暑い日が続くと、大人だけでなく、子どもにも夏バテの症状が表れやすくなります。しかも子どもは、大人以上に夏バテになりやすいのです。
いつもは元気いっぱいの子どもが、どうして夏バテになるの? 夏バテになったら、どうすればいいの? そんな夏バテにまつわる疑問や不安について、小児科医の宮野孝一先生(みやのこどもクリニック)に伺いました。
監修/みやのこどもクリニック 院長 宮野孝一
1 夏バテはどうして起こるの?
夏バテとは、だるさや食欲不振、疲れやすさなど、夏の暑さによる体調不良を総称したものです。
夏バテの原因は、大きく次の4つに分けられます。
温度差による自律神経の乱れ
暑い屋外と冷房の効いた屋内。この温度差の大きい屋外と屋内をくり返し行き来することで、体温調節を行う自律神経が乱れ、体内のさまざまな機能に影響が出ます。
発汗による水分・ミネラルの不足
汗をかくことで体内の水分・ミネラル(ナトリウム、カリウムなど)を失うと、脱水状態になり、体の中に熱がこもりやすくなります。
暑さによる食欲減退
暑さで食欲がなくなると、十分な栄養が摂れとれなくなり、消化機能も低下してしまいます。
暑さによる睡眠不足
寝苦しい夜が続くと、十分に眠れず、疲労を回復できなかったり、体力を消耗したりします。
子どもは夏バテになりやすい!
子どもは暑くても元気いっぱいに思えますが、じつは大人よりも夏バテになりやすいのです。
その大きな原因は、体内の水分の割合です。大人は体重の55~60%が水分ですが、幼児は65~70%と、大人よりも水分の割合が大きいため、汗などで水分が失われると脱水状態になりやすく、夏バテへとつながってしまいます。
また、水分量の多い子どもの体温は、まわりの気温に左右されやすい傾向にあります。そのため、気温が高いときには体温も上がり、体力を奪われて、夏バテになりやすいのです。
2 子どもの夏バテの症状は?
子どもの夏バテのおもな症状
子どもの夏バテでは、大人と同じような症状が表れます。
- だるさ
- 食欲不振
- 下痢など胃腸の不良
- やる気がない
- 不眠
- 手足の冷え など
小さい子どもは、自分で夏バテの症状に気づけないことも多いため、保護者が子どもの様子を確認することが大切です。
また、夏バテの症状は熱中症の症状にも似ていますが、熱中症は高温多湿の中で急激に症状が進むのに対し、夏バテは数日間かけてゆっくりと進行するのが特徴です。
病院にかかったほうがよい症状
子どもの夏バテは、多くの場合は暑さが収まるとともにゆっくりと回復します。お子さんの食欲や睡眠が普段と同じ状態に戻れば、夏バテ解消といえるでしょう。
しかし、次のような症状がある場合は、病院を受診してみてください。
●日中も寝てばかりいる
●尿の量が普段より少ない(水分が足りていない)
●発熱が2日以上続く(夏の感染症の疑いもある)
●嘔吐・下痢が続く
3 家庭でできる、夏バテ回復のための対処方法
では、家庭で夏バテの症状に対処するためには、どうしたらいいのでしょうか?
次の4つのポイントを参考にしてみましょう。
エアコンの温度は25~27℃に設定
室内を冷やしすぎないように、エアコンの設定温度を25~27℃にします。
エアコンや扇風機の風は、直接子どもに当たらないようにしましょう。口や鼻が乾燥して、息がしづらくなってしまいます。
暑くて寝苦しい夜には、27℃ぐらいの設定にして風向きに注意すれば、一晩つけっぱなしにしても問題はありません。
冷たいものは控えめに
胃腸を冷やしすぎないためにも、冷たい飲み物はできるだけ避けましょう。
ジュースよりも、むぎ茶やイオン飲料など、ミネラルが入った水分をぬるめにして飲ませるようにします。
栄養と食べやすさを考えた食事を
野菜でビタミンを摂取
ビタミンの多い野菜を摂取することで、免疫力がアップします。
特に、見た目にもカラフルな彩りが加わる夏野菜がおすすめです。色数が多いことで、食欲がわく効果があります。
クエン酸を含む梅干しや酢、レモンなどの酸っぱいものをとる
疲れを感じる体の回復には、クエン酸が役立ちます。暑い夏に、酢の物やはちみつレモンが欲しくなるのは自然なことなのです。
酸っぱいものが苦手なお子さんには、酢豚や甘酢漬けなどを試してみてはいかがでしょう。
いろいろな食べ物からたんぱく質を
特に豚肉は、疲労回復にもってこいのビタミンB群を多く含んでいます。
お肉や魚、大豆などからバランスよくとるとよいでしょう。
普段よりも少しだけ塩分を多めに
塩分は、食欲増進に効果的です。
汗で流れ出る塩分もあるため、夏バテの症状が出ているときは、少しだけ多めに摂取を。料理への塩分を足すほか、みそやしょう油などを使う料理を意識して一品追加すると、取り入れやすいです。
早寝早起き、軽い運動
子どもや保護者の夏休みで、生活リズムがいつもより後ろ倒しになり、遅寝遅起きになるご家庭も多いことでしょう。
でもこれは、体の負担を考えるとよくありません。毎日、同じリズムで早寝早起きすることを心がけるほうが、元気に過ごすことができるのです。
また、朝などの涼しい時間帯に、適度な運動を取り入れましょう。
たとえば、家族での散歩や、朝のラジオ体操、セミ捕りなどで十分です。
体を動かすだけでなく、精神的にも満たされたり、安定したりするというメリットもあります。
夏の思い出にもなりますよ。
夏バテの予防には…
予防も基本的に、上記4つのポイントを心がけて、生活に取り入れるとよいでしょう。
ただ、症状が出ていない場合は、水分補給にイオン飲料の常用は避けます。
塩分の量も、普段どおりでかまいません。
暑い日が続くなか、お子さんがなんとなくいつもより元気がないかも? と思ったら、夏バテの可能性があります。
症状や対処のポイントを押さえて、落ち着いて対処し、夏を元気に過ごしましょう!
この記事の監修・執筆者
みやのこどもクリニック院長。日本小児科学会認定専門医、日本アレルギー学会認定専門医であり、ぜんそくやアトピー性皮膚炎などの診療にも積極的に取り組む。
こそだてまっぷから
人気の記事がLINEに届く♪