もうすぐ節分です。
立春の前日である節分は、季節の変わり目。豆をまいて、鬼(病気や災厄)をはらいます。
園の節分行事はちょっぴり怖い演出があり、ドキドキしている子もいるかもしれませんね。
そんな「節分」をテーマにした絵本を紹介します。
絵本セレクトは、絵本専門士で、NPO法人「絵本で子育て」センター認定絵本講師、現役の保育士でもある、遠藤裕美先生です。
1月号
ドキドキの「節分」、オススメ絵本!
◆2~3歳向け! 『おなかのなかにおにがいる』
作/小沢孝子 絵/西村達馬 1,100円 ひさかたチャイルド
【あらすじ】
実は、おなかの中には鬼がいるのです。あっちゃんの鬼は「めんどくさがりや」の鬼! 鬼のお面を作っている途中で、あっちゃんもごろんと寝ころがってしまいました。お友だちのおなかには、食いしん坊鬼やへそ曲がり鬼が…。みんな「おには~そと」と豆まきをするのですが、へそ曲がりのごろちゃんは、「おには~うち」と豆を食べてしまいます。さて、ごろちゃんはどうなってしまうのかな?
【オススメポイント】
めんどくさがりの子のおなかの中には「めんどくさがりや」の鬼が! すぐにごろんと寝っころがってしまっても、それは鬼が悪いんです。
おなかの中に鬼がいて、その鬼がちょっと悪さをしている。少し長めのお話ですが、年齢が低い子でも、その発想がわかりやすく楽しいようでした。イヤイヤの姿が見られる子も多いと思います。園では、「おなかに、イヤイヤ鬼がいるのかなぁ~」の声かけに、思わず洋服をまくっておなかを見ていた2歳の子がいましたよ。また、ごろちゃんの行動には、見ていた子どもたちも大変! といった反応が見られました。鬼のお面作りや、豆まきの様子もしっかりと描かれているので、節分の前にオススメの絵本です。
◆3~4歳向け! 『まゆとおに』
文/富安陽子 絵/降矢なな 990円 福音館書店
【あらすじ】
やまんばの娘のまゆは、雑木林でとんでもなく大きな人に会いました。それはおなかを空かせた鬼だったのですが、まゆは鬼を知らなかったのです。まゆを家に連れて行って食べようとする鬼と、そんなことなど微塵も思わずに無邪気に鬼の手伝いをするまゆ。ふたりのやり取りに注目です。
【オススメポイント】
まゆが鬼という存在を知らなかったのと同じく、鬼もまた、まゆがやまんばの娘だということを知りません。これは、見ている子どもたちもいっしょで、まゆが鬼について行く姿を見て「だいじょうぶかな」とドキドキの様子でした! 鬼の家に着くと、まゆは、自分をゆでるお湯を沸かしているとも知らずにお手伝いを申し出ます。そのお手伝いの様子が圧巻! 太い木を根っこから引っこ抜いたり、石を砕いたりする姿に思わず鬼の表情が…。この表情が鬼の心情のすべてを語っていると言ってもいいくらいです。
鬼とまゆには、どんな展開が待っていたのでしょうか。鬼がただこらしめられてしまうといったお話ではないところも魅力のひとつだと思います。
◆4~5歳向け! 『おばあちゃんのえほうまき』
作・絵/野村たかあき 1,430円 佼成出版社
【あらすじ】
きょうは、節分。きりちゃんは、「えほうまき」を作るおばあちゃんのお手伝いをします。「えほうまき」を知らないきりちゃんに、おばあちゃんが、その由来から中に入れる具のお話までていねいに伝えていますよ。夕飯には家族みんなで、出来上がった「えほうまき」を食べ、豆まきも! ほのぼのとした節分の日を楽しみましょう。
【オススメポイント】
すっかり節分の日の食べ物として認識されている「えほうまき」。我が家では買うことが多く、作るとしても家族の好きな具を入れるという感じです。この絵本で、7つの具を入れると縁起がいいことをあらためて知りました。
読み聞かせでも、「食べたことある~」と教えてくれる子はいましたが、「作っている」と言っていた子はほとんどいませんでした。楽しく作っている様子には、思わずやってみたい! と思うかもしれません。巻末にレシピが紹介されていますので、お子さんと挑戦してみてはどうでしょうか。
お父さんも帰ってきて、家族みんなで「えほうまき」を食べたり、豆まきをしたり…。家族で過ごす温かな節分が、すてきな版画で描かれています。
◆大人向け! 『ないたあかおに』
文/はまだ ひろすけ 絵/いけだ たつお 1,100円 偕成社
【あらすじ】
人間とも仲良く暮らしていきたいと願う赤鬼がいましたが、人間たちは怖がって逃げてしまいます。そこで、仲良しの青鬼にその胸の内を打ち明けるのですが…。青鬼が赤鬼のために考えた作戦は、自分が村で暴れて、赤鬼がやっつけるというもの。人間たちは赤鬼に感謝して仲良くなりますが、青鬼は姿を消してしまうのでした。ふたりの鬼たちの友情が描かれたお話です。
【オススメポイント】
どうしても鬼というと、悪さをするなど怖いイメージがありますが、この絵本に出てくる鬼は違います。人間と仲良くなりたくて、「こころの やさしい おにのうちです」と立て札を作ってお茶を用意しているところも、見ていて応援したくなります。うまくいかずに落ち込んでしまう気持ちも描かれていて、どんどんお話に引き込まれていきました。
このお話の見どころは、赤鬼と青鬼の切ないまでの友情です。青鬼自身が悪者になって、赤鬼と人間が仲良くなるきっかけを作ったのですが、青鬼は赤鬼を思って姿を消してしまいます。この絵本を初めて手にしたのは小学生のときでしたが、この結末がどうにも悲しくて何度読んでも消化できない気持ちがありました。それは大人になった今も変わらず、だからこそ何度も手に取って読み返したくなる不思議な絵本になっています。みなさんはふたりの友情をどんなふうに受け止めるでしょうか?
2月の「こそだてまっぷの絵本棚」のセレクトは、「ちいさいおうち書店」越高綾乃さんです。お楽しみに!
この記事の監修・執筆者
絵本専門士7期生。NPO法人「絵本で子育て」センター認定絵本講師。現役保育士として、絵本を取り入れた保育を実践している。地域の読み聞かせボランティアの経験も多数。保育雑誌や書籍にて、絵本のセレクトや、執筆も行っている。監修書に『年齢別! 子育てママ&パパの頼れる絵本193』(ユーキャン)。
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