【医師監修】片頭痛と上手に付き合おう

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【医師監修】片頭痛と上手に付き合おう

片頭痛で悩んでいるのは、子育て世代の30~40代の女性が圧倒的に多いといわれています。多くの女性は悩んでいても治療経験がないそう。片頭痛の原因、予防法、対処法はもちろん、どんな治療法があるのかなどを、ご自身も片頭痛をもち、多くの患者さんを診ていらっしゃる丹羽潔先生にうかがいました。

監修/丹羽潔(東京頭痛クリニック理事長、にわファミリークリニック院長)  イラスト/わたいしおり

目次

そもそも片頭痛って?

片頭痛の罹患者は日本で1000万人いるとされ、その多くは30代~40代の女性です。片頭痛の特徴はおもに、階段昇降程度の動きでも頭の片側が脈を打つようにズキンズキンと痛むタイプ、両側が痛むタイプ、ズキンズキンとはせず頭が重く痛むタイプがあります
でも、純粋な片頭痛もちの人は2割ほど。およそ800万人は、それ以外の頭痛も併発しています。

では、なぜ起こるのでしょうか?

片頭痛はなぜ起こる?

幸せホルモンでしられるセロトニンが、日々わたしたちの睡眠、ストレス、情緒、痛みをコントロールし、血管の拡張を抑えています。このセロトニンが、過度のストレス、ストレスからの解放、不規則な睡眠時間、不規則な食事や偏った食事、天気、生理などの影響で消費されてしまい、自律神経や三叉神経(顔や鼻腔などの感覚神経)の興奮がコントロールできなくなります。すると、CGRP(アミノ酸の塊で悪いものではない)という物質が脳内に分泌されて血管を拡張・膨張させ、炎症を引き起こします。これがズキンズキンの痛みの正体、片頭痛のメカニズムです。
なお、妊娠期間などで生理が止まっている間は、女性ホルモンのバランスが安定し、片頭痛は軽減されやすくなります。

片頭痛は遺伝するといわれ、その確率は50%以上。両親が片頭痛もちだと75%以上の高確率で遺伝します。とくに母系遺伝に多いので、この記事を読んでいるあなたが女性だったら、お母さんが片頭痛もちなのではないでしょうか。それは女のお子さんにも高確率で遺伝すると考えておきましょう。

片頭痛には予兆・前兆がある

予兆・・・前兆の有り無し関係なく、普段とは違う首や肩のこり、眠気、疲労感、光や音に対する過敏性、吐き気など、人によって症状はさまざま。片頭痛が起こる2日前からや数時間前から症状が現れる人がいます。
前兆・・・1か所を見つめたとき、その付近がぼやっともやがかかったように欠けて見えたり、ジグザグに見えたりします。また、顔や舌がチクチクする人、まれにめまいや耳鳴りがする人もいます。これらは片頭痛が起こる直前に現れることがあります。

自分が片頭痛もちかを知るには?

時々頭痛があるけれどそれが片頭痛かどうかわからない人には、確認する方法があります。
次の図の赤い箇所と青い箇所を軽く押してみてください。赤い箇所を軽く押しても痛くないのに、青い箇所(7本ある頸椎の3番目の出口にあたりを「片頭痛圧痛点」といいます)を軽く押してみると痛みを感じる人は片頭痛もちといえます。

※神経の出口であってツボではないので、強く押さないこと。

片頭痛診断の決め手はこの5つ

いろいろな要因のあるなかで、片頭痛と診断する決め手になるのはこの5つです。

・発作性の頭痛である
・日常生活が妨げられる
・日常的な動作によって頭痛が増悪する
・吐き気や嘔吐を伴う
・光、音、におい(のうち2つは)に敏感になる

およそ800万人が併発する「緊張型頭痛」

先ほど述べた片頭痛もちの1000万人のうち、純粋な片頭痛以外のおよそ800万人が併発しているといわれる頭痛の多くは「緊張型頭痛」です
これは、ストレートネックだけでなく、猫背、うつぶせで肘をついた姿勢、ヒールの高い靴で長時間歩く、脚を組むなど、「悪い姿勢」によって起こる、首や肩のこりからくる頭痛です。ほとんどは首のこりからきています。

