【寒い朝、子どもが二度寝してしまうのはなぜ?】冬場にすっきり目覚めるコツ6選<専門家監修>

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寒い冬の朝は、大人も子どももなかなか布団から出られず、つい二度寝してしまうことも。ほかの季節に増して、お子さんを起こすのに苦労している……、という保護者の方も多いのではないでしょうか。
今まで、子どもも含めて多くの睡眠カウンセリングを行ってきたという医師の森田麻里子さんに、冬場でも快適に目覚めるための生活習慣や室内環境のポイントについて、お聞きしました。

取材・文/松田明子

目次

冬場になかなか起きられない理由

日照時間が短くなる冬場は、人間は生理的に睡眠時間が長くなります。そのため、ほかの季節と同じ時間に寝ても朝起きにくくなるというのは、実はよくあること。特に、早朝に起きる習慣の人は、起床時間にまだ日が出ていない、または日が出ていても日差しが弱く外も暗いことから、光の刺激が少なくなり、さらに目覚めにくくなります。

もうひとつは、寒さの問題です。体内時計の働きにより、人間の体は夜になると体温が下がってリラックスモードになり、朝になると体温が上がって活動モードになります。体温は、夜明けから早朝にかけて一番低くなります。そして、起床前後から徐々に上がっていくことで、体が活動モードに移行していきます。そのため、冬場のように室温が低く体温が上がりにくいと、なかなか活動のスイッチが入りづらくなり、起きづらくなってしまいます

冬でもすっきり目覚めるためのコツ

すっきり目覚めるためには、まずは一定の睡眠時間を確保すること。そして、就寝時・起床時の習慣や、寝室の環境を整えることがとても大切です。また、睡眠自体の質を高めることで、寝起きがよくなり、朝から元気に活動することができます。

特に意識しておきたい、習慣や環境を紹介します。

入浴は寝る1~2時間前にすませる

体内時計の働きで夜に体温が下がっていくとき、下がる勢いが急であればあるほど、眠気が強くなります。そのため、入浴は寝る1~2時間前がベスト。お風呂につかって一旦体温を上げ、ちょうど体温が下がってきたタイミングで就寝することで、ぐっすり眠ることができます

お湯の温度は、暖かい時期は38~39℃、寒い時期は39~40℃がおすすめ。ゆっくり浸かって体の芯まで温まることで、寝る前に体温が下がりやすい状態をつくることができます。

②手足を冷やさない

体温が下がるときに眠気がやって来ますが、先に手足が冷えてしまうと、逆に深部体温(脳や内臓など体の内側の温度)は下がりにくくなってしまいます。子どもが眠くなると手足がぽかぽか温かくなるのは、手足の血管が広がって熱を逃がし、深部体温を下げているため。つまり、手足が冷えてしまうと、そこから熱が逃げにくくなってしまうというわけです。ですから、入浴後は、なるべく暖かい部屋にいるなど、手足を冷やさないようにしましょう。

寝る前に、電気毛布や湯たんぽなどで、布団を温めておくのも◎。単純に暖かくて気持ちがよいことに加え、手足が冷えないことで眠りに入りやすくなります。ただし、就寝中にずっと温め続けるのはNG。暑すぎて汗をかくと不快感につながり、深い眠りを得るためにはマイナスになります。電気毛布は寝るときに電源を切り、湯たんぽなどは外しておきましょう。

特に冷えがちな冬場は、お風呂上がりには靴下をはくのも一案です。ただし、寝るときには脱ぎましょう。就寝中にも靴下をはいていると、今度は放熱が妨げられて足から熱が逃げにくくなり、眠りが浅くなる可能性があるためです

③寒すぎない部屋で眠る

朝、室温が低いと、体がなかなか活動モードに切り替わりません。室温は18~20℃を保つようにしましょう。エアコンなどの暖房は、夜間もなるべくつけっぱなしにして室温を一定に保つことで、睡眠の質も安定します。暖めすぎが気になる場合は、エアコンを18℃ほどの低めの温度でキープするだけでも効果的です。

乾燥が気になるのであれば、加湿器を併用するか、オイルヒーターなど乾燥しにくい暖房器具を使用してもよいでしょう。

④起床したら、まずカーテンを開ける

朝、しっかり光を浴びることで、目覚めがよくなります。冬は夏よりも差し込む光が弱いので、積極的に浴びることを意識しましょう。「皮膚に浴びる」というより、「目に届ける」ことが大切です。光を目で見てとり入れることで、その信号が脳に伝わり、脳が「朝が来た」ことを認識するからです

雨や曇りの日であっても、室内照明より日光のほうが強い光だといわれています。寝室に窓があるなら起きぬけにカーテンを開ける、難しい場合はリビングに行くなどして、しっかり日の光を浴びましょう。

「遮光カーテン」はOK? NG?

朝すっきり起きることを考えると、遮光機能のないカーテンのほうが光を通すため、起きやすくなります。ただし、日の出の時間は季節によって変わるため、起床時間がまちまちになってしまいがちです。一年を通して決まった時間に起きたいなら、遮光カーテンがおすすめです

また、寝るときはできるだけ暗いほうが、睡眠の質はよくなります。例えば、寝室の窓の外に街灯があり、夜も部屋が明るくなってしまうという場合なども、遮光カーテンのほうがよいでしょう。

こういったことから遮光カーテンを選ぶ場合は、特に意識して、朝の時間帯にはしっかりカーテンを開けるようにしましょう。

⑤温かい朝食を食べる

「朝食をとる」ことで、体内時計のリズムが整い、体を活動モードに切り替わります。日照時間が短く、活動モードとリラックスモードのメリハリがつきにくい冬場だからこそ、しっかり朝食を食べることが大切です。冬の朝は特に体温を上げていきたいので、温かいスープや飲み物がおすすめです

