子どもが友だちをたたいてしまった現場を見たとき、あるいは、先生から「友だちをたたきました」と連絡を受けたとき、どう対応したらよいかわからない保護者は多いのではないでしょうか。
本記事では、年中から小学校低学年の子どもを中心に、子どもが友だちをたたいてしまったときにどう対応したらよいのかをご紹介します。
文/マムズラボ
子どもが友だちをたたいてしまう理由とは?
子どもは、なぜ友だちをたたいてしまうのでしょうか。
原因の1つに、発達の順番があります。幼児は、ことばで意志疎通ができるようになるよりも前に運動機能が発達するため、自分の感情や意思を伝える手段として手が出てしまうのです。
そのため、友だちをたたいてしまうのは珍しいことではなく、どのような子どもにも可能性があります。それを踏まえたうえで、友だちをたたいてしまうのにはどのような理由があるのか見てみましょう。
自分の意思を伝える手段として
ことばが未発達で、自分の意志がうまく伝えられない子どもは、自己表現や意思表示の手段としてたたいてしまうことがあります。
ことばの力は訓練で育てられます。気持ちをことばで伝えるのが苦手な子どもには、言語化の練習が必要です。たとえば、「貸してって言おう」「渡したくないんだね」など、子どもの気持ちを言語化してあげましょう。そうすると、やがてことばで伝えられるようになり、たたく回数はへっていきます。
ストレスや不安などの「はけ口」として
園や学校など、集団生活になじめていない、弟や妹が生まれたばかりなどといった大きな環境の変化によるストレスや不安から、友だちをたたいてしまうこともあります。
ストレスの原因を取り除いてあげるのがいちばんですが、難しいことも多いですよね。その場合、子どもと1対1の時間をつくって不安な気持ちを聞いたり、たっぷり甘えさせたりするなど、友だちをたたく以外でストレスや不安を吐きだせるようにしてあげましょう。
保護者や先生の気を引きたいから
保護者や先生に注目してほしい、かまってほしいという気持ちで友だちをたたいてしまう子どももいます。たたいたことで大人が慌てたり、自分に目を向けてくれたりするのが悪い「成功体験」になり、くり返してしまうというパターンです。また、本人は遊びのつもりでまったく悪気がなくたたいてしまうこともあります。
いずれにしても、「やめて!」「たたかないで!」などと大きな声を出すのは逆効果です。落ち着いた声で冷静に「たたくのはよくない」と伝えましょう。そのうえで、ぎゅっと抱きしめる回数や、意識して目を合わせて微笑む機会をふやすなど、子ども自身が「気にかけてもらっている」と思えるような態度で接しましょう。
たたくことが当たり前になっているから
普段から保護者にたたかれることが日常化している子は、友だちをたたくことに抵抗がなくなってしまいます。
子どもは周囲の大人の行動を見て育ちます。子どもがしてほしくない行動をしているときは、身近な大人である保護者の行動を考え直す必要があるかもしれません。
オススメの記事:【今日もお友だちとトラブル】大人になって暴力を振るわないか心配
子どもが友だちをたたいてしまったときに保護者が取るべき対処法
子どもが友だちをたたいてしまったとき、保護者はどのように対処すればよいのでしょうか。ここでは、年中から年長と小学校低学年に分けて対処法を解説していきます。
【年中から年長】の場合
子どもが年中から年長の場合は、まだ自分の感情や行動の結果を完全には理解していない場合が多いでしょう。たたくという行為に対しても「悪いこと」という意識は育っていないかもしれません。
だからといって、たたいたことを頭ごなしに叱るのはマイナスです。子どもは、「自分の気持ちを理解してもらえない」「どうせ言っても聞いてもらえない」と思ってしまいます。
「どうしたの?」と問いかけ、できるだけ口を挟まずに子どものことばを聞くことを心がけましょう。そして「イヤだったんだね」「いっしょに遊びたかったんだね」など、子どもの気持ちを言語化する手助けをします。その後、子どもの気持ちが落ち着いてから、どうすればよかったのかを子どもといっしょに考えましょう。
【小学校低学年】の場合
小学校低学年ともなれば、「友だちをたたくのはいけないことだ」という認識はあるでしょう。それにもかかわらずたたいてしまった、ということはなんらかの事情があるはずです。
この場合も、子どもの話をじっくり聞いてあげることが大切です。何がどうだったのか、そのときどう感じたのかをできるだけ決めつけず、保護者がじっくり聞いてあげましょう。
聞いてもらうことで、子どもは気持ちを言語化して整理する練習ができます。自分の気持ちを整理できるようになれば、暴力に訴えることがへるはずです。
保護者は次からはどうするのか答えを教えるのではなく、子どもが自分で考えて答えを導きだすサポートに徹しましょう。
子どもが友だちをたたいてしまったときに保護者が言ってはいけないNGワードとは?
子どもといっしょに謝罪をする際に、気をつけてほしいことがあります。それは、「たいしたことない」「子どもどうしだから」などという事実を軽くすることばを言わないことです。これらは謝罪を受ける側のことばであって、謝罪する側は決して言ってはいけません。もし、自分の子どもがよその子どもにたたかれたらどう感じるのかを想像して、心から謝りましょう。表面だけの謝罪は見抜かれ、のちの保護者間の関係に響きます。
また、謝罪の際に子どもを否定することばを使わないことにも気をつけましょう。たとえば、「うちの子が悪いことをしました」と事実を認めて謝罪するのはいいのですが、「うちの子は悪い子なんです」と言うと、子どもを否定してしまっています。
文字にするとほんの少ししか違わないのですが、意味は大きく異なります。保護者が子どもを否定することばを使っていると、子どもの自己肯定感が育たなくなりますので注意しましょう。
子どもが友だちをたたいてしまったときは、冷静に対処しよう
たたくのはいけないことですが、子どもが感情を行動で表してしまうのはよくあることです。保護者ができるのは、子どもの気持ちをじっくり聞き、しっかりと向き合うことではないでしょうか。子どものことばを共感的な態度で聞き、できるだけ冷静に対処することを心がけましょう。
この記事の監修・執筆者
作家/子どもへの言葉かけ、「子育てNGワード」の専門家。「言葉」を扱うコピーライター経験から、子育て中の子どもへの言葉かけに関心を持つ。
三人の娘の子育ての実感(成功も失敗も)を活かした書籍を執筆している。
『お母さん、ガミガミ言わないで!子どもが勉強のやる気をなくす言葉66』
『決定版 ママ、言わないで!子どもが自信を失う言葉66』
こそだてまっぷから
人気の記事がLINEに届く♪