子どもは5歳から小1くらいになると、社会の中でのお金の役割をぼんやりと理解できると言われます。近年のキャッシュレス決済の普及や金融詐欺の増加など、これまで以上に金融教育への注目が高まる中、家庭でどのようにお金の価値や役割を伝えていくとよいでしょうか。日常生活の中で実践しやすい金融教育について、ファイナンシャルプランナーで株式会社エフピーウーマン代表取締役の大竹のり子さんに伺いました。
取材・文/FUTAKO企画
小学生に金融教育が必要な理由
2020年度から小学校の社会科、家庭科などの授業で「金融教育」がスタートし、子どもたちにお金の大切さや価値、役割、使い方などを教えるようになっています。その背景には、➀成人年齢の引き下げ、②社会の変化に伴う金融教育の必要性、③消費者トラブルの増加などが関係しています。
➀成人年齢の引き下げ
2022年4月から成年年齢が18歳に引き下げられ、一部金融機関ではクレジットカードの契約が本人の意思だけで締結できたり、ローンを組んだりすることも可能になりました。それに伴って詐欺や金融・消費のトラブルなどが増加しています。そこで、社会に出たときに必要なお金に関する知識・判断力を、これまでより早い段階で身につける必要が出てきていると言えます。
②社会の変化に伴う金融教育の必要性
キャッシュレス決済やインターネットバンキングが当たりまえの時代になり、「お金の流れ」が目に見えにくくなっています。さらに確定拠出年金やNISAの整備・拡充によって「投資」への関心も高まっている今、小学校からの「金融教育の積み上げ」はとても大事なことです。
③消費者トラブルの増加
スマートフォンやタブレット端末が身近なものになり、小学生でもゲームへの課金やワンクリック詐欺などのトラブルに巻き込まれることがあります。
子どもが使用している家族のお下がりのスマートフォンにクレジットカードの登録が残ったままであったことから、「子どもが勝手に課金してしまい、トラブルになった」というケースも少なくないようです。 これは、子どもだけでなく大人の側にもお金に関する知識や理解が不足のために生じたケースだと言えます。現代の子どもは低年齢から消費者トラブルに巻き込まれる危険性が高まっており、金額も高額化しています。
このような背景をふまえて、できるだけ早い時期からお金の使い方を学び、判断力を鍛え、管理する能力をつける、小学生からの金融教育が必要だと判断されたのです。
そして、学校だけではなく「ご家庭での実践的な金融教育」も大切です。「お金のやりとりを日常的に体験すること」「お金に対する価値観を家族で共有すること」は、ご家庭ならではの貴重な学びとなります。
実際にお金を使って保護者からフィードバックを得られるのは、大人と一緒に行動する機会の多い小学生の時期ならでは、と言えるでしょう。お金について家族で話し合うことは、お子さんがお金の仕組みや価値を理解するうえで、とても重要なことなのです。
「お金について家庭で教える」ポイントは?
