【専門家監修】子どもの成長の土台をつくる良質な睡眠環境とは?

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皆さんはこの夏、よく眠れていますか?  食事、運動、睡眠は、健やかで元気な毎日を送るために欠かせない要素ですが、なかでもついおろそかになりがちなのが「睡眠」です。睡眠をより良質にし、子どものよりよい発達をうながし、元気で前向きな活動を支える土台をつくりましょう。

連載2回目となる今回は、よりよい睡眠のためのスケジューリング、環境づくりについて、子どもの疲労・脳科学が専門の理化学研究所・大阪公立大学水野敬先生にお伺いしました。

目次

睡眠時間を確保するためには保護者のスケジューリングが鍵!

予定を逆算し、睡眠時間を割り出してみよう

子どもに必要な睡眠時間は3~5歳で11~13時間6~12歳で10~11時間です。この睡眠時間を確保するには、保護者の意識改革が必要です。「とても無理!」と投げ出さずに、家族みんなの健康のためにも、まずは動き出してみましょう。

一例として、子どもに10時間の睡眠時間を確保させたい場合で考えてみましょう。子どもが朝7時に起きるなら夜9時には就寝する必要があります。この、「明日は〇時に起きるから、必ず●時には寝よう」という意識づけがまずは大切です。

さらに「●時に寝るためには△時に食事とお風呂を済ませる」「そのためには□時には帰宅する」「そのためには…」と、スケジュールを逆算して考えるクセをつけるようにしましょう。必ずしも時間とおりにいくわけではありませんが、「家に帰るのが30分遅れると、寝る時間が30分ずれてしまう」と意識できるようになれば、親も子どもも行動が少しずつ変わってくるはずです。

睡眠のためのスケジュールをいっしょに考えるうちに、子どもも段取りする力がつくだけでなく、生活のなかでどこかに削れる部分はないかと考えられるようになり、自制心にもつながります。こうしたよりよい眠りのための行動が習慣づけば、これから先、高学年、中学生になったときの学習意欲にもよい影響があるはずです。

まずは睡眠時間を数字として把握することから始めてみましょう。今、子どもは何時間眠れているのか、何時間眠らせたいのか、そのための理想的なスケジュールを1週間分でよいので、お子さんといっしょに考えてください。夏休みは生活リズムが崩れがちですが、逆に立て直すチャンスでもあります。2学期によいスタートを切るためにも生活リズムを整えましょう。

子どもとの積極的なコミュニケーションを意識しよう

しかられたりクヨクヨ悩んでいるときに眠りづらかった経験は、だれしもあるもの。このように、睡眠とコミュニケーションには深い関係があります。そのため、子どもが夜、眠くなるためには「早く寝なさい!」としかることではなく、安心感が必要です

ライフスタイルが変化し、親と子の対話も減っているように思います。家庭では親のほうから積極的に子どもとコミュニケーションをとることも大切です。

できれば、夕食時はテレビを消して、家族全員がそろって会話を楽しみながら食事をするようにしましょう。親と子が向かい合って一日の話をし、子どもを認めて安心感を高める時間を大切にすることで、自分は受容されていると感じて子どもの気持ちは安定し、安心して眠れるようになるのです

家族がしっかりとつながり、関わり合うコミュニケーションを積極的に取ることは、睡眠以外のことにもよい変化があるはずです。

良質な睡眠をうながす眠りの環境とは?

よい眠りのためにできる環境設定

よい眠りのための環境づくりについて、具体的に紹介します。夜間は連続して朝まで一度も起きない、まとまった睡眠が理想です。途中で起きてしまう細切れ睡眠にならないよう、環境設定を見直してみましょう。

●室温・湿度

室温は26~28℃湿度は50~60%に保つようエアコンを上手に利用しましょう。タイマー機能を活用し、朝までぐっすり眠れるよう工夫してください。

●光

遮光カーテンを使い、光を遮断して眠るのが理想です。朝はカーテンをあけて光をあび、脳が刺激を受けることでスッキリ起きることができます。

また、前回のご紹介したように、寝る1~2時間前にはテレビやスマホの使用は控え、ブルーライトをあびないようにしましょう。寝る前には部屋の照明を少し暗くしておくのもオススメです。

光は脳に刺激となるため、眠るときは部屋の灯りを消しましょう。親が子どものとなりでスマホを見ている、なんてことはないようにご注意を!

●音

子どもがリラックスして眠りやすいようであれば、眠くなるようなオルゴールや童謡を小さく流すのもOKですが、静かな環境がいちばんです。お子さんの好みに合わせましょう。

隣の部屋からテレビやラジオの音が聞こえることもないように配慮を。

●絵本

眠る前に絵本を読み聞かせするのもオススメです。親のやさしい読み口で、子どもは心地よく眠りにつくことができます。1冊読んだら灯りを消す、という入眠儀式を習慣にできれば、自然に眠りに入れてリズムがつくれます。内容が怖かったり、過度に興奮するような絵本は避けましょう。

子どもの眠りについての疑問を解決しよう

そのほか、眠りに関する疑問にお答えします。

Q 休日はゆっくりと遅くまで寝ていてもOK?

A 平日と休日の睡眠時間の差はできるだけ少なく

平日の疲れを休日にとってリカバーすることも大切ですが、就寝時間と起床時間は毎日同じなのが理想です。平日と休日の差が大きいと、体にも負担となってしまいます。毎日の生活リズムを整えることが、よい睡眠、よい活動、よい発達へとつながっていきます

Q 昼寝をすると、夜の睡眠に影響がありますか?

A 眠りたいという欲求にあわせ、長くなりすぎないよう調整を

疲れているときに昼寝をしたいなら、もちろんその欲求を満たしてあげてください。ただし昼寝しすぎると夜眠れなくなるため、様子を見ながら1時間程度で起こしてあげましょう。

Q 旅行や外出などで、寝る時間がずれてしまったときは?

A 少しずつ通常の睡眠スケジュールに戻していきましょう

楽しい旅行などではタイムスケジュールは柔軟に考えればよいと思いますが、疲れが残らないように十分な休息を意識しましょう。疲れているときは睡眠時間を長くし、少しずつ通常に戻すようにすると、体に負担がかからずオススメ。そのためにも「通常の睡眠スケジュール」を意識し、習慣づけておくことが大切なのです。


規則正しい睡眠は免疫力がアップし、学習意欲やコミュニケーション能力を向上させ、活動的な生活につながります。家族みんなの睡眠リズム、生活リズムを整えることは、大人にとっては働き方やライフスタイルを整えることにもなるかもしれません。

毎日の活動の大きな基盤となる睡眠をよりよいものにし、充実した日々にするためにも、夏の間に生活スタイルを見つめ直してみましょう!

この記事の監修・執筆者

理化学研究所生命機能科学研究センター・上級研究員 水野 敬

理化学研究所生命機能科学研究センター 健康・病態科学研究チーム・上級研究員。大阪公立大学健康科学イノベーションセンター副所長。疲労科学と脳神経科学に基づき、子どもたちの慢性疲労、睡眠、学習意欲、脳の機能と発達および家族との関わり、と幅広い観点から子どもの健康科学研究を推進している。共著に『疲労と回復の科学』(日刊工業新聞社、2018年)、『おいしく食べて疲れをとる』(オフィスエル、2016年)など。

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