こんにちは。現役小学校教諭の舟山由美子です。
小学校に入ると、何事も自分で決めなければならない場面が多くなります。そうした経験が少なく、自分で決めるのが苦手なお子さんに対する接し方を考えたいと思います。
Q. ささいなことでも自分で決められません
小1の娘は、何をするにも自分で決められず、「ママ、どうしたらいいと思う?」と、私に聞いてきます。朝、家を出る前には「どの靴はいたらいい?」、遠足のおやつを買うときには「どれがいいと思う?」、夏休みの絵日記の宿題は「何を書いたらいい?」と、一事が万事です。
自分で考えられるように「どうすればいいと思う?」と、ヒントを与えてあげながらていねいに聞いても、「わかんな〜い!」と泣き出すこともあれば、靴などは「自分の好きなのにしなさい!」と叱ると、さっさと選べることも多いので、どうしたらいいのか困ってしまいます。
学校での様子を聞いてみると「じっくり考える傾向がある」ということなので、やはり自分で決めるのが苦手なのかなと思います。
幼稚園のときはあまり気にならなかったのですが、小学校に入ってから、よけいにひどくなったように思います。ただ、私自身あまり意識してなかったのですが、5歳で妹が生まれるまで娘はひとりっ子状態だったので、気づかないうちに子育てが甘くなっていたのかもしれないと反省しています。
いちいち私に確認せず、自分で物事を決められるようにするにはどうしたらいいと思われますか?
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A. 少ない選択肢から選ばせるようにしましょう
相談文を拝見していると、自分が受け持ったそれぞれのクラスでも、同じようなお子さんがいたな~と、その顔とともに思い出されました。結論からいうと、学年が上がるにつれて、ほとんど気にならなくなることだと思います。ただ、お子さんがそうなるには、それなりの理由もあると思うので、そのあたりのことも考えてみたいと思います。
自分のことを自分で決める、というのは「自立」の第一歩です。今ちょっと、この部分でつまずいている、しかもそれをお母さんが気づいておられる、というのは、意味があると思います。
お子さんは5歳までひとりっ子状態で、幼稚園のときはあまり気にならなかったけれど、小学校に入ってから決められないことが多くなったということですね。
ということは、このお子さんは、幼稚園時代は自分で何かを決める場面や必要性があまりなかったのでしょうね。「気づかないうちに子育てが甘くなっていたのかもしれない……」と書いておられますが、甘くなっていた、というより、お母さんが仕切っておられたので、子どもが決める必要性がなかったのかもしれませんね。
それに、幼稚園よりも小学校のほうが、自分で決めなければならない場面がたくさんあります。今この段階でそれに気づいたわけですから、改めて「自立」に向けてのステップをやり直せばいいだけだと思います。
例えば、朝の靴選びを想定してみましょう。2足だけ出しておいて、「さぁ、今日はどっちの靴を選びますか?」と楽しそうな声で尋ねます。「どれでもいいから選びなさい」ではいけません。必ず二者択一です。遠足のおやつも、3つの中から2つです。目的は「自分で選ぶ」ことだけですから、選んだらとりあえずOK!です。
忙しいときなどは、つい「自分でできるでしょ!」と言いたくなることもあります。そんなときは離乳食を始めたときのことを思い浮かべてください。最初はスプーンで、そうっと果汁をひとさじかふたさじを「あ~ん」と優しく口に入れますよね。それと同じです。心の中で「離乳食、離乳食……」と唱えましょう。
このとき、例えば靴選びなら、あえて毎日同じ靴から選ばせましょう。子どもがじれてきて、違う靴を選んだらしめたものです。その子は自分で選んだのですから。とにかく少ない選択肢の、しかもワンパターンなものから選ばせるのがポイントです。そのうち黙って自分で選んではいていくはずです。
これは持久戦です。お母さんが気になる部分(=この場合、子どもが自分で決められないこと)ばかりに注目して注意をすると、子どもはそれを意識して、かえってそのことができなくなるものです。ですから、お母さんは見かけの上では「気にしていない」そぶりをするのです。
選ばせた後にも気を配りましょう
それに、もしかするとお子さんがお母さんにあれやこれや決めてもらうのは、それをコミュニケーション手段にしている可能性もあります。選んでもらうのにかこつけて、甘えたい気持ちがあるのかもしれません。あるいは下の子が生まれたこともその原因のひとつと考えられます。ですからお母さんは、ときにユーモラスに、ときに淡々と対応するとよいと思います。
靴や、遠足のおやつなど、「大勢(たいせい)に影響のないもの(=お母さんにとっては、どうでもよいこと)」は、どんどん子どもに選ばせてよいと思います。
ただし、宿題の絵日記の題材選びは、また別物かもしれません。ただ選ぶだけでなく、そのあと書き表す作業があるからです。こういうことにはじっくりと取り組む習慣をつけたいものです。
いつものように題材選びに時間はかかってしまうかもしれませんが、少ない選択肢から選ぶパターンはそのままでも、その後は、お母さんがさりげなく絵と文の内容の方向性を示しながらも、子どもが自分で書き上げた達成感を得られるように導いてください。
いずれにしても、最初に書いたように、こうした傾向はいずれ気にならなくなります。何でもお母さんに尋ねていたのに、そのうち相談もしないで決めるようになります。それでも、子どもに聞かれたら、いつでも「お母さんは、こう思うよ」と答えられるように心の準備をしておくと、子どものほうも安定すると思います。
この記事の監修・執筆者
ふなやま ゆみこ/東京都の現役小学校教諭。
長年の小学生の指導経験に基づいた、
教育・子育てアドバイスに定評がある。
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