「みんなが知らない幼児ワーク」。入社4年目の編集部Fが、幼児向けの本の制作を行う中で「なるほどそこまで考えられているのか…!」と感じた事例の一部をご紹介して参ります。
第2回 「動物の特徴」
学研の幼児ワークには、動物や食べ物など、かわいらしいイラストが豊富に使用されています。小さい子が形を認識しやすいよう、太い線ではっきりと描かれ、きれいな色で彩色されています。ときには二本足で立ち、洋服を着ている動物は、子どもたちにとっては「楽しいお友達」なのです。
ただし、第1回の「季節性」でもお伝えした通り、小さいうちから「本物」に触れることを大切にしています。
かわいく表現するためのデフォルメ(キャラクター性)と、本物としてのリアル感とで、どちらを優先するか揺れ動くことがしばしばありますが、最低限の特徴は、守らねばなりません。
今回は、編集部で起こった動物の挿絵にまつわる事件を3つご紹介します。
「この挿絵、間違っています!」 編集部で突如ブームになった「たぬきのしっぽ」事件
ある日のこと。先輩の編集部Yさんが幼児ワーク校正中に、図鑑をひっくり返し、ネットで検索を始めました。
「た、大変です。このたぬきの挿絵…間違っています!」 編集部全員がびっくり。
そこにはまんまる大きな、濃い茶色と薄い茶色のしま模様のしっぽをもった、たぬきさんが。
「たぬきのしっぽは しましま じゃありません…しましまなのは、
あらいぐまです」
↓あらいぐま ( 学研の図鑑LIVE 動物 p54より)
↓たぬき ( 学研の図鑑LIVE 動物 p45より)
編集部に衝撃が走りました。
たぬきのしっぽは先端が黒いだけ、というのが正しかったのです。
他の原稿をくまなくチェック! たぬき探しのはじまりです。
「うわ、この子しましまだ!」「これは大丈夫!」「しましま!」「しましま!」「大丈夫!」「これは…微妙に大丈夫!」
こうしてみんな、「たぬき」と言っても恥じない、かわいい子たちに変更されました。
コアラにしっぽはない? 「コアラのしっぽ」事件
コアラをイメージしてみてください。うさぎみたいに、小さな丸いしっぽがちょこんとある気がしませんか?
実はコアラのしっぽは退化して「ほぼ無い」のです。つまりあまり見えていないほうが、本物らしいことがわかりました。
↓はじめはしっぽがあったのですが、つるんとしたおしりに変更しました。
(↓ 学研の図鑑LIVE 動物 p201より)
木にとまっているときの「ゆび」の形は? 「いんこ・おうむ」事件。
※まず、「いんこ」と「おうむ」の違いをご存知ですか?
「おうむ」と練習する問題の挿絵として、「あれ、これは『いんこ』っぽい…」というものがあり調べました。
「おうむ」は頭にかんむりがあるものが多く、「いんこ」より地味な(色が少ない)ものが多いのです。
さて、本題です。こちらのイラストをご覧ください。「ゆび」部分です。
左下の鳥だけ、ゆびが3本だけ見えていることに気が付きましたか?
上の鳥が「おうむ」左下が「ぶんちょう」右下が「いんこ」をモチーフにしたイラストですかね。
鳥のゆびといえば、前3本、後ろ1本で枝につかまるイメージがありますよね。
一般的な鳥(ここでいう「ぶんしょう」)はそうですが、「いんこ」や「おうむ」は4本のゆびを前2後2にわけて枝につかまるそうです。
(対趾足(たいしそく)というそうです)
↓おうむ (学研の図鑑LIVE 鳥 p153より) 前から見えているゆびは2本ですね!
猛禽類(ふくろうなど)のゆびも独特。
なんと猛禽類は、場所・場面に合わせて、前2後2、前3後1、と1本のゆびを自由に動かして体勢を変えているのです…!
バランスをとるプロですね…。
この「いんこ・おうむ」、「たぬきのしっぽ」事件のときと同じように、木につかまっているときの見えている指の本数がちゃんと2本になっているか、くまなく探しました。(ちょくちょく修正いたしました。)
・・・
お察しの通り、編集部Fはこの2年と数ヶ月で理科的なことに大変詳しくなりました。
本の中の世界だから、言ってしまえばファンタジー。
だけれど、子どもたちには「本物」を知って欲しい。
だから挿絵もすべて一から疑ってかかって、
大勢の目(同編集チーム、外部校正者、弊社校閲部)で見ています。
直すか、直さないか…、あんばいが悩ましい微妙なときもあり、揺らぎながらなんとか判断しています。
・・・
さて、今回は「動物の特徴」についてお伝えしました。
次回はちょっと変わって、「学研の幼児ワーク こうさく」について、工作本ならではの、本のつくりの舞台裏をご紹介します。
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