災害時のための家族の分の食料や水、懐中電灯やモバイルバッテリーなどの防災グッズは、ある程度備えていると思います。子育て家庭では、子どものための防災グッズや非常用持ち出し袋もあるといいでしょう。子どものために何を備えておくとよいかを防災アドバイザーの岡部梨恵子先生に教えていただきました。また、子どもといっしょに普段から行っておくとよい「おうちで避難訓練」についてのアドバイスもあります。
イラスト/湯沢知子 文/こそだてまっぷ編集部
子どもの非常用持ち出し袋に何を入れる?
この記事の前編『保護者がいないときに、地震が起きたら?』では、巨大地震が起きたら、被災後すぐに保護者が帰宅できるとは限らないので、帰宅できるまでは信頼できる近所の方に子どもを助けてもらうことをお伝えしました。このようなときに、子どもが自分の分の食べ物や飲み物を持っていることは大切です。被災時に保護者が自宅にいなかったり、被災後にはぐれてしまったりしたときのための子どもの防災グッズを用意しておきましょう。以下でお伝えする10のアイテムを子どもが持つ非常用持ち出し袋に入れておくと役立ちます。
①保護者の連絡先を書いたメモ
保護者の携帯電話番号、「三角連絡法」(※)に使う遠方の親戚や知人の電話番号を紙に記しておきます。災害用伝言ダイヤルを利用するにも、保護者の携帯電話番号が必要です。東日本大震災のときは、電話がつながりにくくてもインターネットがつながることありました。保護者のSNS上のニックネームなどを書いておくといいでしょう。子どもは自分の状況を言葉で伝えることが難しいので、信頼できる大人に限り、メモを見せて連絡を取ってもらうことができます。
※三角連絡法…被災地から離れた地域に住む親戚や知人を中継地点にして連絡を取る方法のこと。
子どもにアレルギーや持病がある場合は、メモにそれを記して常備薬も入れておきましょう。
② 非常食(キャンディやグミなど好きなお菓子など)
被災直後に保護者が自宅に帰れない場合、近所に住む知人などに子どもを見てもらいます。このとき、子ども自身が食べる物や飲み物は非常用持ち出し袋に入れて持っていかせましょう。普段好んで食べているお菓子や、トランプや絵本などちょっとした遊び道具も入れておくと不安な気持ちを落ち着かせるのに役立ちます。
③携帯トイレ
飲食は何時間かがまんすることができますが、排泄はがまんできません。トイレがあってもライフラインが停止すると給排水ができないのでトイレは使えません。
④公衆電話用の小銭
災害時は公衆電話が無料になる場合もありますが、小銭が必要なこともあります。財布に小銭を入れて子どもの非常用持ち出し袋に入れておきましょう。
⑤ ホイッスル
エレベーターなどに閉じ込められたときに利用できます。ホイッスルは「子どもの連れ去り」などの防犯にも役立つので、普段からランドセルに装着するなど常に携帯しておいたほうがいいでしょう。非常用持ち出し袋に入れるなら、耐衝撃性や防水性に優れ、大きな音が出しやすい「災害用ホイッスル」を用意しましょう。
⑥ メモ帳と筆記具
「お母さんは〇〇小学校の避難所にいるよ」などの大切な情報は、聞くだけでなくメモしておくと安心です。子ども自身が書けなくても、大人に頼んで書いてもらえることもあります。筆記具は水に強い油性ペンが理想的。
⑦ ハンカチ、ティッシュ(ウエットティシュ)
水が使えなくなったときに、手や顔、体の衛生を保つのにウエットティッシュは役立ちます。ベビー用の「おしりふき」は厚みがあって大判なので便利です。
⑧ ミニライト
LEDライトがおすすめ。いざというときに電池切れ、ということがないように定期的に電池残量を確認しておきましょう。
⑨ ブランケット
「エマージェンシーブランケット」あるいは「防災用ブランケット」などの名称で市販されています。柔らかくて音がしにくいポリエチレン素材は軽量で保温性に優れています。大判なら防寒に加え、子どもが屋外で着替えやトイレを済ませなくてはならないときの目隠しにも活用できます。
⑩スニーカーなどの靴
ガラスや壊れた物で足をけがしてしまうと、逃げることができません。避難用スニーカーは、就寝中の備えとして寝室に置いておいてもいいでしょう。
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とっさに命を守る行動ができるようにおうちで避難訓練
スマホから「緊急地震速報」の警報音が突然に流れてくると、大人でも怖く感じますね。子どもなら、なおさらでしょう。でも、子どもも、「この音が鳴ったら緊急事態が発生した」ということを知っておくべきです。いざというときに子どもが警報音を聞いてパニックにならないように、普段から「この音が鳴ったら、どうする?」という練習をおくといいでしょう。緊急地震速報の各種警報音は、気象庁や自治体のWEBサイトなどから試聴・訓練用にダウンロードすることができます。
◆ダンゴムシごっこ
実際の警報音を(ボリュームを下げてでもいいので)子どもに聞かせて「はい! ダンゴムシ(※)ごっこ、スタート!」と声をかけます。「この音が鳴ったら、倒れたり、落ちてきたりする危険な物や窓ガラスから離れて、ダンゴムシになるんだよ」と教えましょう。
このときに、「クッションなどで頭を守る」「耐震性のある建物の中にいたら、じっとしてすぐに外へ飛び出さない」「危険なのでキッチンには近づかない」など自分の命を守る適切な行動も併せて教えるといいでしょう。
◆停電ごっこ
震災に限らず、台風や水害でも停電が起きます。突然真っ暗になると、子どもは怖くてパニックに陥ってしまいます。真っ暗になると危険ですので、停電時に非常灯として役立つLEDセンサーライトを廊下などに設置しておきましょう。
さらに、家で定期的に「停電ごっこ」を行うことをオススメします。家の電気を消して、子どもに“真っ暗体験”をさせてみましょう。真っ暗になったときに家の中でどう動くか、災害用のLEDライトをどうやってつけるかなどを実際に行ってみるといいでしょう。このときにライトの電池残量も併せて確認します。
実際に停電すると、真っ暗になるだけでなく自動水洗のトイレが使えない、冷蔵庫の中の食品が腐る、電気でガスのスイッチが入るお風呂のお湯は出ない…など予想外の事態が起きます。「停電したら、あれもこれも使えないよ、大変だね」と家族で話し合う機会にしてみてはどうでしょう。
今後、起きるといわれている首都直下型地震や南海トラフ地震のような巨大地震が発生すると、東日本大震災を上回る桁違いの被害が生じる可能性があると考えられています。非常時はだれでも気持ちが不安定になりますが、それを防ぐのは「防災の知識」です。正しい知識があれば、あわてることが少なくなります。普段から防災に関する知識を意識して蓄えていきましょう。
この記事の監修・執筆者
東日本大震災時に住んでいた千葉県浦安市で、液状化現象の被害を受けたことをきっかけに防災に取り組む。防災士、ファイナンシャルプランナー、整理収納アドバイザーなどの多様な資格を持ち、被災後の食、お金、片づけ、備蓄法など“主婦目線”“子育て目線”からのアドバイスが人気。
岡部梨恵子先生のWEBサイト https://okabekataduke.info/
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