押してみて!「胸鎖乳突筋」

耳のすぐ後ろの骨のでっぱりの直下にある、「胸鎖乳突筋」という筋肉を軽く押してみましょう。首のこりがある人は、「胸鎖乳突筋」の上から下までどこを押しても痛みを感じます

この部分を毎日入浴時に2~3分マッサージするだけで、緊張型頭痛は軽減します。

※強く押さないようにし、自分で押してみてもわからない人は、無理をしないようにしてください。

薬の飲みすぎによる「薬物乱用頭痛」も

市販薬のロキソプロフェンやイブプロフェンなどの鎮痛剤を1か月に10日以上のむ人は、薬が効かない「薬物乱用頭痛」という頭痛の可能性も。この10日間とは、片頭痛のためにのんだ薬のほかに、生理痛のためにのんだ鎮痛剤や、歯科で処方された鎮痛剤をのんだ場合もカウントします。
薬の成分は、1錠のんだら48時間以上たたないと体内から抜けません。抜けないうちに次の1錠をのんでしまう人も多く、ずっと体内に薬がある状態になってしまいます。

あなたはどんなときに片頭痛になる?

自分が、何が原因で片頭痛になっていると考えられるか、チェックしてみましょう。

❑ストレスあるいは、休日にストレスから解放されたとき
❑睡眠時間がいつもより長かったとき、いつもより短かったとき
❑人混み、騒音、強いにおい、まぶしい光
❑気候や気圧の変化
❑月経周期による女性ホルモンの変動
❑遺伝素因(母親が片頭痛もち)
❑チョコレート、チーズ、ナッツ、赤ワイン、柑橘系、ノンカロリー飲料などに添加されるアスパルテーム、カフェインの多量摂取時
❑空腹時(低血糖)

気候や気圧の変化とは、天気が悪くて湿度が高いときや低気圧、高温のこと。片頭痛は特に湿度が高いと起こりやすくなります。また、赤ワインに含まれるヒスタミンやチラミンは血管を拡張させる作用があるので要注意。おやつや酒のつまみになりそうなチョコレートやチーズ、ナッツ、柑橘系にもチラミンが含まれているので片頭痛を起こす要因になります

上の項目で、あなたの片頭痛の要因になった項目を、点数化してみましょう。生理痛の度合い、摂取したものの量など、片頭痛に強く関係してそうであれば5点、まあまあ関係してそうであれば3点、少し関連してそうであれば1点といった具合に数値化します。すると片頭痛の原因が見えてきます。

〈例〉
○Aさんの場合、「遺伝素因」3点、「生理は軽い」2点としたら、これだけなら片頭痛は起こらなかったと考えます。ここにもし、そのときに台風(3点)やストレス(1点)、睡眠不足(1点)など何か要因があって片頭痛になったと考えられます。

○Bさんの場合、「遺伝素因」4点、「生理が重い」5点ですでに9点。あと1項目で片頭痛が起こります。チョコレートを食べすぎたとか、朝ごはんを抜いてしまったなど思い当たる項目があれば、それが引き金になったかもしれません。

このように、片頭痛を引き起こすきっかけには個人差があります。

3つの予防法と対処法

丹羽先生オススメの片頭痛の予防・対処法をそれぞれ3つずつ教えていただきました。

【3つの予防法】
① 朝ごはんを食べる
 休日にたとえ雨が降っていてもリフレッシュのために外出する
③ リズミカルな運動をする

②は、休日に化粧をしてちょっと出かけるだけでも。③はガムをかむだけでもOKです。

【3つの対処法】
① コーヒーなどでカフェインを適量摂る
② 暗い部屋で過ごす
③ 首筋を冷やす

どうしても出かけなければならず痛みを取りたいときには、ロキソプロフェンやアセトアミノフェンなどの成分が入った市販の鎮痛薬をのむこともあるでしょう。
種類がたくさんあって迷うかもしれませんが、複数の成分が入っている鎮痛薬をのみ過ぎると逆に、頭痛が起こることもあることもあるので注意して選びましょう。

「緊張型頭痛」を予防するためには?

