幼児期の子どもは、できるだけ一人にしないよう、親は気をつけるものです。が、ちょっとした隙に姿を見失ったり、知らない人としゃべっていたりして、ドキッとした経験は誰しもあるでしょう。
また、一年生になると、子どもだけで登下校したり、友だちの家に遊びに行ったりと行動範囲が広がり、親の目がとどかない場面も増えてきます。
親が「防犯対策」をきちんと考えるとともに、子ども自身にも「安全教育」をしていくことが大切です。
幼児期に「自分の身を守る」ことを、どう教えたらよいのか、危機管理教育研究所の国崎信江さんにうかがいました。
監修:危機管理教育研究所 代表 国崎 信江
イラスト:ユキミ
子どもを「一人にしない」が大前提!家族で安全ルールを作る
子どもを危険な目にあわせないためには、
子どもが「一人きりになる場面」をできるだけ作らない
子ども自身にも「自分の身を守る」意識をもたせる
ことが重要です。
そのためには、家族構成やライフスタイルに合わせたわが家の安全ルールを作っておくとよいでしょう。基本的には、
- 子どもが一人にならないためのルール
- 万が一、一人になってしまったときの約束
の両方が必要です。
1.(ルール)一人になる場所には行かない!
- トイレ(必ず親と一緒に行く)
- 人のいない場所(スーパーの階段や人通りの少ない道など)
- 人が隠れられそうな物や壁などが多い場所(公園や駐車場など)
2.(約束)一人になってしまったら、守ってね
- 迷子になったら、その場を動かずに、大きな声でママ(パパ)を呼ぶ
- 知らない人が「一緒に探してあげる」と言っても、ついていかない
- 近づいてくる車があったら、離れる
- 家族以外の人と話すときは、手を伸ばしても届かないくらい離れて話す
- 留守番のときに、玄関のチャイムや電話が鳴っても出ない
もし、一人で歩かなければいけない場合は、誰かに話しかけられないように早足で歩くこと。
そして、時々振り向いて、変な車や人がついて来ていないかどうかを確認することも、あわせて伝えましょう。
家庭ごとに、家族構成や周りの環境なども違います。
普段、どういう場所に出かけるのか、どういう危険が考えられるのか、などを考慮して、わが家の安全ルールを作っていきましょう。
ただ、あまり細かいルールをたくさん作ってしまうと、大事な項目が見落とされてしまうことも。無理のない範囲で考えましょう。
「知らない人」「知らない人の車」は、実は子どもにはわかりにくい
子どもに伝える際に気をつけたいのが、「大人と子どもには言葉や理解度に違いがある」という点です。
言葉選びと、伝え方に気をつけないと、親が思うレベルで、子どもは身を守れていないかも?
「知らない人」ってどんな人?
親が「知らない人とは話さない」と伝えたとき、子どもと親の「知らない人」という認識には、ズレがあるかもしれません。
例えば、よく散歩に出かける公園で、犬の散歩をしているおじさん。親からすれば「知らない人」ですが、子どもは「よく見る人だから、知っている人」と思っているかもしれません。
一度、知っている人の名前を挙げながら、親子で確認してみるとよいでしょう。
また、子ども自身は知らなくても、相手が何らかの理由で子どもの名前を知っていたり、調べていたりする可能性も。
「○○くん!」と名前で呼びかけられたりすると、子どもは「知っている人だ!」と思い込んでしまう恐れがあります。
以下のような人は、子どもが気を許してしまいがち。注意が必要です。
!注意点
- 制服を着た人
- 犬などのペットを連れている人
- 母親と似た年恰好の女性
- 若い女性
- 祖父母くらいの人
- 自分より年上の子ども
- 通園時にいつも会う人
- 同じマンションに住んでいる人…など。
「知らない人の車に乗らない」という言い方も、子どもにはわかりにくいものです。
むしろ、誰の車になら乗っていいのか、を伝えたほうがよいかもしれません。
例えば、両親と祖父母だけ、などと具体的に名前を挙げれば、子どもも判断しやすいでしょう。
困っている人がいたら、どうしたらいいの?
「人には親切にしましょう」と教わっている子どもなら、困っていそうな人から話しかけられたら、なんとかしようと思ってしまうかもしれません。
でも、大人は本当に困っている時には、子どもには助けを求めないものです。
だから、「何か頼まれてもお話ししないで、その人から離れてもいいんだよ」と伝えましょう。
子どもの親切は、自分の家族やお友だちにできれば十分。
知らない人の困りごとは、別の大人に任せても不親切にはならない、と話せば、お子さんも安心でしょう。
子どもが「安全ルール」を理解しやすくなるポイント
「わが家の安全ルール」を作り、子どもに身につけさせていくにはいくつかのポイントがあります。
ポイント1)実際に体を動かしながら
例えば外を歩きながら「一人で歩くときはこれくらいの早足がいいね」「時々、振り向いてね」などと、実際に体を動かしながら伝える方法は、子どもにわかりやすくて◎。
ポイント2)なぜ、そのルールが必要か
ルールを親が一方的に決めて「この通りにしなさい」と押しつけるのは、あまり意味がありません。
なぜそのルールが必要なのか、その理由を説明しましょう。
意味がわかってはじめて、そうした行動を主体的にとることができるようになります。
ポイント3)親の都合でルールを変えない
「今日は時間がないから…」などと、親の都合で勝手にルールを変えずに、常に一貫した態度でいることも大事。子どもは、親の様子をよく見ているものです。
ポイント4)危険や恐怖を強調し過ぎない
また、心配だからと「こんな怖いことが起きるかも…」と、危険や恐怖を強調し過ぎるのもNG。いざというときに、恐怖のあまり動けなくなってしまうことも。
ポイント5)何度も根気よく
ルールを決めたからといって、すぐに守れるものではありません。
感情的に強く叱ってしまってはダメ。叱られた経験があると、何かあったとしても、次から親には隠してしまうことも。それだけ親の対処が遅れてしまいます。
何度も根気よく伝えていくことが大切です。
この記事の監修・執筆者
くにざき のぶえ/危機管理教育研究所代表、危機管理アドバイザー。20年にわたり第一線で防災・防犯・事故防止対策を提唱している。行政、企業、マンションなどのリスクマネジメントコンサルを行い、省庁の検討・審査委員や自治体の防災アドバイザーなどを務めている。NHKラジオでは6年間マイあさラジオ「暮らしの危機管理」のコーナーで情報提供するほか、多くのメディアで被災地の支援活動時の経験や防災防犯普及啓発を発信している。防災・防犯の執筆・監修図書多数。
危機管理教育研究所
http://kunizakinobue.com/
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