➀「お金は使ったら減る」の理解
低学年の子どもに教える際、一番大事にしたいのは「お金は使ったら減る」という根本的なことだと言えます。私の娘たちもそうでしたが、「現金を出してお釣りをもらうと、お金が増えたと喜ぶ」とか、「ATMでカードを入れると無限にお金が出てくると思っている」など、お金を正しく理解・認識できていないということがあります。そこで、小さいころから、きちんと言葉を添えて説明をしながら経験をさせてあげることが大切になってきます。
②「使う」だけでなく「増やす」という視点も
「お金は使うだけでなく、増やすものでもある」という視点も今の時代は重要です。 小学生の子どもに理解してもらうためには、やはり「銀行にお金を預ける」という話からスタートするのがわかりやすいと思います。
「銀行にお金を預けると利息が付く」という話をして、次に「銀行に預ける以外に、お金をもっと増やすために投資という方法もあるんだよ」とか、お子さんが理解できたところで一つずつ話していくとよいでしょう。
③「お金の出入り」を知って将来の夢に
お金の出入りについても理解が必要なので、「使えるお金があるのは、保護者の方が働いているから」であって、「家の水道から出てくる水に対してもお金がかかっている」などと、「生活の中でのお金のつながり」を知ってもらうことはとても大事なことです。
働いて生活を支えている保護者の方への感謝の気持ちにもつながりますし、ちょっと小学生だと早いかもしれませんが、「将来こういう職業につきたい」とふんわりとイメージする結果を生むこともありえます。 ですから、小学生のうちから「仕事とつながりを持たせた金融教育」をしていくことはとても大切なことなのです。
一番身近な金融教育「お小遣い」で気をつけたい7つのこと

それでは、ご家庭での金融教育では、具体的にどんなことをすればよいでしょうか。一番簡単にできるのは「お小遣い」です。
➀「定額のお小遣い」は記録とセットで
小学生になって自分で計算ができるようになったら、「毎月、一定額のお小遣いをあげる」お小遣い制を始めてみましょう。以前は「学年×100円」が適切だとされていましたが、今はそれぞれのご家庭の状況に合わせて金額を決めていいと思います。
定額のお小遣い制で大事なのは「お金は使ったら減る」という根本的なことを知ること。「限られた期間に決まった金額でお金を管理する」ことが大事なので、「足りなくなったら補填する」といった特例は原則として作らないほうがよいでしょう。
また、「お金の出入りを記録すること」も重要です。お小遣い帳や記入する用紙を用意するなど、最初のうちはできるだけ親子で一緒にお金の出入りを確認するとよいと思います。 記録する習慣をつけることで、限られた金額の中でほしいもの、必要なものをよく考えてお金を使う「やりくり」ができたかどうかが見えてくるはずです。
②「買うもの」のすり合わせをしておく
いざ、お小遣い制を始めたときに「その金額の中でお子さんが買うものは何か、親が引き続き買い与えるものは何か」という定義があいまいなことがあります。こうした具体的なすり合わせがなければ「お母さんのスーパーでの買い物についていけば、お菓子は買ってもらえる」「シールは文房具のついでに買ってもらえる」など、「予算内で自分で考えて使う」というせっかくの機会を失うことにもなってしまいます。
そうならないために「何をお子さん自身で買うべきか」はあらかじめ親子ですり合わせをしておくことが必要です。「文房具など学校で必要なものは親が買う」「お菓子やシールは自分で買う」「わからない場合はその都度、保護者の方に相談する」のようなルールを作っておくとよいでしょう。
③最初は現金から
最近では自販機やスーパーなどでも現金を使う機会が減っていますが、「目に見えないお金」は低年齢の子どもには理解しにくいものです。
低学年のうちは特に、お小遣いは現金で与えましょう。「金額ちょうどのお金をレジで出す」「買いたい物より多く支払っておつりをもらう」など、理解しやすい少額から始めるのがよいでしょう。 現金でのやりとりに慣れてきて、年齢が上がってきたら、Suicaのような交通機関のICカードなど、現金以外での支払い方法にステップアップしてもよいと思います。
④「小さな失敗」を経験させてみる
お小遣い制で大事なのは、「成功」だけでなく「失敗」も経験させること。例えば、「よく考えずにほしいものを次々買っていたら、本当にほしいものが出てきたときに買えなかった」という経験をしたとします。それによって、「あれは無駄遣いだった」という気づきが得られるわけです。
必要なもの、本当にほしいものが出てきたときにお金が足りなくて困るという経験がないと、必要な物を買う「消費」と、必要のない物をなんとなく買う「浪費」の違いに気づくことが難しくなります。 多少失敗したとしても、大人になってから大きな失敗をするよりはいいので、小学生のお小遣いでは、「お金を使う」経験をたくさんさせることを目的にしたいですね。
