“1日たったの10分でも、絵本を読み聞かせる効果は絶大”。
これは、4万人以上の親や保育士、幼稚園教諭の方へ、読み聞かせの効果を発信してきた、絵本講師の仲宗根先生が実感してきたことです。
今回は、読み聞かせの効果や読み聞かせで大切なポイントをご紹介。
仕事が忙しく、なかなか親子の時間をとれずにお悩みのママパパ、もっと読み聞かせがうまくなりたいママパパにもおすすめです!
お話/仲宗根 敦子 (「絵本未来創造機構」 代表)
読み聞かせが子どもの「脳」と「心」にいい3つの理由!
【その1】「聞いたこと」が“いちばんに”子どもの語彙になっていく
子どもの脳は、0~6歳くらいの間で一気に急成長するといわれています。見たこと、聞いたこと、体験したことを感覚的にどんどん吸収していくのです。
中でも、「聞いたこと」が、いちばんはじめに子どもの中に語彙として蓄積され、発語へとつながっていきますから、子どもたちが言葉を深めていくのに、読み聞かせの効果はとても大きいといえます。
たとえば、いちごを食べたことがない赤ちゃんにいちごを見せても、どんなものなのか想像ができません。しかし、絵本の中で「いちごは甘いね」「いちごはツブツブしているね」というお話を聞くと、子どもはまるでいちごを食べたかのような“疑似体験”ができ、子どもの中に「いちご」という概念が生まれていきます。
このように、たくさんのお話を「聞かせてあげる」ことは、子どもの脳にたくさんの言葉を蓄えることができ、そして脳の発達の観点からもベストタイミングだということから、幼少期の読み聞かせは、子どもの脳を育てるのにとても最適といえるのです。
【その2】子どもの個性を大切にしてあげられる
いろいろな絵本を読んであげる中で、子どもをよく知ることにもつながっていきます。
たとえば、
●今、どんなことに興味があるのか?
●物語のどんなシーンで感動するのか?
●物語のどんなシーンで集中するのか?
●登場人物の中でどんな人物が好きなのか?
など、読み聞かせの最中は、子どものいろいろなところを観察できる絶好のチャンス。子どもが好きなこと、得意なこと、興味があることは、その子自身の個性や才能を伸ばします。読み聞かせの中で、それらをキャッチして大切にしてあげられる関わりがしたいですね。
【その3】「自分は大切にされている」と感じ“自己肯定感”が高まる
大好きな人と肌を寄せ合い、大好きな人の声で読み聞かせをしてもらうという経験は、子どもにとって「大切にされているんだ」という実感につながり、それは、長い間にわたって記憶に刻まれていきます。
そしてその記憶は、子どもがいろいろなことにチャレンジしたり、失敗してもくじけない柔軟な心を育んだりするための、大切な土台になります。「たくさん愛されている自分だから、チャレンジしてみよう」「大切にされているんだから、失敗しても大丈夫」というように。
幼少期は特に、親子の愛着関係を形成していく大切な時期。どんなふうに、子どもに愛情を伝えたらよいかわからないママパパも、絵本の読み聞かせならかんたんにできるはずです。
◆小学生からでも、読み聞かせは遅くない!
実は、中学生や高校生でもうれしいもの。文字が読めるようになったからといって、やめてしまう必要はありません。読み聞かせは続けることが大切。ぜひ、今からでも始めてみてくださいね。
読み聞かせで「脳」と「心」のこんな力が育つ!
「脳」の知能指数(IQ)がアップ!
読み聞かせは、子どものIQを高めてくれることがわかっています。
具体的には、以下のような力が育まれるといわれています。
●語彙力
⇒さまざまな言葉を覚えていきます
●理解力・読解力
⇒物語を理解する力が育まれます
●表現力
⇒語彙力の多さは、表現の幅を広げます。作文が上手になる子も多いです
●記憶力
⇒物語を疑似体験できるため、長期記憶としてインプットされていきます。文字は読めないのに、好きな絵本のストーリーを記憶できる子どもが多いのはそのためです
●想像力
⇒絵本の中の世界を頭の中で考えることで想像力が育まれます
●集中力
⇒知りたい、読んでみたい、という好奇心が刺激され、物語に没頭することが集中力を育みます
「心」の知能指数(EQ)もアップ!
