14歳2か月で史上最年少のプロ棋士になった藤井聡太さんの活躍で、全国のパパやママの注目を集めたのがモンテッソーリ教育。当時の「スーパー中学生」を育てたモンテッソーリ教育ってどんなもの?どんな効果があるの?家庭でもできるって本当?
イタリアで生まれ、100年以上の歴史をもつモンテッソーリ教育の精神やモンテッソーリ教育が目指す子ども像、今日からお家でもできることなどを紹介します。
日本モンテッソーリ教育綜合研究所附属「子どもの家」での風景/書籍『モンテッソーリの子育て 子どもの力を引きだす環境』p.18より
※「子どもの家」、書籍に関しては記事最後にご紹介します。
子育て中の親のスタンスは?
わが子に「幸せな人生を送ってほしい」と願うのは、どの親も同じ。
まずは人に愛される優しい子になってほしい。やっぱり勉強もできた方がいい。英語は早いうちから始めた方がいいし、スポーツや音楽、芸術方面の才能があるなら、それを伸ばしてあげたい…。
思いはどんどんふくらんでいきますが、「こうしてほしい」「これを習わせたい」と無理に押し付けすぎていませんか? あまり押し付けすぎてしまうと、子どもの発達のじゃまをしているかもしれません。
でも、我が子に「してほしい」ことはたくさんある。「押し付け」はしなくても「促し」くらいはしたいですよね。
「モンテッソーリ教育」の考え方は、子どもの中には生まれながらに「自分を育てる力」が存在している、というもの。
教えられるのではなく、やりたいこと、興味のあることにくり返し自分でトライする。集中して取り組む。そうすることで発達し、いろいろな能力を身につけていく……ということです。
いったいどんなやり方なんでしょう。
モンテッソーリ教育とは
そもそもモンテッソーリって?
モンテッソーリ教育は、20世紀のはじめにイタリア人のマリア・モンテッソーリが提唱した教育法です。
医学部を卒業したモンテッソーリは、発達に障害のある子どもや、その教員への指導と研究を始めました。
その後、学習環境が悪かったスラムの子どもたちを集めた「子どもの家」の責任者になります。
そこで彼女は、子どもに合わせたサイズの家具や教具、教具棚を用意し、教師は必要最低限の手助けと説明しかしない、という教育を行います。
子どもたちは毎日、自分のやりたい活動や遊びを自分で選び、納得するまでそれに没頭しました。
するとさまざまな問題を抱えていた子どもたちは自信をつけ、やがてすばらしい発達を見せたのです。
この方法は障害の無い子どもにも有効だと考え、独自の幼児教育法として確立していきました。今日までに世界140を超える国々で、モンテッソーリ教育を行う園が誕生しています。
モンテッソーリ教育が目指す子ども
「自立していて、有能で、責任感と思いやりがあり、一生を通して学び続ける姿勢をもった人間」
これがモンテッソーリ教育の目指す子ども像です。こういう子どもは、大人が何かを「やらせたり」「教えたり」しないことで育つと考えられています。
子どもは本来知りたがりで、学びたがり。
しかし自分が知りたいとは思っていないことを教えられ、覚えさせられてばかりいれば、やがて学ぶことが嫌いになってしまう。
子どもは「やりたい」と思ったことに自分から取り組み、やり切ることで、学ぶ楽しさを知る。そして、「もっと知りたい」「学びたい」と意欲を燃やす。
モンテッソーリ教育では、このような考えの元、子どもたちと向き合っているのですね。
日本モンテッソーリ教育綜合研究所附属「子どもの家」での風景/書籍『モンテッソーリで育つ!自分で考える子ども』p.47より
モンテッソーリ教育が生んだ有名人たち
藤井聡太さんには、幼稚園で来る日も来る日もハートのバッグを作り続けた、という有名なエピソードがあります。
やりたいことをつきつめる集中力、掘り下げていく探究心が、将棋の分野でも発揮され、その強さにつながっているのかもしれません。
世界に目を向ければ、大統領や今世紀をリードするビジネスの創業者たちの多くがモンテッソーリ教育を受けています。
- バラク・オバマ前米大統領
- マイクロソフト創業者 ビル・ゲイツ
- フェイスブック創業者 マーク・ザッカーバーグ
- グーグル共同創業者 ラリー・ページ、 セルゲイ・ブリン
- アマゾン創業者 ジェフ・べゾス
- ウィキペディア創業者 ジミー・ウェールズ
今日からおうちでできることは?
お手伝いをしてもらう
モンテッソーリ教育では、日常生活もだいじな教材の一つです。
特別なことをしなくても、毎日の生活が子どもの能力を発達させます。
「できた!」「人の役に立った!」という自信が育つのです。
そんなモンテッソーリ教育をおうちでもちょっとだけ、取り入れてみませんか?
