蒸し暑い日が続き、梅雨が明けると本格的に暑くなってきます。
暑さと切り離せないのが「汗」。実は汗をかく力は、3歳ごろまでの過ごし方で決まるといいます。
汗ってかいたほうがいいの? 子どものうちに、どんな生活を心がけたらいいの?
猛暑の夏が多い近年、エアコンなどの冷房機器のじょうずな使い方と併せて、総合母子保健センター愛育クリニック院長の渋谷紀子先生にお話をうかがいました。
お話/渋谷紀子(総合母子保健センター愛育クリニック 院長)
汗には体温を調節し、皮膚を守る役割がある
「汗をかく」ことのいちばん大きな目的は、体温調節です。
暑さで体温が上昇すると、脳の視床下部というセンサーが感知して、全身の汗腺に「汗をかきなさい」と指令を出します。
汗をかくと、その水分が蒸発するときに皮膚の表面から熱を奪って、体温を下げることができます。道路に打ち水をするのと同じ効果です。体温が下がると、脳からの指令は止まります。
つまり、暑いときにじょうずに汗をかかないと、体温が上昇したままで体調が悪くなってしまうので、「汗をかく力」を育てるのは大切なことなのです。
また、適度な汗は皮膚を保湿する作用もあり、皮膚を守る役割があるとされています。
それでは、汗をかく機能は、どのように発達していくのでしょうか。
発汗機能は2~3歳ごろまでに完成する
「汗腺」は、汗を分泌するための腺で、全身に存在しています。
すべての汗腺が活動しているわけではなく、そのうちの「能動汗腺」が活動しています。
汗腺の数は生まれたときから大人と変わりませんが、能動汗腺の数は成長とともに増加し、2~3歳ごろまでに発汗機能が完成するといわれています。
体温調節機能の成熟のためには、発汗機能が完成するまでのこの時期に、適度に汗をかく生活を送る必要があります。
冷房の効いた涼しい部屋に毎日引きこもっていることは避けて、できる範囲で、涼しい時間帯に外遊びをするなど、運動して汗を流すという生活を意識しましょう。
汗っかきや汗をかきにくいなど、体質には個人差がありますが、汗をかくことを習慣づけていくと、その子なりの機能の成熟が認められます。
また、発汗機能が完成したあとや大人になってからでも、生活のなかで汗をかくことは大切です。
急に暑くなる5月ごろに、熱中症のニュースをよく見かけませんか?
熱中症は、気温や湿度などの外的要因のほかに、体がまだその暑さに慣れていないことによっても起こります。
暑い季節になって繰り返し汗をかくうちに、むやみに塩分を失わないよう調節するなど、上手に汗をかけるようになります。
そのため、汗腺の機能を維持するために、日ごろから適度に体を動かして汗をかくような生活を送ることが望ましいといえます。
赤ちゃんに汗をかかせるのが心配な方も! 汗をかいたあとの対処法
汗をかいたままにしない
汗をかいたり、発汗機能を高めたりすることの大切さがわかったところで、汗をかいたあとの対処法も押さえておきましょう。
幼い子どもは、汗腺の分泌機能が未熟ではあるものの、体は小さいのに大人と汗腺の数が変わらないため、汗腺の密度が高く、大人よりも体表面積当たりにたくさんの汗をかきます。
大量の汗をかいたままにしておくと、汗の通り道(汗管)が詰まってしまい、皮膚の炎症を起こして「あせも」が生じます。
また、ほこりなどが付着しやすくなるといった衛生面での心配や、ベタベタした不快さ、かゆみの原因などにもなるので、汗をかいたら早めに拭いたり、着替えたり、シャワーで流したりしてください。
子どもの皮膚はデリケートなため、シャワーを浴びるときには、皮膚を守るのに必要な皮脂を取り過ぎないように、せっけんを使うのは1日1回程度に留め、ぬるま湯でさっぱりと汗を流せばよいでしょう。
乾燥やアトピーが気になる子の場合でも、基本的には汗をかくことをオススメしますが、よりこまめに汗を拭き、シャワー後にしっかりと保湿を行いましょう。
水分・塩分を補給する
汗をかくと、水分とともに塩分が失われます。
子どもの体は大人よりも必要な水分比率が高いため、遊ぶ前や遊んでいる途中、遊んだあとのシャワー後にも水分補給を行ってください。
大量の汗をかいたときは、水やお茶の水分補給だけでは体内の塩分濃度が薄まってしまうので、経口補水液を利用したり、食事の塩分量をいつもよりも意識して少し増やしたりするとよいでしょう。
冷房は積極的に使用してOK! 赤ちゃんには適切な温度管理を
冷房機器は、近年の猛暑には必須です。また、子どもは大人よりも体温が高い傾向にあり、暑がりです。汗をかくことは大切といっても、エアコンなどを適切に使って暑さを乗り切りましょう。
しかし、外の気温と室内とで温度差があり過ぎると、かえって体に負担がかかってしまいます。
夏の間の室温は26~28℃くらいが適温といわれています。
エアコンだけではなく、扇風機を併用すると快適です。扇風機を部屋の上部に向けて、空間の空気が循環するように組み合わせて使用すると、高めの室温でも涼しく感じることができるようです。
熱帯夜などで眠りが浅くなってしまうようであれば、夜間もつけっぱなしにしてもかまいませんが、子どもに風が直接当たらないように気をつけましょう。
朝方に寒さを感じるようであれば、タイマーの利用を。
子どもは寝相が悪いことが多いので、冷えやすいおなかが出ないように、ロンパースタイプのパジャマを着せたり、夏でも薄手の腹巻きを使ったりするなど、布団から出てしまうことを前提に服装を工夫するとよいでしょう。
また、子どもによって暑がり、寒がりなど感じ方はそれぞれなので、寝ているときに手足が冷たくないか、背中が汗でぬれていないかなどを、ときどき触って確認するようにしてください。
とくに乳児に対して行うことが多いのですが、子どもが嫌がらなければ、寝る前に背中にガーゼを入れておき、熟睡してからそっとガーゼを抜くようにすると、少しの汗なら起こして着替えさせずに済みますよ。
これからの暑い時期に向けて、冷房機器をじょうずに使いながら、汗をかく力を高めていきましょう。
この記事の監修・執筆者
東京大学医学部卒。NTT東日本関東病院小児科部長などを経て、現職。日本小児科学会認定専門医、日本アレルギー学会認定専門医。主な監修書籍に、『0-5歳児 病気とケガの救急&予防カンペキマニュアル』(学研教育みらい)、『はじめてママ&パパの0-6才病気とホームケア』(主婦の友社)などがある。
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