、負けて泣いてしまう子もいます。その場合、泣きたいだけ泣かせてあげたり、「悔しいね」「勝ちたかったね」と共感したりしましょう。気持ちがわかってもらえると落ち着きます。「次はがんばろう」と励ますのも、たっぷり共感してからにしましょう。
こういうタイプの負けず嫌いの子は、親は手を焼くかもしれませんが、向上心がある証拠。札を取れるようになりたいのです。向上心は、人間が生きていく上で、とても大切な資質です。幼いために感情のコントロールができないだけで、それ自体はとてもよいことです。エネルギーもあります。家族の前という甘えからストレートに感情が出てしまうだけなので、これも親は神経質にならなくて大丈夫です。成長とともに感情のコントロールができるようになります。
親野先生からのメッセージ
「知識の杭」についてお話しします。
例えば川に杭を打ちこむと流れてくる物が引っ掛かります。同様に、天体望遠鏡で土星を見たり星座かるたで遊んだりすると、それが知識の杭になり、その後テレビで土星や星座についての話題を見たとき、「あ、見たことある。え、土星の輪って岩と氷なんだ。へえ」などと興味をもって臨むようになります。知識の杭がないと引っ掛からずに流れてしまうかもしれません。
自然遊び、科学実験、博物館見学などの本物体験やかるたで知識の杭を増やせば、楽しみながら自然に知識量を増やすことができます。
勉強が好きでよくできる子は、こうした知識の杭をたくさん持っています。
人というのは、きっかけがないと、情報を日々川のように流すだけになってしまいます。かるたあそびが、杭を打ちこむきっかけのひとつになるといいですね。
この記事の監修・執筆者
長年の教師経験をもとに、子育て、親子関係、しつけ、勉強法、家庭教育について具体的に提案。著書多数。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても著名。X、Instagram、YouTube、Blog、メルマガなどで発信中。オンライン講演をはじめとして、全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも大人気となっている。
音声配信サービスVoicyの配信番組「コソダテ・ラジオ」の2022年12月の金曜マンスリーゲストとして出演。「家庭での学習習慣」について熱いトークを配信しています。
X
https://twitter.com/oyanochikara
https://www.instagram.com/oyanochikara/
講演のお問い合わせ
こそだてまっぷから
人気の記事がLINEに届く♪