【医師監修】朝から子どもの元気がないときは…低血糖の可能性! 原因と対策を徹底解説 

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【医師監修】朝から子どもの元気がないときは…低血糖の可能性! 原因と対策を徹底解説 

朝、子どもがなかなか起きない、熱はないのになんだか元気がない、というかぐったりしている…という経験をしたことはありませんか? そんなときはもしかすると、子どもが「低血糖」を引き起こしているかもしれません。見過ごしがちな子どもの「低血糖」について知り、もしものときに対応できるようにしましょう。

初回は、「低血糖」の症状と原因、予防について解説します。お話は、たけつな小児科クリニック院長の竹綱 庸仁先生です。

目次

低血糖は適切に糖分を摂取できないときに起きる

「低血糖」は病名ではなく、症状の名称です。低血糖が単独で症状として現れることはなく、なんらかの原因で体内に糖分(=炭水化物)をうまく蓄えることができなかったことができなかったときに起こります。低血糖に関わらず、子どもに元気がない、ぐったりしているときは必ず何かあると思って、全身状態をチェックしてください。

●低血糖の症状

・元気がない、ぐったりしている

・機嫌が悪い、イライラしている、泣き続ける

・起き上がれない(強い眠気)

・顔色が悪い

・冷や汗をかく

・意識障害

・けいれん など

●子どもが低血糖を起こすメカニズム

人間の体には血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)を一定レベルに維持する調整機能があります。糖質が含まれた食事をして血糖値が上昇すると、膵臓からインスリンというホルモンが分泌され、血糖値を一定値まで下げるように働きかけます。

一方、体に取り込む糖分が足りないときは、血液中のブドウ糖の濃度が下がるため、体は血糖値を上げようとして、脳などからホルモンを出して血糖値を上げたり、体内脂肪を分解して、血糖値を上げようとします。しかし、体に取り込む糖の量と体が消費する糖の量を下回った場合に、バランスが崩れ、様々な症状が起こります。とくに脳は大量のブドウ糖を必要とするため、体内にある糖分が足りなくなると脳の機能に問題が発生します。

一般的に年齢が幼い子は糖の代謝能力が未熟なため、半日くらい糖質を体内に取り込まないでいると、簡単に低血糖を起こしてしまいます。そのメカニズムとしては、栄養分解できる糖質が体内になくなると、人間は体にある脂肪を分解してエネルギーを産生しようとます。その結果、脂肪の分解産物で、低血糖を引き起こす原因物質であるケトンがどんどん体内に蓄積して悪循環となり、低血糖が起こるのです。

●低血糖の原因

子どもの場合、ノロ、ロタ、アデノウイルスなどによる胃腸炎、熱中症の二次的な症状のひとつとして低血糖が起こることが多いでしょう。特に胃腸炎では、吐き気が強いため食欲がなかったり、嘔吐や下痢により体内の水分が少なくなったりし、十分な食事(=糖分)の摂取がなくなるため、低血糖症状につながりやすくなります。また、風邪をひいたときなど、極端に食欲がなくなるときも要注意です。

なお、「低血糖」が原因で、嘔吐や下痢をすることはありません。ほかの病気症状が原因となり、二次的に起こるのが「低血糖」だということを覚えておきましょう。

そのほか、まれにではありますが、代謝異常(糖代謝、脂肪酸代謝などの異常)、内分泌異常(インスリンの過剰産生など)などの基礎疾患が原因の場合もあります。心配なときはかかりつけ医に相談しましょう。

病気症状ではない「低血糖」も子どもにはありえる

元気のない女の子

風邪や胃腸炎にかかっているときには、発熱や咳、嘔吐や下痢、腹痛といった明らかなほかの症状があります。ところが、熱がなく、咳もしていないけれどとにかく子どもに元気がない、朝起きられない、というときにも低血糖を起こしている可能性があります。

<こんなケース>

●前日に旅行に行って疲れてしまい、晩ごはんを食べないまま寝てしまった

●デパートなどで保護者が買い物に夢中になっている間にぐったり

●好き嫌いが多く、晩ごはんのほとんどを残したまま寝た

●もともと食が細く、食べることが苦手

●偏食があり、食べられるものが限定されている

このようにいろいろなケースはありますが、共通するのは、なんらかの理由で子どもの食事が十分ではなく、必要な糖分の補給ができていない、ということ。糖分を長時間摂取できないまま過ごし、朝起きるときには低血糖を起こしていることが多いように感じます。

ハードに遊んだ翌日、熱や嘔吐はないけれど子どもに元気がないときは、ただの疲労だけではなく、低血糖を起こしている可能性も。子どもは何を食べたか、適切な栄養を摂取できていたかを考えてみましょう。

適切な「糖分」摂取で、回復できる

低血糖を起こしたときは、すみやかに体内に糖分と水分を入れ、体をゆっくりと休めることで、症状は改善されます。胃腸炎などで口から水分補給ができないときは、点滴が有効な治療法となります。重度の脱水症状の場合は、家庭での管理が難しいため、嘔吐が出現した際に早めに小児科を受診するよう心がけましょう。

少し回復して食べられそうになってきたら、以下の回復食から試してみてください。

●糖分不足の低血糖の場合

「糖分」を摂ることが重要なので、このときカロリーは気にしなくてOK。ただし「糖分」といっても高カロリーなものではなく、血糖値を安定的に維持できるおにぎりやおせんべいがおすすめです。嘔吐につながりにくいメリットもあるため、アメもおすすめです。※アメはくれぐれも誤飲に注意をしてください。

●胃腸炎などが原因の低血糖の場合

本人に食欲があれば、スープやプリン、ゼリーなどの流動食から開始。腹痛や下痢の状態を確認しながら、おかゆやうどんに移行し、消化のよい固形物が摂取できたら普段の食事に戻していきます。

子どもは消化器官が未発達なので、一度にたくさんの量を食べられません。子どもが毎日を元気に過ごせるよう、保護者のみなさんは、常に子どもの糖分補給を意識してください。補食としておにぎりやおせんべいをうまく活用し、安定した血糖値を保つようにしましょう。


次回(6月20日更新)は、子どもの低血糖について、よくある質問にQ&Aでお答えいただきます。

この記事の監修・執筆者

たけつな小児科クリニック 院長 竹綱 庸仁

愛知医科大学医学部卒業後、愛知医科大学病院 小児科で勤務。大学病院を退職後、奈良県の二次医療機関の小児科の立ち上げを行い、平成29年奈良県生駒市にたけつな小児科クリニックを開院。「日本一、子どもに好かれる小児科医」として親しまれ、「すべては子どもたちのために」をモットーに地域の子どもたちの「こころ」と「からだ」を支えている。病児保育室、発達支援施設も運営。取材、執筆多数。

http://www.taketsuna-kojika.com

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