おねしょ(夜間のおもらし)は、3歳で2~3人に1人、4歳で4~5人に1人、5歳で5~6人に1人という割合。保育園の年長クラス20人のうち、4人くらいはいるという計算です。
意外に多いと感じましたか?
そんなおねしょは自然とおさまるまで放っておいてよいのでしょうか?
気になるおねしょについて、小児科医で夜尿症外来も担当されている服部益治先生にお聞きしました。
文/おけいこラボ編集部
「おねしょ」は生理現象
乳幼児期のおねしょは、3つの要因が合わさって起こります。
1、寝ている間もおしっこを作りすぎてしまう…要因の60~70%
寝ている間は、脳から「抗利尿ホルモン」が出ます。
腎臓に“おしっこを作りすぎないように”と指令がいくことで量が減るのですが、子どもはその機能が未発達なためにうまく指令が出せず、昼間と同じようにおしっこを作ってしまいます。
2、膀胱の容量が小さい…要因の30~40%
体の小さい子どものうちは、おしっこをためるための膀胱もまだ小さく、長時間ためておくことができません。
3、眠りが深い…要因の10%程度
たいていの子どもは、眠りが深いです。一度眠るとちょっとのことでは起きないという子も多いのでは?
つまり、膀胱がいっぱいになっても、尿意を感じて目覚めることが難しいのです。
これらは、排尿のメカニズムが未熟なために起こる生理現象で、基本的には体の成長に伴って抗利尿ホルモンが出るようになり、膀胱も大きく成長するので、自然とおさまっていきます。
おねしょ対策は生活改善から!
いつかはおさまるとは言え…
おねしょが続く間、おねしょ予防のための対策と、してしまった時の被害を小さくするための対策を紹介します。
予防対策<生活指導>
病院でも、まずは生活指導から行う場合が多く、これで2~3割の子は改善します。
家庭でできることですので、ぜひ参考にしてみてください。
規則正しい生活
夜更かしや不規則な生活は、脳のリズムが狂って指令がうまく出せなくなり、おねしょを悪化させます。
早寝、早起き、決まった時間の食事を心がけるようにしましょう。
水分は朝昼たっぷり、午後から控えめ
水分は体に必要なため、朝食と昼食ではたっぷりとりましょう。
夕方から控えめにし、夕食時から寝るまでは、コップ1杯(200㏄)程度にとどめると◎。
摂取した水分がおしっこになるまで1時間半~2時間程度かかるため、夕食とお風呂を早めに済ませて、寝るまでに2~3時間空けられるとベストです。
塩分を控える
塩分が多い食事はのどの渇きにつながります。塩分が多い外食の日は、食事の時間帯に気をつけるなど工夫を。
便秘に注意
膀胱のうしろには直腸があるため、ひどい便秘の場合は膀胱を圧迫している可能性も。食物繊維を多く含む、野菜・果物・豆類・いも類を食事にとり入れましょう。
寝る前のトイレを習慣に
「出ない!」とトイレに行かずに寝る子もいますが、尿意を感じていないだけで、実際には膀胱におしっこがたまっていることも多いのです。トイレに行ってから寝ることを習慣づけましょう。
30分~1時間経っても寝つけない時は、もう一度行っておくと安心です。
寝ている時の冷えから守る
大人でも、寒い時はトイレが近くなります。寒いと膀胱がちぢむためです。
特に冬は、下着やパジャマのズボンを重ねるか、靴下を履いて、体を温かくしましょう。ぶ厚い布団は、熱がこもって自分でめくってしまいがちなため、下半身を温められる靴下がおすすめです。
被害を小さくする対策<グッズを活用>
おしっこを広げない、布団に染みないためのグッズを活用するのが効果的。
- オムツ
- 吸水性の高い「おねしょパンツ」や「おねしょズボン」
- 敷布団の上にかける「防水シーツ」
などがあります。
今はドラッグストア以外に、ネットでも購入できますね。店舗では一番奥に置いてある場合が多いですよ。
グッズの活用でおねしょがおさまる時期が遅くなることはない(=グッズを使うことが子どものストレスになる訳ではない)ので、上手にとり入れましょう!
おねしょに関するQ&A
Q.夜中に起こした方がいいの?
A.起こさないで
夜中に起こすことで、睡眠が不安定になったり質の低下につながったり、昼夜を混同してしまうなど、リズムが整わなくなってしまいます。結果、おねしょがおさまるのが先延ばしとなってしまうことも。
Q.日中は問題なくトイレでできるのですが、夜はまだ…。心配しなくて平気?
