【将来の仕事にも役立つ!?】日本におけるSTEAM教育の実践例[専門家監修]

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これからの時代に必要とされる、技術を革新する力や創造力を育む教育として注目が集まる「STEAM(スティーム)教育」。
STEAMはScience(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学・ものづくり)、Art(教養・芸術)、Mathematics(数学)の頭文字からきています。

STEAM教育に関する研究や小中学校へ向けた授業案づくりを行う山内祐平先生(東京大学大学院情報学環 学環長)に、STEAM教育の特徴や実践例についてうかがいました。2回にわたってご紹介します。

2回目となる今回のテーマは「日本におけるSTEAM教育」「STEAM教育の授業」です。

文/こそだてまっぷ編集部

目次

日本のSTEAM教育の現状は?

——日本では、STEAM教育はどのように位置づけられていますか?

新学習指導要領における「STEAM教育」

STEAM教育は発祥の地であるアメリカをはじめ、韓国や中国でも導入されており、世界的なブームになっています。

日本では、2020年度から順次導入されている小中学校・高校の新しい学習指導要領で、「科学・技術分野の経済的成長や革新・創造に特化した人材の育成」や「STEAM分野が複雑に関係する現代社会に生きる市民の育成」を目的としたSTEAM教育の推進が提言されたものの、具体的なカリキュラムなどは定められていません。
学習指導要領における教科学習とSTEAM教育をどのように対応させてカリキュラムに組み込んでいくか、また、どのように評価するかなどが課題となっています。

前回のお話≫【世界的なブーム、STEAM教育って何?】どんな学びなの?[専門家監修]

経済産業省の「未来の教室」

日本でSTEAM教育に力を入れているのは経済産業省です。
経済産業省は、急速に技術変革が進む社会に対応するため、新学習指導要領のもと、新しい学び方を実証する『「未来の教室」ビジョン』の事業を進めています。
『「未来の教室」ビジョン』では、「学びのSTEAM化」が提言されています。

「学びのSTEAM化」とは、(中略)文理を問わず教科知識や専門知識を習得すること(=「知る」)と、探究・プロジェクト型学習(PBL)の中で知識に横串を刺し、創造的・論理的に思考し、未知の課題やその解決策を見出すこと(=「創る」)とが循環する学びを実現することである。
出典:『「未来の教室」ビジョン(2019年6月)』(経済産業省)(https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/mirai_kyoshitsu/pdf/20190625_report.pdf)

STEAM教育の授業とは?

——山内先生がSTEAM教育の授業案をつくるときに大切にしていることを教えてください。

子どもたちが興味をもって取り組めるテーマを

前回の記事(【世界的なブーム、STEAM教育って何?】どんな学びなの?[専門家監修])でお話ししたように、STEAM教育の実践は「A(Art)」のとらえ方によって目的や内容が異なります。

小中学校・高校へ向けた授業案づくりを行っていますが、その中で私が大切にしていることは次のようなことです。
ひとつは、子どもたちがおもしろいと感じ、興味をもって取り組めるテーマであること。
もうひとつは、子どもたちの将来の仕事につながるような、仕事のシミュレーションになりそうなプロジェクト学習(課題解決型学習)であることです。
さらに、複数の教科を横断して学びながらも、それぞれの教科の学習内容がしっかり学べる案かどうかを大切にしています。

学校やワークショップでの実践例

「歩行者と自動運転車のコミュニケーション」をテーマにした授業案を紹介します。
対象は小学5年生で、社会の交通、自動車技術や生産技術の分野と、プログラミング教育を扱います。

[歩行者と自動運転車のコミュニケーション]
「自動車の自動運転が可能になったとき、歩行者と自動運転車の間になんらかのコミュニケーションがないと危険なのではないか」ということを前提に、自動運転車の生産の工夫などを学び、歩行者とのコミュニケーションのために自動運転車にあったほうがよい機能を考え、車型のロボットキットを使って実際にプログラミングします。
グループ学習やプレゼンテーション、プログラミングと実装などを取り入れながら、5回ほどの授業で学びます。
・自動車の自動運転、プログラミング…Technology(技術)
・歩行者と自動運転車のコミュニケーション…Art(教養・芸術)
・自動運転車の生産の工夫…Engineering(工学・ものづくり)

これは、将来的に起きるであろう課題であり、実際の仕事にもつながるテーマです。新学習指導要領に基づいた社会科の単元の学習(我が国の工業生産)と、プログラミング技術の基本と応用をそれぞれ専門的に学ぶことを大切にしながら、応用的な課題に取り組むようにしている点がSTEAM教育の大きな特徴です。

STEAM教育が日本で知られるようになってからまだ日が浅く、学校教育の場での実践が広がるのもこれからです。
保護者のかたには、まずSTEAM教育の歴史的な成り立ちを知り、正しく理解してほしいと思います。
STEAM教育そのものではないかもしれませんが、STEAM教育につながるような学びを提供する場もあります。Science(科学)とTechnology(技術)の要素を組み合わせたワークショップを行う科学館や博物館、Technology(技術)とArt(教養・芸術)の要素を取り入れたワークショップを行う団体や社会教育施設などもあるので、ぜひお子さんと足を運んでみてください。

〈参照〉
未来の教室 ~learning innovation~
https://www.learning-innovation.go.jp/

この記事の監修・執筆者

東京大学大学院情報学環 学環長 山内 祐平

愛媛県生まれ。大阪大学大学院人間科学研究科博士前期課程修了後、大阪大学助手、茨城大学助教授、東京大学大学院情報学環准教授、教授を歴任。研究のテーマは「学習環境のイノベーション」。著書に『学習環境のイノベーション』(東京大学出版会 2020年)、『ワークショップデザイン論 ― 創ることで学ぶ』(共著・慶応義塾大学出版会 2013年)など。

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