【眼科医監修】幼児・子どもの斜視・外斜視・内斜視は自然に治る?治し方は? 原因は?

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「幼児・子どもの目の位置がなんだか気になる…」それはもしかすると、斜視かもしれません。斜視・内斜視・外斜視の原因、遺伝の影響、いつから表れるのか、トレーニングで治るのか、眼科医・小児眼科医の山本央子先生にうかがいました。

目次

1 斜視とは

一点を見つめる女の子

斜視の定義

通常、両眼でものを見るときは、両方の目が目標物のほうを向き、視線が交差することでものをとらえて見ています。一方で斜視は、両眼の視線が目標に対して交差せず、一つの目でしか目標物を見ていない状態をさします。両眼で見ている人とは、見え方が違う場合があります。

外見としては、片方の目は目標物のほうを向いていますが、もう片方が外や内、上下に向いていて、目のずれが見られます。

基本的には先天性のものとして表れます。

そして、斜視は、以下の2つに分類されます。

●恒常性斜視
斜視の症状が常に起きているもの。幼少時に発症した場合、両眼同時にものを立体的に見る力の発達に影響があります。発達してから発症した場合には、両眼同時に見るとものが二重に見える(複視)を生じます。

●間歇性斜視(かんけつせいしゃし)
ときどき斜視の症状が出るもので、子どもにも多く見られます。
一定の条件がそろうと、目のずれが見られますが、視力検査では視力がしっかりと出ることもあります。
ただし、症状が出ているときには、片方の目(目標物を正しく向いているほうの目)のみで見ている可能性が高い状態です。

斜視の代表的な種類

細かく紹介するとさまざまありますが、斜視は目の向いている方向によって、大まかに以下のように分けられます。

※目のアップが出ます。




斜視の種類

日本人は、片方の目が外を向いている「外斜視」がいちばん多いです。

斜視の原因

目の筋肉や神経などの異常

目の筋肉や神経に異常があると、目の位置がずれ、両眼でいっしょに正しくものを見ることができません。

両眼視の異常

遺伝や脳の一部の異常により、両眼でうまく見られない場合、それぞれの目が違う方向を見るようになります。

強い遠視

ものを見るときは、目標物に両眼でピントを合わせるため、近くのものを見るときは、目は内側に寄ります。遠視の場合、ピント合わせを強く行うため、目がかなり内側に寄って、斜視になる場合があります(=調節性内斜視)。

視力不良

病気やけがで片方の目の視力が悪くなると、両眼視ができず、視力の低いほうの目が斜視になり、その場合は外斜視が多いです。

2 斜視の治療は、まず視力ありき!

初めてのメガネ

子どもの目の様子が気になったら、まずは眼科・小児眼科に連れて行きましょう。

治療に関しては、まずは視力がよく出ているのか、見えづらくないかを検査することが第一です。

同じ症状でも、体調や状況によって見え方は異なりますが、視力が出づらい場合の多くはメガネでの治療を行います。

「間歇性斜視」の場合、視力が出ていて、目の位置ずれだけが起こることや、メガネが不要で、目のトレーニングのみでよいこともあります。

ただ、とくに子どもは、目の位置がずれる=目のどの位置でものを見ればよいかがわからない状態であり、目の位置がずれている側の視力が不安定な場合が多いです。

正しい位置で見ることができれば目の位置ずれが起こりにくいため、よい位置で見られる状態を大人がつくること(たとえばメガネでの治療)が大切になってきます。

目に30度以上のずれがある場合はメガネでの矯正が難しく、手術治療の対象になります。
ずれの大きさや状況によっても治療方法は変わってくるため、眼科医と相談しましょう。

気になったらすぐに眼科へ

子どもの視力は、3歳ごろになると安定します。

しかし、目のずれや屈折異常(近視・遠視・乱視など)、目の病気などは3歳未満でも見つけることができるので、「あれ? なんだか様子がおかしいかも」と感じたら、年齢にかかわらず、すぐに眼科を受診しましょう。

目の異常は早期に発見すればするほど、早く対処ができます。

「こんなことで行って大丈夫かな?」とちゅうちょはしないことです。

子どもの場合、緊張などから検査の結果が一度ではうまく出ないこともあるため、診断結果や治療方法に疑問があれば、迷わずセカンドオピニオンを。

メガネや手術が必要と言われた場合でも、子どもがリラックスして再検査を行うと、トレーニングだけで対処できることもあります。小児眼科医がいるところで診てもらうと安心です。

成長過程にある子どもはとくに、同じ種類の斜視でも治療方法は一人ひとり異なります。

「今月の○○ちゃんはこんな様子なので、この方法でやってみましょう」と、子どもの様子も気にかけてくれて信頼できる眼科医を見つけ、いっしょに治療を進めていきましょう。

治療に際して子どもへの伝え方

眼科を受診することを前提として、たとえば、トレーニング(寄り目運動)を行う場合には、保護者もいっしょに取り組んだり、メガネを嫌がってしまう子に、わかりやすく治療のことを伝えてかけられるように促したりすることが大切です。

また、斜視は、本人が気づく場合と、気づかない場合があります。

小学校・中学校に上がるときなど、環境が変わるときには、周りから指摘されることもあります。容姿を気にする時期にはとくに気にかけてやりたいものです。

3 スマホやゲームのし過ぎで斜視になる?

スマホやタブレットを見ている子どもたち

コロナ禍でテレビやゲーム、スマホを見る時間が長くなり、子どもの裸眼視力の低下が増えています。

視力が低下することで、斜視の傾向があっても目立たなかった子が、どこを見ればよいかがわからなくなり、斜視の症状が表れるケースがあります。

ゲームやテレビ、スマホに注視して出てくる斜視に限っていえば、それらが原因で後天性の斜視になるわけではなく、もともと斜視の傾向があり、条件がそろって表れるのです。

※電子機器に限らなければ、病気に伴う後天性の斜視などもあります。

これは、幼い子どもだけでなく、中高生や大人でも起こる例があります。

視力低下に伴い、見るところが定まらずに斜視の症状が出ている場合は、正しい位置で見せると元に戻る場合があるため、保護者は見る環境を整えることが必要です。

何より、普段子どもを見ている保護者が違和感を覚えたら、迅速に眼科を受診することが大切です。

この記事の監修・執筆者

大森海岸やまもと眼科内科医院長 山本央子

日本眼科学会認定の眼科専門医。一般眼科のほか小児眼科も専門。患者さんの立場にたった親しみやすい診療を行っている。

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