【園バス置き去り事故を防ぐために】2023年4月から内閣府の通達で何が変わる? 保護者にできることは?[専門家監修]

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近年、園バス等の車内置き去り死亡事故が相次いでいます。事故を防止するために、国や行政は、どんな取り組みを行っているのでしょうか。また、保護者にできることはあるのでしょうか。 Safe Kids Japan山中龍宏理事長にうかがいました。

文/こそだてまっぷ編集部

目次

多発する園バス置き去り死亡事故

2022年9月、静岡県で起きた通園バス置き去りによる死亡事故は、世間の注目を集めました。その前年にも福岡県で同様の痛ましい事故死が発生しています。ほかにも、数分間ではあるものの子どもを園バスに置き去りにしたという例は各地で相次いで報告されています。

国は、2021年に福岡県で起きた事故を受け、予防対策として「安全確認の管理」「マニュアルの整備」などをまとめた通達を出しましたが、同様の事故が続いているということは、通達では予防対策として十分ではなかったと言えるでしょう。

4月から安全装置の設置が義務化

これらの事故を受け、子どもたちに「おしりでクラクションを押して鳴らす」「バスの窓を開けて大声で叫ぶ」などの訓練を行っている園もあります。ですが、2~3歳の子どもに自分で自分の身を守ることを要求するのはあまり現実的とは言えません。これからは、子どもたちにクラクションを鳴らすことを教える必要がないように、より根本的な安全対策のしくみを考える必要があります。

内閣府では、保育園や幼稚園、特別支援学校などの送迎バス約4万4千台を対象に、2023年の4月から安全装置の設置を義務づけました。また、安全装置導入にあたって、国や一部の自治体が一定の補助金を出すとしています。たとえば、東京都は、車内に子どもが残っていないかを確認する感知センサーなどの導入費用として、バス1台につき最大で100万円を補助すると発表しています。

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どんな安全装置がある?

園バスに設置する安全装置としては、今のところ次の2タイプが想定されています。

1.車内後方のボタンを押すなどして降車時に確認するタイプ

バスのエンジンを切るとアラーム音が鳴り、運転手が車内最後部に設置されたブザーを止めない限り、そのアラーム音が鳴り続けます。つまり、運転手はブザーを止めに車内を後部まで歩いていくため、子どもが残っていないかを目視で確認することができます。諸外国ではすでに多く導入されている装置で、標準価格は20万円程度とさほどコストがかからず、比較的すぐに設置できる利点があります。おそらく4月以降に安全装置を設置する園バスは、このタイプを導入するのではないかと考えられます。

一方で、この装置には「人間が関与する」という難点があります。実際、アメリカでは運転手がシステムのスイッチを切ってしまうという事例があり万全とは言えません。

2.カメラのセンサーなどで自動的に人を検知するタイプ

センサーがバスに取り残された子どもの心拍や体温などを感知し、運転手や外部に数分以内に自動的に警報を鳴らすシステムです。人間が関与しないので、人的ミスの不安がありません。ただ、この最新技術を導入したセンサー型機器は、日本国内のメーカーではまだ開発中という段階です。コストが高く、バス1台につき数十万~100万円以上はかかるとされています。

スポーツクラブなどの送迎バスでも同様の事故が発生

この記事では園バス置き去りによる園児の死亡事故を取り上げていますが、通園用のバスに限った問題ではありません。子どもが利用するスポーツクラブや塾などの送迎バスでも、同様の事故が起きる可能性はあります。たとえば2022年8月に、大阪府のスイミングスクールの送迎バスに小学校低学年の子ども2人が約10分間取り残される事件が発生しています。2人の体調に異変はありませんでしたが、車内で寝ていたために運転手に気づかれなかったという報道がありました。

自家用車の置き去りにも注意!

保護者が車に子どもを置き去りにし、死亡させてしまった事故も相次いで起きています。

◆2022年5月(新潟県)1歳5か月の子どもを車に残して保護者が会社に出社し、3時間放置して死亡。

◆2022年11月(大阪府)保育園に預けられるはずだった2歳の子どもが保護者の車に置き去りにされ死亡。

自家用車の子ども置き去りを防ぐには、財布や携帯電話など降車時に必ず持つ貴重品をチャイルドシートの近くに置く、または、チャイルドシートにぬいぐるみを乗せておいて、子どもをチャイルドシートに乗せたら、ぬいぐるみを助手席に移動させる習慣をつけておくと「助手席にぬいぐるみがあるときは後ろに子どもが乗っている」という意識が働くので、注意喚起にはなるでしょう。しかし、子どもを車に乗せたままで保護者がその場を離れないことが鉄則です。

園バスの安全に向けて保護者ができることは?

園バス置き去り対策として、保護者ができることは何があるのでしょうか。

小学生なら防犯対策も兼ねてGPS端末やキッズスマホを持たせるという手段もありますが、幼児の場合はそういうわけにはいきません。園バスの安全対策は、本来、保護者ではなく園側や行政が取り組む課題のため、保護者ができることはあまりありません。それでも、保護者会などの場で、園がどんな対策を行っているのかを確認することはとても重要です。

園バスには、4月から安全装置の設置が義務づけられています(1年間の経過措置あり)。子どもが通っている園の通園バスがどんな安全装置を設置しているか、園児の乗車・降車の人数確認をどのように行っているか、登園していない園児の保護者への欠席確認や職員間の情報共有のしくみはどうなっているかなどをしっかりと確認しておくとよいでしょう。

園バスの安全装置として有効で、設置しやすい価格のセンサー機器類の開発が待ち望まれています。保護者としては、子どもの命や安全を守るために、国や園の取り組みに注視し、その動向を気にかけていきたいですね。

この記事の監修・執筆者

NPO法人 Safe Kids Japan理事長 山中龍宏

小児科医。東京大学医学部卒業。緑園こどもクリニック(神奈川県)院長。産業技術総合研究所人工知能研究センター客員研究員、内閣府教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員などを務める。

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