「百ます計算」「早寝早起き朝5分ドリル」「徹底反復」……小学生の基礎学習を支えてきたドリルシリーズの著者・陰山英男先生が、「これからの学習は『家庭』が担うしかありません」と断言。「おうち学習」を提唱しています。
その真意とは? お話を伺いました。
子どもの学力に不安を抱く親が増えてきた
「学校の宿題が少ない気がする」
「ちゃんと理解しているのかわからない」
「このままで大丈夫だろうか」
学校の指導内容、それに伴う子どもの学力について、私のもとに心配の声が寄せられるようになってきたのは、2017年~2019年頃でした。
学習指導要領の改訂で授業内容は増えているのに、基礎学力が身についていないように感じる保護者が多くなってきたようです。
実際、小学校で勉強する内容の難易度は上がっています。
階級、最頻値、ドットプロット。
これらは今の小学校6年生の算数で学習する言葉なのですが、子どもにとって決して簡単と言えない概念を小学校で勉強するようになっています。
計算にしても、十数年前は単純な分数計算ができればよかったものが、今は分数と小数が混じり、それを( ) でくくって計算しないといけません。
今までのような学習ではついて行けないということを考えておかないといけないのです。
「もう塾に頼るしかない」という結論を出す家庭が多くなるかもしれません。
しかし塾の費用は高く、その捻出のために家計のやりくりをするのも大変です。親の経済格差が教育格差につながってしまうおそれもあります。
学力を上げるにはそれなりの方法がある
一方、私のTwitterには私が驚くような学力向上をしている親子の声が寄せられています。
『4年生で中受のために塾通いです。
塾の宿題量が半端ないので、 早ね早おき朝5分ドリルに助けられてます。
国語と社会(地理分野)がヤバかったのですが、朝5分ドリル読解・社会をやり始めて安定してきました。
毎日負担なく積み重ねられる事がいかにありがたいか。
これからもよろしくお願いします!』
ほかにも、家庭学習で成績を上げた子どもの話は数えきれません。
Twitterで学習指導した小学3年生は、数か月で割り算のプリントがらくらく解けるようになりました。小学校入学当初は学習面でかなり心配のあった子です。
コロナ休校を機に家庭学習に取り組み始め、約1年ほどで大手塾の算数偏差値が64に達した子どももいます。低学年の頃には計算問題しかできなかった4年生です。
私が学校で指導した子どもの中には、低学年の頃は授業についていけなかったのに、小学校の卒業時にはトップクラスの成績になった子も多くいます。
このように、きちんとした方法で学習すれば、勉強が苦手な子はできるように、もともとできる子はよりできるようになるのです。
子どもの学力は「おうち」で伸ばせる
学校は多くの課題を抱えています。教師の数は足りず、PTAの在り方も問われており、不登校の子どもが増えています。
こうなると、小学生の学力は、家庭、つまり「おうち」が担う必要が出てきているといえます。 わが子に合った方法で学力を身につける戦略を立てれば、家庭は塾を超えることができるのです。
その戦略と具体的な方法を書籍にまとめたのが、『陰山流 新・おうち学習戦略』です。
本書は、年中・年長の幼児から小学校6年生までの子どもを持つ親に向けて、家庭学習の方法、教材の使い方などを紹介していきます。
小学校は一生モノの学力を固める大切な時期です。本書でわが家の目標と、そこに至る戦略を立てましょう。
基本の戦略1:家での予習を「学習の中心」にする
私は、小学生の家庭学習は、学校で授業を受けた後、「百ます計算」と「漢字の徹底反復」以外は復習をしっかりしておけばよいと、以前は考えていました。
しかし、学校に学力向上を期待できなくなった現在、学習のベースを「おうち」にすると同時に、変えなければならないことが出てきました。
それは、予習を重視することです。
要するに、これまでの復習主義から予習主義に転換せざるを得なくなったわけです。
もっと言えば、「予習」はまだ学校の授業をベースにした言葉です。つまり、授業の前に勉強しておく、というイメージがあります。
しかし現在のベースは学校ではなく「おうち」にあるとすれば、おうちで行う予習が「学習の中心」です。そして、学校の授業がおうち学習の復習、または応用学習という位置付けになります。
このような学習を、私は「追い越し学習」と名付けました。
基本の戦略2:春休みからゴールデンウィークを目標に
具体的には1年分の学習内容を遅くとも夏休みまで、できればゴールデンウィークまでに終えることです。初めて耳にする人は驚くでしょうが、十分可能です。
ポイントは春休みから新学年の勉強を始めること。そうするとゴールデンウィーク前後には1年分の学習をざっと終えることができます。
私はかつて、春休みは学年の変わり目なのでゆっくりしていいと思っていました。学校の宿題もなかったので、独自の復習でよかったのです。
ところが学習量が増えた現在は、これでは間に合いません。まずは春休みからゴールデンウィークを目標にして、1年分の算数と漢字を済ませてしまいます。
これは十分に可能なことです。
教科書のボリュームが増えても、絶対に身につけなければならないこと、また中学校や高校につなげるために習熟していなければならない単元は、そう多くないからです。大切な部分をピックアップして学習すれば、1年分の基礎を2~3か月で学ぶことができます。
「基礎」を習得したら、「盤石な基礎」へと固め、さらに「超強力な基礎」へ と仕上げていきます。
多くの人は基礎の次は応用と考えますが、それでは学力は伸びません。基礎といっても一応やった程度のものでは使いものになりません。
たとえば百ます計算でやっていることは1年生の内容ですが、最低でも2分以内でできなければ高学年の算数でつまずきます。さらに、100秒以内になるように繰り返し学習し、「超強力な基礎」にすることが大切なのです。
詳しくは書籍をぜひご覧ください。
『陰山流 新・おうち学習戦略』内容
序章 これからの時代、子どもの学習を〝おうち〟が担う理由
第1章 おうち学習成功のための環境づくり4つの鉄則
第2章 戦略を持つ保護者は強い~おうち学習計画の立て方
第3章 音読、百ます計算、漢字は勉強の筋トレ~おうち学習の具体的マニュアル
第4章 おうち学習を成功に導くための「基礎固め」のコツ
第5章 子どもの実り豊かな人生のために
巻末には付録のダイアリーも!
巻末には、綴じ込みの付録「毎日コツコツ・書き込み式 勉強ダイアリー」がついています。百ます計算、漢字、音読、その他の項目で「今日やったこと」「今日できたこと」をコツコツと書き込むことで、少しずつ自信が積み上げ式で付いてくるノート式ダイアリーです。ぜひ1か月トライしてみてください。
商品概要
この記事の監修・執筆者
かげやま ひでお/岡山大学法学部卒業後、教職に就く。兵庫県朝来町立(現・朝来市立)山口小学校在職時に反復学習で基礎学力の向上を目指す「隂山メソッド」を確立し、脚光を浴びる。2003年広島県尾道市立土堂小学校長に全国公募により就任。2006年立命館大学教授及び立命館小学校副校長を経て、現在、隂山ラボ代表。教育クリエイターとして、全国各地で学力向上アドバイザーを務め、講演会活動を行っている。『本当の学力をつける本』(文藝春秋)、『学校を変える15分 常識を破れば子どもは伸びる』(中村堂)ほか、著書多数。
隂山メソッドを教材化したドリルは「徹底反復シリーズ」(小学館)、「早ね早おき朝5分ドリルシリーズ」(Gakken)など、累計1500万部に及ぶ。
隂山英男HP
http://kageyamahideo.com/
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