幼稚園に入園すると、たくさんの同世代の子どもに出会います。そうなると、自然にほかの子とわが子を比べて一喜一憂してしまうものです。進級するとさらに「うちの子、ちゃんとみんなについていけるのかしら…」などと心配になってしまうことも。最終回は、子どもの成長に保護者がどう寄り添えばいいのか、段階ごとに幼児教育ジャーナリストの西東桂子先生に教えていただきました。
年少組の保護者は焦らず、おおらかに見守ることが大切
入園前には「うちの子はまだ○○ができない」と心配する事柄がいろいろあることでしょう。おむつがはずれていない、一人で着替えができない、ボタンを留められない、靴の脱ぎはきがうまくできない、(男児が)立っておしっこができない、などなど。仮にまだ上手ではないことがあっても心配には及びません。先生に手伝ってもらったり指導してもらったりしながら、少しずつ上達し,慣れていくから大丈夫です。
ただし、保護者の心得として、「園にお任せしっぱなし」ではなくて、おうちでもやってみる機会をつくるようにしましょう。園で学んできたやり方をおうちで時間をかけて復習するイメージです。必要以上に練習させたり、厳しくしかったりすることなく、上手にできたらおおいにほめて〝明日も登園するのが楽しみ〟という気持ちにさせてあげてください。
年少児は生まれ月やきょうだいの有無によって、個人差が大きいものです。焦らず、わが子の成長のペースを見守っていきましょう。
入園後は「お友だちと仲良く遊べているか」「仲のいいお友だちができたか」を非常に気にする保護者が多いですが、大人だって初対面の人といきなり親しくなったりしませんよね。4月、5月のご相談でよくあるのが「うちの子だけ砂場でひとりで遊んでいる。ほかの子は数人でかたまっているのに…」というもの。でも年少児は、いっしょに遊んでいるようでも実は、それぞれが好きなことをして自分の世界を満喫している「並行遊び」であることが少なくありません。砂場でかたまっているように見えたのも、たまたましゃがみ込んだ場所が近かっただけという場合も。集団の中にいても、マイペースにイマジネーションをふくらませ、ひとり遊びに熱中できるのは気持ちが安定している証拠。すばらしいことなので、園に慣れてきたのだと喜び、「早くお友だちと仲良くなりなさい」などとせかさないでください。入園後しばらくは自分のことで精いっぱいで、お友だちの名前を聞いてもひとりも出てこないことも多いですが、一生懸命園に慣れているところと理解しましょう。
1学期はまだお友だちとのかかわりは少なく、先生を中心点として、先生とそれぞれの子どもが線でつながっている状態です。お友だちと同じ遊びをする楽しさが少しずつわかってくるのは2学期に入ってから。たとえ2学期になったとしても、まだ自分の遊びのイメージを通そうとしてトラブルになることも。3学期くらいになると、じょじょに同じイメージを共有して遊べるようになっていきます。
年中組の子どもは人間関係の基礎を学ぶ時期
3歳ごろに芽生えた「自分はこうやりたい」というイメージがますますはっきりしてきて、さらに言葉の習得も進むため、自己主張によるトラブルが頻発します。でも感情がより豊かになり「楽しい」「うれしい」だけでなく「悲しい」「寂しい」「怖い」ということもわかってきますので、たとえば「自分がこのおもちゃを取っちゃったから、○○ちゃんに悲しい思いをさせちゃったかな。代わりにこれを貸してあげよう」などと相手を思いやれるようにもなってきます。
そして自己主張ばかりしていては仲良く遊べないことに気づき、ときには自分の感情を抑えて我慢し、クラスのみんなと楽しく活動したいと考えられるようになります。年中組の1年はまさに人間関係の基礎を学ぶ時期。なかには仲良しの友だちができる子もいます。
その1年間の間には強さやカッコよさにあこがれて相手にまとわりついて煙たがられる男の子や、好きなお友だちを囲い込もうとしてほかの子を遠ざけてしまう女の子など、さまざまな人間模様が見られますが、いずれ落ち着いていきますので心配しすぎないでください。
また、昆虫や折り紙など〝同好の士〟を見つけて仲良くなり、それまでよくいっしょに遊んでいたお友だちと離れることがありますが、仲たがいしているわけでも意地悪をしているわけでもないので、気にしすぎなくても大丈夫です。