同時に、心の知能指数も高めてくれることがわかっています。
具体的には、以下のような力が育まれます。
●相手の気持ちに共感する力
⇒物語の中で描かれている人物の気持ちに触れることで、共感力を育みます。うまく人間関係を構築していくことにもつながっていきます
●自分の感情をコントロールできる力
⇒物語の人物の経験を疑似体験することでさまざまな気持ちを知り、その気持ちとどんなふうにして向き合っていけばよいのか、感情の整理の仕方を学んでいきます
●自分を鼓舞する力
⇒絵本を通して、たくさんのサクセスストーリーに触れることは、「成功するとこんなにうれしいんだ」と子どもの中に“良い思い込み”を生みます。これは、ものごとをポジティブにとらえたり、積極的にチャレンジしてみようと思ったりと、前向きになれる力を引き出してくれます
実は、これらの力は絵本の中にたくさん描かれていますから、読み聞かせを通して自然と学んでいくことができるのです。
読み聞かせで大切な3つのこと
ゆっくり読まない
子どもの脳は、まだ「左脳が成長途中」。つまり、言語を十分に理解することがまだ難しい時期です。
内容を理解させてあげようと、ゆっくり読んでしまうと、子どもは未発達な左脳を働かせようとつかれてしまいますし、大人もたいへん。無意識のうちにお互いに無理をしている状態に…。
ですから、普通の会話のスピードで読むことがポイント。
子どもの脳は、「右脳が優位」であるため、見る、聞く、感じるなどの感覚的な情報をあっという間に取り込みます。読むスピードも子どもの脳の早さに合わせてあげることが、絵本への集中力をより高めることにつながりますよ。
声色をわざと変えない
実は、わざと声色を変えたりして演技をすると、“親の感じ方”をそのまま子どもが受け取ることになってしまいます。たとえば、「ここのシーンは感動してほしいなあ」という思いで読み方を変えてみても、子どもの感動ポイントが、親と同じとは限りませんよね。ありのままのストーリーを自然体で伝えて、子どもが自由に感じる時間にしてあげたいですね。
また、子どもは大人以上に、見る、聞く、感じるなどの感覚が敏感。たとえば、子どもがよく大きな声を出すのは、それくらい敏感に音が聞こえているからなのです。
ですから、あえて声色を変えたり抑揚をつけたりしなくても、子どもは十分に受け取ることができます。もちろん、自然に声色が変わったり、子どもを集中させるためにあえて演技したりする場合はOKなので、無理をせずに自然体で読んでみてくださいね。
読んだあとは、たっぷりとほめて!
「よく聞いてたね!」
「ママはうれしかったよ!」
「パパ、すごく楽しいなあ」
のように、心からほめて認めてあげるのが最大のポイント!
なぜなら、子どもは親が思っている以上に、本当に親のことが大好きで、親にほめられることが何よりもうれしいもの。本を読んだあとにひと言でもよいから声をかけてあげたら、また読んでほしくなったり、絵本好きになり、自己肯定感も高まったりするのです。
大きくなってくると、ほめられることよりも注意されることが多くなってきてしまいますから、なおのこと、意識して伝えてあげたいですね。
仲宗根先生からのメッセージ
絵本を読むということは、肌を寄せ合って、子どもといっしょに物語を共有するということ。例えるなら、遊園地でいっしょに乗り物に乗っている感覚と同じくらい、子どもにとっては楽しい時間です。
親御さんの声だからこそ、お子さんは物語のドキドキ感を安心して受け入れられるし、物語のどんな冒険にだって立ち向かうことができます。そんな貴重な経験ができるのは、親子での「読み聞かせ」だからこそです。まずは気負わずに、ほんの少しの時間でもよいので絵本の読み聞かせを始めてみませんか?
この記事の監修・執筆者
フルタイム勤務のシングルマザーで、子どものために何ができるのか悩みながらも、絵本の読み聞かせを長年続ける。自宅には1500冊の絵本を所有。航空会社に22年勤めたあと、独立。子どもの変化と自分のためにいかに絵本がよいかを実感し、その内容を体系化。1人で講座をスタートさせ、2017年に「絵本未来創造機構」を設立。絵本講座以外に文章講座、夢を叶える講座などを主催。一般や小・中・高校・公立図書館・企業での講演を行っている。全国はもちろん、海外では台湾・シンガポール・イギリスでの講演実績20回以上。絵本未来創造機構設立からわずか3年半で認定講師550人以上を指導。著書に『子どもの脳と心がぐんぐん育つ 絵本の読み方選び方』がある。
絵本未来創造機構HP/https://eq-ehon.com/
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