例えば、何でも大人と同じようにやりたがる子どもには、たくさんのお手伝いをしてもらいましょう。
いつ?
子どもが自分でやりたがるとき、やりたそうにしているとき
何を?
靴をはく・脱ぐ・そろえる、服を着る・脱ぐ・たたむ、食卓の準備、トイレットペーパーの交換、花の水やり、そうじ(掃く、拭く)、食器洗いなど。
どんなふうに?
物の正しい扱い方からきちんと教える。
新しいもののやり方は、くりかえしくりかえし、やってみせる。
言葉でやり方を説明するのではく、お手本を見せて、やってみせることが大事。
忙しいときは、無理しないでください。自分に余裕があるときに、一緒に練習してみてくださいね。
アイロンをかける練習の様子(日本モンテッソーリ教育綜合研究所附属「子どもの家」にて)。アイロン台、アイロンの持ち方、置き方、触ってはいけないところを先生が説明します。/書籍『モンテッソーリの子育て 子どもの力を引きだす環境』p.64より
言葉がけを意識する
日ごろの「声掛け」を意識するところから、始めてみてもいいかもしれません。
モンテッソーリでタブーとされている大人の言動には、「禁止」「命令」「代行」「せきたて」があります。こんな言葉、ついつい口にしていませんか?
×子どもの発達をじゃまするNGワード
1.禁止
「だめ!」「いけません」「やめなさい」「うるさい」「静かにしなさい」
2.命令
「~しなさい」「~してはだめ」「それが終わったら次はこれね」
3.代行
「ママがやってあげる」「○○ちゃんにはまだ無理」
4.せきたて
「早くしなさい」「もうおしまい」「次はこれをして」
これらの言葉を封印するのは、家庭ではやや大変ですが、減らしてみることで、効果が出るのかもしれません。
○子どもを伸ばすおすすめワード
▼「どっちにする?」
人は選択肢を与えられ、自分で自分の環境をコントロールしているという意識をもつことで、課題への興味が湧き、根気が継続し、幸福感を得ることができるという研究があります。
「早く着替えなさい」ではなく「お着換えする?歯磨きを先にする?」あるいは「赤のTシャツと白のTシャツ、どっちにする?」といった聞き方は、イヤイヤ期の子どもにも効果的です。
▼「こうするんだよ」
「きちんと座りなさい」「ちゃんとしまいなさい」と言われても、子どもはどういうやり方が「きちんと」「ちゃんと」しているのか知りません。
手の洗い方、トイレの使い方、お風呂の入り方などの生活習慣やマナーは、指示やダメ出しではなく、正しいやり方をくり返し大人が示すとよいでしょう。
▼「こうすればいいんだよ」
子どもの行動には、間違いや失敗がつきもの。
でも子どもも自分の間違いや失敗には気づくので、「あーあ!ダメでしょう」と、わざわざ指摘する必要はありません。
ものが落ちたら拾う、水がこぼれたら雑巾でこんなふうに拭く、使った雑巾はこうして洗い、この場所に干すなど、失敗したときにはこうすればいい、ということをはっきりとわかりやすく示していきます。
自分の身の回りのことは自分ですること、たくさんのお手伝いをすること。
これは子どもの身体能力やさまざまな感覚を発達させるだけでなく、「わたしは役に立つ人間だ」という、自分に対する自信や信頼感を育てます。
そしてそのスキルこそが子どもの人生を支え、子どもが未来を切り開いていくときの大きな武器になるのです。
日本モンテッソーリ教育綜合研究所附属「子どもの家」での風景/書籍『モンテッソーリで育つ!自分で考える子ども』p.27より
モンテッソーリ教育をもっと深く知るために
今回は、モンテッソーリ教育のさわりをお伝えしました。いかがでしたか?
しっかり取り組んでみたいと思われる方は、下記の書籍をおすすめします。また「子どもの家」(東京)では、夏の体験教室募集もあります。ご興味のある方は下記をご覧ください。
参考書籍
モンテッソーリで育つ! 自分で考える子ども【電子書籍版】(左)
モンテッソーリの子育て おとなが子どもにできること【電子書籍版】(中)
モンテッソーリの子育て 子どもの力を引き出す環境【電子書籍版】(右)
この記事の監修・執筆者
モンテッソーリ教師養成機関として、通信教育や各種理論・実践講座の開講などを開催。また、幼児教育施設「子どもの家」も附属しており、1歳6か月前後の子どもと親向けの体験教室「たんぽぽクラス」や、小学生を対象とした「小学部」なども実施しています。
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