文字への関心は十人十色。なかにはひらがな五十音を読める子も出てきますが、まだ興味を示さなくてもなんら問題ありませんから、ほかの子と比べて一喜一憂しないようにしましょう。子どもから「これ、なんて読むの?」と聞いてきたら答えるなど、文字への関心を大事にしてください。今がチャンスとばかり次々に教え込むような強制はよくありません。
運動面でも、足の速さや高いところからのジャンプに挑戦するかしないかなどの個人差が目につき始める時期ですが、「なんであなたはできない(遅い)の」と親が不用意に発言すると、子どもに苦手意識を刷り込むことにもなりかねません。年中組から年長組にかけてはとくに、運動を嫌いにさせないことが大切な時期。今できることをほめ、体を動かすのは楽しいという気持ちをもたせることを親の目標としましょう。
年長組の子どもは、知的にも情緒的にも成長する時期
年長組の1年間で子どもは知的にも情緒的にもめざましい成長を見せます。年度初めであっても園での最上級生になったという自覚があり、それが自信にもつながっていきます。「人の役に立ちたい」という気持ちが芽生え、年下の子どもたちへのお手伝いを進んでやりたがることも。年中児のお手伝いはまだ遊びの延長でしたが、年長になると役に立つという目的意識をきちんともち、自分なりに努力や工夫もしてがんばります。先生はその都度ほめて、ますます意欲を引き出します。このあたりは家庭でもまねしたいところですね。
年長児は、自分の考えをある程度頭の中でまとめてから話すことができるようになります。語彙(ごい)が増え、理解力も高まっているので、意見を出し合いながら子どもたちだけで遊びの計画を立て、ルールを決めて集団で楽しく遊べます。大きな行事では、クラス全員が力を合わせて協力する姿が見られ、いっしょにひとつのことを成し遂げる楽しさを体得し、ともに達成感を味わう喜びを知っていきます。お友だち同士で、だんだんお互いがわかり合えてきて、「これは○○ちゃんが得意だから任せよう」とか、「ここは僕(私)がやるよ」と表明したりして、うまく役割分担できるようになります。
相手の気持ちを受け入れたり、自分の気持ちを言葉で表現したりすることがますます上手になり、ケンカらしいケンカは格段に少なくなります。仮にトラブルが起きても当人同士で解決できるようになり、ときには周りにいる子が仲裁に入ることもあります。
ひらがなを読める子どもが多くなり、書くことにも関心を示す子がいて、そうでない場合は親が就学までになんとかしなければと焦りがちですが、無理やり教え込むことで学ぶ意欲をそぐようでは本末転倒です。多くの子どもは園の靴箱に書いてあるひらがなの自分の名前は読めるようになっていますから、そのレベルで大丈夫。親子で街を歩くときなどに、ひらがなの看板を見つけて、「あそこに『ひなたの〝ひ〟があるね』などと少しずつ興味関心を育てていきましょう。小学校入学直後の読み書きの力に差があっても、夏休みごろまでに横並びになるといわれています。
小学校の学習指導要領が2020年度から変更されました。 入学した途端に教科学習が始まる子どもの負担を軽減させようと、新たなカリキュラムがスタートしています。心配しすぎず、親子で入学を楽しみにしてください。
【まとめ】子どもの成長を見守る5つの心得
最後に、園生活の中で子どもの成長を見守るための保護者の心得を整理しましょう。
1)成長する時期は子どもによって異なる。わが子のそのときを楽しみに待つゆとりをもとう。
2)わが子とよその子を比べない。それよりも、昨日のわが子と今日のわが子を比べて、小さな成長のステップを見逃さずにほめよう。
3)「とにかくケンカはダメ」と言わない。お友だちとのトラブルは〝折り合いのつけ方〟を学ぶ貴重な機会だととらえよう。
4)「あの子と遊ぶな」「あの子と仲良くなれ」などと子どものお友だち関係に口を挟まない。お友だちづくりはわが子の力を信じよう。
5)心配なことがあれば、いつでも担任の先生に相談しよう。
「園生活で知っておきたいこと」を3回にわたってお届けしてきましたが、いかがでしたか? 保護者の方もお子さんも、思い出に残る素敵な園生活を送れますように…!
この記事の監修・執筆者
幼児教育ジャーナリスト・元育児情報月刊誌編集長。著書に『まるわかり幼稚園ライフ』(ポット出版)、『ママ友の距離感』(青春出版社)など。
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