高学年ぐらいになると、「目の前のお金だけでは足りないもののために貯める」「自分のためだけではなく誰かのために使う」といった視点も持てるようになり、より広い視野でお金の使い方を考えていけるようになってきます。
⑤使い道に口出ししない
お子さんにお小遣いを渡したら「使い道に口をはさまない」のは鉄則です。「そんなものに大事なお金を使って!」と言いたくなることがあっても、ぐっとがまんしましょう。 ただし、月に1回でもいいので、使い方について「振り返り」の機会を持つことは大切です。
こうしたフィードバックの機会がないと、「何を買ったか覚えていないけれど、ほとんど使ってしまった」というときに、それが本当に必要なもの、ほしいものだったのかを改めて考えることができません。振り返りをすることで、よりよい使い方を考えるきっかけになるのです。
「必要なもの、ほしいものがちゃんと買えた?」「買って失敗したなと思うものはある?」などと、批判的なことは言わずにお子さんの金銭感覚が育つような言葉をかけてあげることが大事です。
こうして日常的にお子さんとお金の話をすることで、「これを買ったけど、毎日すごく使っていて便利だよ」「正直、あれは買わなくてもよかったなと思った」といった、お子さん自身の気づきの機会につながっていくのです。
⑥「都度払い」のお小遣いは話し合いで
時にはお祭りでの飲食や旅行先でのお土産など、「必要なときにお小遣いを渡す」という場合もあるでしょう。そのときも大事なのは、親子で話し合って金額を決めることと、お金を使ったあとに振り返りの時間を持つことです。お子さんの買ったものの確認と感想を忘れずに聞くようにしましょう。
また、「お手伝いをした報酬としてお小遣いを与える」というのは、ご家庭によって考え方が分かれるところだと思います。
お手伝いの報酬を与えるメリットとしては、「働いたことによってお金がもらえる」「たくさん働いたら、たくさんお金がもらえる」という感覚が育つ良さがあると言えます。
一方で、「家事はふだんから家族全員が協力し合って当然なのに、お金がもらえるのはおかしい」という考え方もありますね。
他にも、「テストでいい点を取ったらボーナスとしてお小遣いをあげる」のも、「やる気につながるのでよい」という意見と、「ごほうびが目的になるので教育的によくない」といった意見もあるでしょう。
これらに関しては、保護者の方が大人どうしで話し合ってスタンスを決めておくことが大切です。ご家庭内で意見が一致したら、その方針をぶれずに貫いていく、というのがよいと思います。
⑦「貯金できてえらいね」と言わない
お子さんがお小遣いを使わずにいると、「無駄遣いをしないでえらいね」「こんなに貯めていて、しっかりしている」などとほめていないでしょうか。
ほしいものがあって貯めているなら問題ありませんが、「ほめられるから」「使うのがもったいないから貯めている」だけだと、せっかくのお金を活用する機会を失うことになってしまいます。
お小遣いは子どもがお金の使い方を学べる貴重なツールです。「半年貯めたら、これが買えるね」などと声をかけ、限りある中でどんな有効な使い方ができるか、お子さんが自分で考えられるように促すことも大事です。
最後に ~日常生活でお金の理解を深める
子どものお金の使い方について話し合うのではなく、日常生活の中で保護者の方自身が「今、何のために、どう考えてお金を使ったか」ということを共有していく、というのもいい方法だと思います。
スーパーなどで買い物をする際に、「今、夕飯の材料として○○を買おうと思ったけど高かったから、200円安い△△に変更したよ」などと実況中継や解説をするのです。
他にも、「今度行くコンサートのチケットの料金をコンビニで払うよ」「この買い物はお財布に入っている現金だと足りないからカードで払っているんだよ」などと説明を加えることで、これまでぼんやりしていた日常生活でのお金の使い方についての理解が自然に深まるはずです。
このように、日常で保護者の方がどのように考え、工夫してお金を使っているのかを知る経験は、お子さん自身がよりよいお小遣いの使い方を考えることにつながります。金融教育が注目されている中、家庭でどのように実践的な学びができるのか、親子で考えてみるのはいかがでしょうか。
この記事の監修・執筆者
出版社の編集者を経て2005年4月に「エフピーウーマン」を設立。 雑誌、講演、テレビ・ラジオ出演などのほか『お金の教養スクール』を通じて女性がお金の知識をつけることの大切さを伝えている。『なぜかお金に困らない女性の習慣』(大和書房)、『ライフプランから考える お金の増やし方』(ナツメ社)など著書・監修書は70冊以上に及ぶ。
●女性ファイナンシャルプランナーによるお金の総合クリニック 「エフピーウーマン」https://www.fpwoman.co.jp/
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