子どもが失敗した時、思わず「何やってるの!」と、とがめたり叱ったりしていませんか?
親の言葉や姿勢は子どもにうつります。では、このような場合にはどのように声かけをすればよいのでしょうか?
教育評論家の親野智可等先生にお話を伺いました。
小さな妹のミスに、同時に「だいじょうぶ?」と気遣う姉2人
私は、講演のためにあちこち移動することが多いので、その途中でいろいろな親子の光景が目に入ってきます。
あるとき、駅のベンチに座って食事をしている親子がいました。
お母さん、たぶん小学校高学年の女の子(長女)、たぶん低学年の女の子(次女)、たぶん入学前の女の子(三女)の4人です。
食事の途中で、お母さんが売店に何かを買いに行きました。
そして、お母さんがいないとき、一番下の女の子が寿司のパックを持とうとしました。
ところが、手が小さいので持ちきれずに、パックごと落としてしまい稲荷寿司が2つほどパックの外に飛び出しました。
すると、横にいた二人のお姉さんが、同時に「だいじょうぶ?」と言いました。
二人の声が練習したように見事にそろっていたので、私はびっくりしました。
こちらもオススメ:【「買って買って」は親を試している⁉】子どものおねだりへの対処方法や買うべきタイミングとは?
お母さんの言葉が子どもにうつる
一番下の女の子は、もう泣きそうになっていましたが、お姉さん二人が「だいじょうぶだよ。だいじょうぶだよ。びっくりしたね」などと言いながら、パックや稲荷寿司を拾ったり、その子の手を拭いたりしてあげていました。
そこへお母さんが戻ってきて、何と言うかと思ったら、お母さんも「だいじょうぶ?」と言いました。
そして、「だいじょうぶだよ。だいじょうぶだよ」と言って一番下の女の子を安心させました。
次に、お母さんはお姉さんたちに「ありがとう。ありがとう」と言いました。
私は、なんて素敵な親子なんだろうと感動しました。
たぶん、お母さんがいつもこういう言葉をつかっているので、二人のお姉さんたちも自然にそれを身につけたのでしょう。
子どものミスに「何やってるの?ダメじゃないの」と叱るお母さん
また別の日にはこういう光景を見ました。
ある駅の構内で、小学校の低学年らしき男の子とお母さんが、エレベーターに向かって走ってきました。
お母さんが男の子の背中を押して、「急いで、急いで」と言いながら、2人はエレベーターの近くまで来ました。
ところが、エレベーターが閉まり始め、お母さんに押されながら慌てて乗ろうとした子どもが、ドアに肩をぶつけてしまいました。
すると、すかさずお母さんが「何やってるの?ダメじゃないの」と言いました。
見ていた私は「え?」と思いました。
「お母さん、あなたのせいでしょ」と言いたいくらいでした。
本来なら「ごめんね。だいじょうぶ?」と言うべきところです。
このお母さんは、自分が子どもをエレベーターに無理に乗らせようとしておきながら、ドアにぶつかったと言って叱っているのです。
ただのミスなのに、しかも自分が原因でそうなったのに、叱っているのです。
このお母さんは、普段からすぐに人をとがめているのではないかと疑わずにはいられませんでした。
そして、やがては子どももこういう姿勢や言葉を身につけてしまうのではないかと心配になりました。
普段から攻撃的な姿勢でいると、とっさの時にも言葉に出る
このお母さんのように、子どもが何かミスをしたとき、「何やってるの?ダメじゃないの」などと叱ってしまうことは多いと思います。
何か悪いことをしたわけでもなく、ただのミスなのにとがめて叱ってしまうのです。
でも、冒頭で紹介したお母さんのように、そうでない人もいます。
こういう咄嗟の瞬間に、相手をとがめる「何やってるの?ダメじゃないの」という言葉が出るか、それとも相手を思いやる「だいじょうぶ?」という言葉が出るか、その違いは大きいと思います。
前者は普段から常に攻撃的な姿勢でいるということであり、後者は共感的な姿勢でいるということです。
咄嗟の瞬間だからこそ、それが出てしまうのです。
ただのミスに対して、とがめる言葉、叱る言葉をやめよう
たとえば、子どもが醤油をこぼしたとき、あなたは何と言いますか?
「何やってるの?気をつけなきゃダメじゃないの」と言いますか?
このようにミスをとがめても、それで子どもが醤油をこぼさなくなるとか、行動がしっかり落ち着いてくるなどということはありません。
それよりも、親がこういう言葉をつかい続けることによるマイナスの影響の方がはるかに大きいです。
親が「何やってるの?ダメじゃないの」などという言葉をつかっていれば、子どもも兄弟や友達に同じような言葉をつかうようになってしまうのです。
さらには、すぐに相手をとがめる姿勢、すぐに叱ってしまう姿勢まで真似してしまいます。
ですから、とがめる言葉、叱る言葉をやめましょう。
「すぐ相手をとがめてしまう。叱ってしまう」という癖を直しましょう。
子どもを安心させる言葉や、子どもの気持ちに共感する言葉を増やすように心がけていきましょう。
親のすることはすべて子どもにとって見本でありモデルです。
子どもは毎日親の姿を見ているので、その影響は本当に大きいのです。
この記事の監修・執筆者
長年の教師経験をもとに、子育て、親子関係、しつけ、勉強法、家庭教育について具体的に提案。著書多数。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても著名。X、Instagram、YouTube、Blog、メルマガなどで発信中。オンライン講演をはじめとして、全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも大人気となっている。
音声配信サービスVoicyの配信番組「コソダテ・ラジオ」の2022年12月の金曜マンスリーゲストとして出演。「家庭での学習習慣」について熱いトークを配信しています。
X
https://twitter.com/oyanochikara
https://www.instagram.com/oyanochikara/
講演のお問い合わせ
こそだてまっぷから
人気の記事がLINEに届く♪