朝食はなるべく、炭水化物、タンパク質、ビタミン類が、バランスよくとれるメニューにしましょう。特に、タンパク質(アミノ酸)は、睡眠を促すホルモン「メラトニン」の原料になります。

意識的にとりたい栄養素「鉄分」

メラトニンに加えて、不足しやすい栄養素として意識的にとりたいのが「鉄分」鉄分には、睡眠リズムを整えたり、メラトニンの合成を助けたりする働きがあります。鉄分は血液に優先的に使われてしまうため、「貧血」と診断されていなくても、不足している人が意外と多いのです。赤身肉、卵黄などに多く含まれています。また、鉄分を強化した飲み物など、市販品に頼るのも一案です。

9時間以上の睡眠をとる

小学生(6~12歳くらい)の子どもには、基本的に9~12時間程度の睡眠が必要といわれています。なるべく毎日9時間以上の睡眠をキープできるように意識しましょう。

睡眠の質が下がる!? やりがちなNG習慣

ついやってしまいがちだけれど、睡眠の質を下げてしまう習慣を紹介します。なるべく意識して生活しましょう。

NG習慣① 寝る前のスマホ&タブレット

寝る直前まで、動画やゲーム、SNSでの友達とのやり取りをしていると、終わってすぐに寝ようとしても、なかなか寝られません。または、寝られたとしても眠りが浅くなりやすい傾向があります。

画面から出るブルーライトに眠気を抑える効果があるうえ、コンテンツそのものが脳を興奮させてしまうからです。例えば、「スクリーンタイムは入浴の前まで」などと親子で決めて、夜寝る前には画面を見ないようにしましょう

NG習慣② 家で一日中過ごす

冬場は外が寒いため、お休みの日は家の中で一日過ごす、というお子さんも多いのではないでしょうか。けれども、日中の活動量が減ると、生活リズムのメリハリがつきにくくなり、夜の眠りが浅くなる可能性があります

大人なら週5回・1日30分程度の中強度の運動(ウォーキング、軽いジョギング、水泳など)が推奨されています。子どもも、お休みの日でも1日1回は、積極的に外遊びをとり入れるようにしましょう

NG習慣③ 週末の夜更かし&朝寝坊

睡眠は、「量」と「質」に加え、「リズム」も非常に大切です。平日の睡眠不足を補おうと週末2日間に寝だめすると、体内時計のリズムがずれてしまいます。すると月曜日の朝、起きようとしても起きられず、無理やり起きたとしても、まだ体が起ききっていない「夜」の状態で学校に行くことに。血圧も体温も上がり切っていない状態で、ぼおっとしたまま、午前中過ごすことになってしまいます。

そのため、週末と平日の睡眠リズムは、できる限り動かさず、同じように過ごすのが◎。ただし、「平日はどうしても睡眠不足になるので、休日は少しゆっくり眠りたい」という場合は、1時間程度の誤差を目安にしましょう。例えば、平日は朝6時半に起きているなら、休日も7時半頃には起きたいものです。もし眠くなってしまったら、その日の夜に早く寝ることにしましょう。

平日の睡眠不足がなかなか解消されない場合は、例えば平日の塾に行く前など、午後の早い時間帯に、短い仮眠(お昼寝)をとることがおすすめです。お昼寝は「寝た感じ」が得られる20分程度がおすすめ。30分以上になると、起きた後ぼーっとしやすくなってしまいます。

睡眠不足にはデメリットが多い

睡眠不足は免疫力の低下に直結します。大人を対象にした実験では、睡眠時間が7時間未満の人は、もっと寝ている人に比べて3倍程度、感染症にかかる可能性が上がったという報告もあります。ですから、感染症が流行りやすい冬場は、特に睡眠不足に気をつけたいものです。

また、深い睡眠が十分にとれないことで、成長ホルモンの分泌が減る可能性があります。人間の体は、就寝後しばらく経った時間、つまり夜の前半に深い眠りが訪れ、その際に成長ホルモンがたくさん分泌されます。前述のNG習慣をなるべく避け、特に夜の前半の睡眠の質を維持するように心がけましょう。

さらに、睡眠不足が続くと、注意力や記憶力が落ちるといわれており、勉強の成績の低下にもつながりやすくなります。そのほか、疲れやだるさを感じやすくなったり、ネガティブ思考が強まったりする面もあります。

<睡眠不足のデメリット>
●免疫力の低下
●成長ホルモンの分泌の低下
●注意力・記憶力が落ちる
●メンタルヘルスの不調(疲れ、だるさ、イライラ)
●ネガティブ思考が高まりやすい

習慣を見直して、冬場もすっきり目覚めよう

冬の朝はなかなか起きられないものですが、ちょっとした習慣や環境を見直すだけで、睡眠の質を上げ、すっきり目覚めることができるようになります。

お子さんに、毎日元気に過ごしてもらうためにも、今日できることから少しずつ始めてみませんか?

この記事の監修・執筆者

Child Health Laboratory代表/医師 森田 麻里子

2012年東京大学医学部医学科卒。麻酔科医として勤務後、2017年の第1子出産をきっかけに、2018年に医学情報に基づき赤ちゃんの健康をサポートする「Child Health Laboratory」を設立。2019年昭和大学病院附属東病院睡眠医療センター非常勤勤務を経て、現在は睡眠カウンセリングや企業向け睡眠講座、アプリ開発、スリープコンサルタント育成などを行っている。著書に『東大医学部卒ママ医師が伝える科学的に正しい子育て』(光文社)、『仕事? 受験? 子育て? 医師が教える [タイプ別] 快眠ステップ1・2・3』(ロギカ書房)などがある。

Child Health Laboratory https://child.healthlabs.jp/

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