A.昼と夜は別々に考えて
日中は起きていて、意識がある状態です。対して、寝ている間は意識がなく、眠りも深いので起きられないのが乳幼児。昼と夜のトイレ事情は分けて考えましょう。
もし起きている時にも、おしっこやうんちを漏らしてしまう場合は、下記の表を目安に医療機関で相談を。
★
【注】1~2か月間、生活習慣の見直しに取り組んでも、夜尿の状況に改善がなければ、医療施設の*受診も考える(**受診しましょう)
【参考】国際小児禁制学会(ICCS)など国際的ガイドラインでは、夜尿症とは5歳以上で、月1回以上を3か月間、夜間睡眠中の尿漏れが継続している場合とされる。
服部益治:診療と新薬 52(1):3-7,2015
Q.ふだんはしないのに、時々してしまう原因はある?
A.夕方以降に興奮材料はないかを確認して
夕方以降や寝る前に、
- 子どもを叱る
- 夫婦ゲンカや家族内の言い合い
- 怖い場面があるテレビや激しいゲーム
など、こういった子どもにとっての興奮材料があると、睡眠の質が低下したり、怖い夢を見たり、昼間と勘違いするなどから、おねしょにつながることがあります。
Q.毎晩のことでついイライラ…。どんなふうに考えればいい?
A.必ず治ります! 焦らないでゆったりと構えて
個人差があるので、小学校の高学年まで続く子も中にはいますが、いずれはおさまります。
毎晩のこととなると親は大変でしょうが、叱られたり焦ったりすれば治るものではありません。
きょうだいや周りの子と比べず、「絶対に大丈夫! いつかは治る!」と太鼓判を押してあげるくらいの、ゆったりとした気持ちでいるようにしましょう。
ちなみに、低気圧だと人間の体は不安定になりがち。
「明日は雨だからおねしょしないで~」と思うかもしれませんが、雨の日はおねしょをしやすいのです。
プレッシャーを感じたり、イライラしたりするのは子どもも同じかもしれません。親子で一緒に解決していくと考えると、ほんの少し気持ちが軽くなりませんか?
Q.おねしょが続いて落ち込む子どもにかけられる言葉はある?
A.うまくいった時に思いきりほめる!
失敗した時ではなく、うまくいった日にたっぷりとほめましょう。
それが子どもにとっての自信になります。
それに、自信がつけば、失敗して悲しいという思いからも、他人の苦しみや悲しみがわかるような人間性が育つと考えられます。
小児科受診の目安は5歳以降
夜間のおもらしは、「おねしょ」と「夜尿症」に分けられます。
・おねしょ
乳幼児期の夜間のおもらしのこと。排尿の仕組みが未発達なために起こる
・夜尿症
夜間のおもらし(夜尿)が、5歳以降で月1回以上、3か月以上続く(夜尿症診断ガイドライン2016)
夜尿症診療ガイドライン2016は世界基準での定義で、日本では「5~6歳以降に月数回以上」としています。
小学校入学前後でおねしょが続いて気になる場合は、小児科の受診を検討するとよいでしょう。
服部先生からのメッセージ
おねしょ・夜尿症は、メカニズムが解明されており、治療法が確立しているので必ず治ります!
かの有名な坂本龍馬は、中学生までおねしょをしていたそう。ほかにも、一休さんや海外の偉人にも…。
おねしょ=偉人ではありませんが、おねしょがその後の人生をマイナスにするものでは決してありません。
むしろ私は、上手につき合うことで、のちのち「辛かった」という記憶よりも、同じような悩みをもつ人の気持ちがわかったり、丁寧に関わった親の気持ちを察する優しさや思いやりの心につながったりすると思っています。
小児科受診の目安は5歳以降と考えていただければよいですが、お子さん本人や家族の悩みが深いようでしたら、年齢や程度に関わらず、★の表も参考に、気軽に相談してくださいね。まずは生活の様子を聞いて、尿検査をすることが多いですよ。
Q&Aにも記載した
- 怒らず…プレッシャーを減らす
- ほめる…自信アップ
- 起こさず…睡眠の質確保
- 比べず…プレッシャーを減らす
- 焦らず…希望をもつ
をキーワードに、ゆっくり成長していきましょう。
この記事の監修・執筆者
「おねしょ卒業!プロジェクト委員会」委員長。日本小児科学会専門医、日本腎臓学会専門医、日本夜尿症学会評議員、医療福祉センターさくら院長ほか。専門は、小児科全般、腎臓病、夜尿症、予防接種、傷害予防など。次世代を託す子どもたちに心豊かに育ってもらうために講演や執筆などで活躍。
こそだてまっぷから
人気の記事がLINEに届く♪