【専門家がアドバイス】小学校入学準備に勉強よりも大切な力とは? 第1回「学習に参加する力」

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「小学校に入学するうちの子が、学習につまずかないか、勉強についていけるか?」
それは、小学校入学前の子どもを持つ親なら、誰もが心配に思うことではないでしょうか。

小学校の入学準備として少しでも子どもに勉強をさせたいという思いから、ひらがなや計算など小学校の勉強を先取りしたいと思う親御さんもいらっしゃいます。しかし、それよりまずは授業や学習に集中して取り組むための、勉強の基礎となる「学習に参加する力」を子どもに身につけさせることが重要です。

この記事では、小学校入学前に身につけておきたい「学習に参加する力」と、その力を育てる方法について、幼児・児童教育の専門家である野瀨愛未先生にお話をうかがいました。

お話/野瀨愛未先生(一般社団法人ワーキングメモリ教育推進協会 理事・上級インストラクター)

目次

勉強よりも大事! “学習に参加する力”

ひらがな、カタカナや漢字、数字の読み書きができる、たし算ができる、時計が読める、九九が言えるなど、小学校の内容を先取りしていることも、とても重要なことです。

しかし、遊びモードから勉強モードへの気持ちの切り替えができない周りの物事に気が散って授業に集中できない一時間も椅子にまっすぐな姿勢で座っていることができない、隣の席のお友だちに昨日見たテレビの話をしたり、自分の思うタイミングで話をしたりするなど、そもそも学習そのものに参加ができないことにより、つまずきや困難を抱える子どもも多く見られます。

学習・授業内容を理解・習得・活用するには、まずは「学習・授業などに参加する」ことが大前提となります。「学習・授業に参加する力」は、児童期の学校での学習が成り立つための土台となる大切な力なのです。

この「参加する力」は、次の3つの力で成立します。

(1)切り替え

これは、先を見通し、気持ちや行動を切り替える力を言います。
休み時間に外遊びに夢中になっていても、チャイムが鳴って時間になれば遊びはやめて教室に戻り、授業の準備をするなど次の目標を意識し行動に移せるといった力です。

(2)抑制

これは、自分の気持ちや行動を上手にコントロールして、目的から外れる思考や行動を抑制し、目的を達成しようとする力です。

(3)更新<ワーキングメモリ>

これは、目標・目的に向けて必要な情報を記憶し、考える力です。

これらは、脳の実行機能の3要素(切り替え、抑制、更新<ワーキングメモリ>)と呼ばれて、人間の知的活動を支え、文化を発展させてきた原動力となる力です。幼児は、遊びや生活を通して、これらの力を発達させていきます。それは児童期の学校での学習の基礎となります。

これらの力がうまく備わっていないと、年齢相当の脳の発達をしていても、授業・学習に参加することができず、学習につまずきや困難などが生じる場合があります。

「学習に参加する力」を育むために、どんなことを心がけたらいい?

「学習に参加する力」の発達には、親とのきずなや周りの大人との関わりが大切です。愛情に支えられたきずなを基盤にコミュニケーションが成立します。コミュニケーションは言語のみならず、身振りなどのやりとりも含まれます。

コミュニケーションを通して、親は子どもの発達を支えます。小さい子どもは、我慢できなかったり、自分をコントロールできなかったり、目標を見失ったりします。そのとき、そばで見守っている大人が子どもに語りかけ、目標を思い出させ、それに向けていっしょに頑張るように励ますことは大きな支えになります。子どもは、一人ではできないことも、大人といっしょならできることもあります。大人の語りかけが、徐々に、子どもの心の中で子ども自身の語りかけになり、子どもは、一人で我慢したり、自分をコントロールしたり、目標としたことをやりとげることができるようになります。

このような関係を通して、学校での学習の基礎となる力が発達していきます。親や周りの大人との関わりの中で、段階を踏んでできる経験・体験を増やしながら、「学習に参加する力」を伸ばしていくことができます。

今の社会では、子守代わりに、小さい子どもにスマホを渡し、動画を見せ、ゲームをさせておく親が増えています。動画やゲームの時間を過剰に子どもに与えることは、子どもと親とのコミュニケーションの機会を奪い、実行機能の発達を阻害することになります。

学習と密接に関連している「ワーキングメモリ」

近年、この「ワーキングメモリ」という脳の働きが、学習と密接に関連していることが広く知られるようになっています。「ワーキングメモリ」は、情報を覚えながら、考える脳の働きであり、人間が何か目標に向かうときに、必要な情報を覚えておきながら、どうしたら目標を達成できるのかを考える役割を果たしています。

この「ワーキングメモリ」の容量には個人差がありますが、親子のコミュニケーションや周りの大人との関わりなどを通して、「ワーキングメモリ」の発達を促すことができます。自分を抑制してやりとげる力と、我慢して先を見通す力は、学習に参加するために必要な力です。学習・授業に参加し、ワーキングメモリを働かせることで、国語や算数などの授業内容を理解・習得・活用し、知識を増やすことができるようになり、ワーキングメモリを益々発達させていきます。

よりよく「ワーキングメモリ」を働かせるには

「ワーキングメモリ」や児童期の学校での学習の基礎となる「参加する力」に大きく関っている「実行機能の働き」には、情動が強く影響することがわかっています。親子関係や周りの大人とのきずな(愛情)によって、子どもの心が安定し、「ワーキングメモリ」や「実行機能」が適切に働きます。

逆に言うと、子どもの心が不安定だと、本来年齢相当の能力をもっていても、ワーキングメモリや実行機能がうまく働かず、学習に参加することが難しくなり、学習につまずきが生じたり、問題行動を引き起こしたりする原因になってしまうのです。

ぜひ親子関係や周りの大人とのコミュニケーションを通して、きずな(愛情)を築き、子どもの心を安定させ、「ワーキングメモリ」や「実行機能」がしっかり働くような関係作りをしていきましょう。

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この記事の監修・執筆者

一般社団法人ワーキングメモリ教育推進協会 理事・上級インストラクター 野瀨 愛未

株式会社インフィニットマインド/同協会代表理事で広島大学大学院教授の湯澤正通先生が開発した「アセスメントHUCRoW」の分析レポートを国内で唯一担当し、その分析を通して「子供の個性」を見出す活動に従事している。現在、「ことばパーク」のカリキュラム制作にも携わる。

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