【かけ算の意味、子どもに言える?】専門家が伝える、かけ算で大切なのは「量」

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【かけ算の意味、子どもに言える?】専門家が伝える、かけ算で大切なのは「量」

小学校の算数で教わる四則計算(たし算、ひき算、かけ算、わり算)は、日常生活で必要となる基礎知識です。大人はもちろん、多くの子どもも習得してしまえば当たり前のようにできる計算かもしれませんが、実は「どうしてそう解くのか」「そこにどんな意味があるのか」という問題の奥にある考え方をとらえることが、とても大切です。
「問題の奥にある考え方などあるの?」と思われるかもしれませんが、ただ計算問題を解くだけでは気づきにくい、算数の本質に関わるお話です。
この考え方や意味を理解することで、算数の問題もわかるようになり、算数や学ぶこと自体が楽しくなっていきます。まずは大人が理解して、子どもとコミュニケーションを取りながら教えてみましょう。
第5回目の今回は、低学年の算数で主要な内容のひとつである、かけ算についてです。

お話/小宮山博仁(教育評論家)

目次

「かけ算」の意味を知っていますか?

かけ算は、小学校2年生で学習する項目です。近頃は、先取り学習で就学前に九九を覚えているというお子さんもいらっしゃいます。「かけ算は、九九を覚えて計算できれば大丈夫」とお考えになるかたもいらっしゃるかもしれませんが、かけ算の学習で最も大切なのは、九九の暗記や計算だけではなく、かけ算の基本的な意味を知ることです。「『かけ算』って、何?」と問われて、正しく答えられる大人は意外なほど少ないものです。

それでは、かけ算の基本的な意味とは何でしょうか。

それは、かけ算とは「〈一つあたりの量〉×〈いくつ分〉=〈全体の量〉」の形で全体の量を求めるということです。

【前回の記事もチェック】ひき算には2つの意味がある!?

かけ算は「量」をとらえることが大事

それでは、実際に問題を解きながら、かけ算の意味をとらえていきましょう。

【問題1】自動車にはタイヤが4個ついています。自動車が5台あったら、タイヤは全部で何個ありますか。計算式も答えましょう。

【答え】 20個 (式 4×5=20)

自動車1台につきタイヤは4個ついているので、たし算を使って『4+4+4+4+4=20で20個だ』と答えることもできますが、これは少し面倒ですね。これを4×5=20のようにかけ算を使えば、より早くかんたんに答えを求めることができます。大人であれば、九九が身についているので、「4×5でしょ?」とつい言ってしまいますが、子どもはなぜ4×5なのかわからない場合が多いのです。ぜひ、かけ算の基本的な意味をお子さんといっしょに理解しましょう。

先ほど示した「〈一つあたりの量〉×〈いくつ分〉=〈全体の量〉」というかけ算の基本的な意味に当てはめると、〈一つあたりの量〉にあたるのは「4個」で、〈いくつ分〉にあたるのは「5台」ということになり、「4個」×「5(台)」=「20個」という式が成り立ちます。

つまり

・一つあたりの量(この場合、自動車1台あたりのタイヤの数)がわかっていること

・それがいくつ分(何台分)あるかがわかっていること

が、かけ算を考えるうえで大切なのです。

【問題2】カードを1人に3枚ずつ配ります。6人に配るにはカードは何枚必要ですか。 計算式も答えましょう。

【答え】 18枚 (式 3×6=18)

この問題の場合、かけ算の基本的な意味に当てはめると、〈一つあたりの量〉にあたるのは「3枚」で、〈いくつ分〉にあたるのは「6人」ということになり、「3枚」×「6(人)」=「18枚」という式が成り立ちます。もう、それぞれの「量」はとらえられますね。

要領の良い子は、「今はかけ算の授業だから、出てくる問題は全部かけ算だ」と考えて、与えられた数を覚えている九九になんとなく当てはめて計算して、「かけ算がわかった」と誤解する場合があります。答えと式が合っている場合が多いので、低学年のうちはなかなか保護者のかたはチェックしにくいかもしれません。文章題の計算ができたら、必ず問題の意味がわかっているか、かけ算の基本的な意味がわかっているかを見てあげてください。

このようなかけ算の基本的な意味をしっかり押さえておけば、学年が上がって算数を学んでいくうえでとても役立ちます。

小学校3年生までに習うかけ算は、すべてこのような意味を持つものですし、また5年生以上で習う割合や平均、速さなどでは「一つあたりの量」という考え方がとても大切になります。

生活体験を生かした学習法を取り入れましょう

先ほど、かけ算では「一つあたりの量」「いくつ分」をとらえることが大切とお話ししましたが、机の上で計算だけするのではなく、外に出て生活体験を豊かにするほうが「一つあたりの量」「いくつ分」を実感することができ、ずっと役立つ学力が身につきます。家での手伝いや買い物などの生活体験を通して、かけ算の意味を実感させてみましょう。特に幼児や小学校低学年の間はそれがとても大切です。

たとえば、買い物に行って、3個で1セットのプリンを示しながら、「2つ買ったら、プリンは全部でいくつになるかな?」などと問いかけてみましょう。好きなものであれば、より数に興味を持つはずです。また、「100円のアイスを3本買ってきて」のようなかんたんな買い物を頼んでみましょう。感覚的に「100円×3本=300円だな、消費税を入れても500円で買えるな」と考えられるようになります。

このような体験で覚えたことは、単に計算ができるだけでなく、その計算の意味を理解しますから、文章題になっても間違えません。

いかがでしたか? かけ算は「量」をとらえることが大切です。基本的な考え方が身についていることで、その後に習うわり算の理解も変わってきます。

日々の生活体験を大切にしながらかけ算の意味を知ることは、好奇心を育てるだけでなく、論理的(ロジカル)な思考を養うことにつながります。ぜひ楽しんで計算をしてみてください。

この記事の監修・執筆者

教育評論家 小宮山博仁

こみやま ひろひと/1949年生まれ。日本教育社会学会会員。放送大学非常勤講師。2005年より学研グループの学研メソッドで中学受験塾を運営。学習参考書を多数執筆。最近は活用型学力やPISAなど学力に関した教員向け、保護者向けの著書、論文を執筆している。
主な著書・監修書に『子どもの「底力」が育つ塾選び』(平凡社新書)、『はじめてのアクティブラーニング社会の?<はてな>を探検』全3巻(童心社)、『眠れなくなるほど面白い 図解 数と数式の話』(日本文芸社)、『眠れなくなるほど面白い 図解 数学の定理』(日本文芸社)、『眠れなくなるほど面白い 図解 統計学の話』(日本文芸社)、『大人に役立つ算数』(角川ソフィア文庫)、『危機に対応できる学力』(明石書店)など多数。

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