【世界的なブーム、STEAM教育って何?】どんな学びなの?[専門家監修]

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【世界的なブーム、STEAM教育って何?】どんな学びなの?[専門家監修]

これからの時代に必要とされる、技術を革新する力や創造力を育む教育として注目が集まる「STEAM(スティーム)教育」。
「名前は聞いたことがあるけれど、具体的な内容はわからない」という保護者のかたも多いかもしれません。

STEAM教育に関する研究や小中学校へ向けた授業案づくりを行う山内祐平先生(東京大学大学院情報学環 学環長)に、STEAM教育の特徴や実践例についてうかがいました。2回にわたってご紹介します。

今回のテーマは「STEAM教育とはどんな学びか」です。

文/こそだてまっぷ編集部

目次

STEM教育からSTEAM教育へ

——新しい教育としてSTEAM教育が話題になっています。どのような教育なのでしょうか?

教科を超えた学び

STEAM教育を知るために、まずそのもととなっている「STEM(ステム)教育」について知ってほしいと思います。
STEM教育は、科学技術を発展させる人材の育成を目指す教育です。
Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学・ものづくり)、Mathematics(数学)を個別に学ぶだけではなく、現実的な問題解決のために、学問分野を超えて横断的に学び、知識を総動員して使えるようにするというものです。

1990年代から2000年代にかけて、アメリカを中心にSTEM教育の必要性が議論され、実践が続いています。日本でも、現在の小中学生の保護者の世代は「理数教育」という表現で、その必要性についてさまざまなところで耳にしてきたのではないでしょうか。

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STEAM教育の「A」は何か?

STEM教育に「A(Art)」を取り入れて、学びの幅を広げるのが「STEAM教育」です。
この「A(Art)」はなんだと思いますか?

実は、この「A(Art)」をどうとらえるかで、STEAM教育は2つの大きな流れに分かれるのです。

ひとつは「A(Art)」を「リベラルアーツ(教養)」とするグループです。理数系教科で構成されるSTEM教育に人文社会系や芸術などの教養を取り入れて、幅広く知識を使えるように拡張することを目指します。
もうひとつは「A(Art)」を「アート(芸術)」とするグループです。イノベーション(新しい価値を生み出して変革をもたらすこと)を起こすためには、STEM教育にクリエイティブな芸術・デザインを取り入れることが必要だと考えます。

2つのグループ、どちらが正しいかということではありません。STEAM教育に携わる人たちが、それぞれの定義にもとづいてさまざまに実践をしているのが現状です。

「A(Art)」が入ると何が変わる?

「安全で便利な自動車を作る」というテーマの授業を一例に考えてみましょう。

STEM教育では、Mathematics(数学)の知識を使って交通事故の統計資料を読み取り、自動車が安全に走行するための課題を考えます。課題を解決する新しい機能をTechnology(技術)の知識を活用しながら探究し、実際にどのような自動車を作るかEngineering(工学・ものづくり)の知識をもとに考案します。

STEAM教育にはArt(教養・芸術)が含まれるので、さらに歩行者とのコミュニケーションをどのように取るかというArt(教養)、より安全面を強化できるデザインはあるかというArt(芸術)など、考える要素が加わります。

理数系教科に「A(Art)」の要素を入れることによって、STEAM教育のテーマは、社会的な課題をテクノロジーを使って解決するようなものから、メディアやテクノロジーを使った新しい芸術作品の創造まで、幅広く設定できるようになったといえるでしょう。

STEAM教育実践

STEAM教育ならではのおもしろさ

——STEAM教育の学びの特徴を教えてください。

それぞれの教科の専門性を大切に

STEAM教育は、頭文字が入るそれぞれの教科の専門性も大事にするという前提があります。
つまり、各教科の知識を総動員して応用的な課題に取り組むと同時に、各教科の専門的な知識も深まるように構成されているのが特徴です。

たとえば、「電気を節約する暮らし」をテーマにするとしましょう。電気の利用量を減らすためのプログラムを作って電気製品に組み込み、電気を効率よく利用することで火力発電などによる環境汚染を防ぐという案を考えたとします。その過程で、電気の利用、環境汚染防止の方法、プログラミングの技術など、それぞれの知識が深まり、応用的な技能も身につくということです。

「どうして勉強するの?」の答えのひとつに

保護者のかたは、お子さんに「どうして勉強しなくてはいけないの?」と聞かれることがあるかもしれません。その答えのひとつをSTEAM教育で体感できると思います。
STEAM教育では、現実的な問題解決のために学んだ知識を活用します。教科の勉強で学んだ知識を実際の問題解決に役立てるシミュレーションをするという面もあるので、「勉強する意味」を体験的に理解できるでしょう。

STEAM教育は、その発祥の地であるアメリカをはじめ、韓国や中国でも導入されており、世界的なブームになっています。
次回は「日本におけるSTEAM教育」や「STEAM教育の授業」についてご紹介します。

この記事の監修・執筆者

東京大学大学院情報学環 学環長 山内 祐平

愛媛県生まれ。大阪大学大学院人間科学研究科博士前期課程修了後、大阪大学助手、茨城大学助教授、東京大学大学院情報学環准教授、教授を歴任。研究のテーマは「学習環境のイノベーション」。著書に『学習環境のイノベーション』(東京大学出版会 2020年)、『ワークショップデザイン論 ― 創ることで学ぶ』(共著・慶応義塾大学出版会 2013年)など。

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