「小1プロブレム」ということばを聞いたことはありますか? 小学校に入学したのに、授業中に座っていられなかったり、集団行動がとれなかったりと、我が子の学校生活について悩んでいる保護者のかたも多いのではないでしょうか。
そこで、今回は小1プロブレムがおこる原因と対策法を解説します。
文/マムズラボ
小1プロブレムとは?
幼稚園や保育園から小学校へと環境が変わり、子どもたちは大きな変化を体験します。友だちと離ればなれになったり、新しいクラスメイトと出会ったり、授業が本格的に始まったり……。ランドセルを背負って通学するだけでも大きな変化ですよね。
小1プロブレムとは、小学1年生の子どもが、それらのさまざまな変化になじめず、授業中に座っていられなかったり、集団行動がとれなかったりすることを指します。落ち着かない状態が続いて「先生の話を聞かない」「黙って座っていることができない」「授業中に騒いだり立ち歩いたりする」など、問題行動をおこしてしまう子もいます。問題行動そのものも、問題行動による周囲への影響も心配です。
授業が成り立たない「学級崩壊」の状態になってしまうと、すべての子どもにとってマイナスです。なかには教室に入りたくないと小学校入学直後から不登校になる子どももいます。
なお、小1プロブレムに似たことばとして「小1の壁」があります。これは子どもが小学校に上がることで、保護者の子育てと仕事の両立が難しくなる状態のことを指し、小1プロブレムとは別の問題になります。
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小1プロブレムの原因
なぜ小1プロブレムが発生するのでしょうか? 小1プロブレムの原因は次のようなことが考えられています。
環境の変化によるギャップ
幼稚園や保育園での生活は、自発的な遊びが中心です。しかし、小学校では受け身の授業が中心の生活となることが多く、子どもによっては強いギャップを感じてしまうことがあります。
多くの小学校では、子どもが主体的に学べるような授業を取り入れていますが、イスに座って授業を受ける時間は、どうしても幼稚園や保育園よりもふえます。この変化が小1プロブレムの原因のひとつだといわれています。
長時間座り慣れていない
子どもは長時間(授業時間の40~45分間)、じっとイスに座ることに慣れていないため、フラフラ立ち歩いてしまうこともあります。これはメンタルだけの問題ではなく、座り続けるための筋力が弱く、じっと座っていられないことが原因でもあります。
精神的な幼さ
保護者の目には、小学校に上がった子どもの姿は大きく成長して頼もしく映るものです。しかし小学1年生の内面は、まだまだ幼いです。自分自身をコントロールする力が十分についておらず、精神的な幼さから問題行動をおこしてしまうともいわれています。
上記のような「精神的に幼い」タイプとは別に、「自立心」や「意欲」が発達しているために、強制的に集団行動をさせられることに抵抗を感じてしまう子どももいます。
このようなタイプの子どもは、集団生活になじんだような演技をできない=精神的に幼い、とはいいきれません。
指導者の目が行き届いていない
多くの小学校では1学級の定員が35人です。幼稚園や保育園と比べて、教員1名が対応する子どもの数はふえがちです。
そのため子どもを十分にケアできない可能性があります。指導者の目が十分に行き届かないため、子どもが問題行動をおこしやすいのではないかと考えられます。
小1プロブレムの事例や具体例
実際に小1プロブレムでどのような問題がおこっているのでしょうか?
授業中に座っていられない
小1プロブレムの事例として有名なのが「授業中に座っていられない」というものです。
「教員が話をしているのに勝手に立ち歩いてクラスメイトにイタズラをする」「テスト中に突然立ち上がって教室を出ていく」などが挙げられます。
規律が守れない
休み時間にグラウンドに出て追いかけっこやボール遊びをするのも学校生活の一部です。ところが、チャイムが鳴っても教室に戻らない子どもがいることで、教員は授業を始められなくなります。
集団行動がとれない
小学校では「みんなと同じこと」を「みんなと同じように」「みんなと同じ時間に」行うことが求められます。
たとえば、教室から体育館への移動など、十分な時間は取っているはずですが、時間内にできない子どもがいれば、活動は滞ります。いずれも、小学校生活の基本的なルールが守れないためにおこる問題です。
小1プロブレムを防ぐために、多くの学校では、幼稚園や保育園と小学校の連携を密にして(幼保小連携)、子どもができるだけギャップを感じないよう配慮したり、1年生の教員の数をふやしたりして対応しています。
家庭でもできる小1プロブレムの対策3つ
続いて、小1プロブレムを防ぐために家庭でできる対策をご紹介します。
イスに座る習慣をつける
イスに座っているためには、背筋・腹筋など体幹の筋肉を使います。これまで長時間座る習慣を持たなかった子どもの場合、授業中じっとしているのが難しいのは仕方のないことです。
授業中座っていられる体を作るために、おうちでも、お絵かき遊びや自宅学習用ドリル、学校からの宿題などを、イスに座りながらやることを習慣づけましょう。
生活リズムを整える
寝坊で朝食抜きの生活では、子どものメンタルは不安定になりがちです。規則正しい生活を送れるよう子どもを支援することも、小1プロブレムの対策です。
「今日はもう寝ようね」と声をかけ、子どもが就寝するきっかけをつくってあげましょう。タイマー機能やスマートスピーカーを活用して、保護者が常に言い聞かせなくてもよい工夫も取り入れることをオススメします。
子どもの心によりそう
保護者が毎日話を聞いてあげることは、子どもが自分のメンタルをコントロールする手助けになります。子どもから学校での出来事を話さないときは、「今日はどんなことがあったの?」「楽しいことはあった?」「イヤなことはなかった?」など保護者から声かけをしてもよいでしょう。
ただし、心配のあまり「どうだったの?」「何があったの?」と、保護者が子どもを問い詰めることは逆に子どもを追い詰めます。小学1年生ではまだうまく言語化できない子どものほうが多いでしょう。無理に聞き出そうとするよりも、気持ちを受け止めることのほうが大切です。
だっこで背中をトントンする、膝にのせてぎゅっとするなど、スキンシップで子どもに安心感を与えることも効果的です。
子どもといっしょに小1プロブレムをのりこえよう!
小学校に上がったばかりの1年生は、新しい環境に新しい人間関係と、さまざまな変化に適応しなければなりません。この環境の変化は大きなストレスですが、子どもが大きく成長するチャンスでもあります。ぜひ子どもの日々のがんばりを応援してあげてくださいね。
この記事の監修・執筆者
作家/子どもへの言葉かけ、「子育てNGワード」の専門家。「言葉」を扱うコピーライター経験から、子育て中の子どもへの言葉かけに関心を持つ。
三人の娘の子育ての実感(成功も失敗も)を活かした書籍を執筆している。
『お母さん、ガミガミ言わないで!子どもが勉強のやる気をなくす言葉66』
『決定版 ママ、言わないで!子どもが自信を失う言葉66』
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