姿勢を正す

おへそを前に出して座ります。これだけで姿勢が正されます。

肩甲骨ほぐし

上記のおへそを前に出して姿勢を正して立ち、肩甲骨をくっつけるイメージで、うでを後ろに動かします。これを朝昼晩、最低10回ずつ行いましょう。

それにプラスして、先ほどの「胸鎖乳突筋」のこりをほぐします。入浴の前とあとに2~3分ずつほぐしましょう。これらをやることで、「片頭痛」と首こり肩こりからくる「緊張型頭痛」が緩和されます。

つらいときは頭痛外来を受診して

片頭痛が続く人、たびたび起こる人は、頭痛外来を受診してみましょう。でも、受診をしたことがない人にとって頭痛外来は未知ですね。いったいどんな診察をし、どんな治療をするのでしょうか?

何が原因かを見極めるための「頭痛ダイアリー」

片頭痛があっても2週間前のことは忘れてしまうものです。そこで診察で役立つのが「頭痛ダイアリー」をつけること。頭痛の程度を朝昼晩それぞれ3段階で記入し、症状などを記録していくもので、これが大変と思う人もいるようです。

丹羽先生のクリニックでは、ストレスがあったら「ス」、眠かったら「ね」、雨だったら「雨」など簡単な記入法にしていますが、それに加え、「忙しくてパソコン触りすぎたな」「慢性的に睡眠不足だな」「おなかがすいてチョコ食べすぎちゃった」といった、患者の生活習慣も医師にとっては大事な情報だそう。

原因や治療法を模索するのに半年かかる

片頭痛治療には、「急性期治療」と「予防療法」の2つを行います。

【急性期治療】
治療では「トリプタン」という薬を使用します。日本では5種類の薬剤が販売されており、服薬するものや点鼻薬、自己注射薬があります。これらは医師が処方する薬です。痛み止めではなく、血管の拡張を抑え、かつ神経の炎症も抑えるというというもので、20年以上前から行われている治療法です。よく効く薬ですが、残念ながら効かない人が片頭痛もちの3割ほどいます。突然片頭痛が起こっても、水なしでのめる薬もあります。

【予防療法】
現在、片頭痛の発症を抑制する注射での治療法があります。3種あるうち「エムガルディ🄬 」「アジョビ🄬」は先のCGRPが悪さをするのを抑える薬で、月に1回注射するものです。早い人は半年以内に1か月間頭痛が起こらないほどの効果がみられます。保険適用でも1万円以上の費用がかかる療法ですが、効き目はバツグンです。

なお、妊活中の人には処方できないので、保険適用の漢方が処方されます
気圧のせいなのか、生理のせいなのかなど、何が頭痛の要因になっているかで漢方の種類が変わってくるので、医師と相談してください。

医師は先ほどの「頭痛ダイアリー」をもとに、その人にあった薬や治療法をさがします。それには半年ほど時間を要するので、気長に受診し続けることが大切です。

いかがでしたか?
片頭痛の人は、完全にストレスがなくなってもそれが引き金になることもあるので、ストレスから解放される休日でもお化粧をして、少しでも外に出かけることが大事。冬にオススメはミネラルたっぷりの「甘酒」だそうですよ。
片頭痛とは60~70歳代くらい、女性ホルモンがなくなるまでの長い付き合いになるそうなので、上手に付き合っていきたいですね。

この記事の監修・執筆者

東京頭痛クリニック理事長・にわファミリークリニック院長 丹羽 潔

医学博士。東海大学医学部を卒業後、ドイツに1年、アメリカに3年に留学。脳卒中を中心に研究するも、自身が頭痛もちになったことをきっかけに頭痛の研究に携わる。年間4,000人もの片頭痛患者の診察・治療を行う。日本神経学会専門医・指導医。日本内科学会総合内科専門医・指導医。日本脳卒中学会専門医・評議員。日本頭痛学会専門医・指導医・代議員。

2005年「にわファミリークリニック」開院、2015年日本初、頭痛専門のクリニック「東京頭痛クリニック」を開院。
主な著書『日本初の頭痛専門クリニックが教える 最新 頭痛の治し方大全』(扶桑社)など。講演会やメディアにも多数出演している。

東京頭痛クリニックHP
http://tokyoheadache.jp/

にわファミリークリニックHP
http://www.nfcl.jp/

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