片づけは、子どものさまざまな力を育むことができるそうです。自分で片づけられる子どもになるためのアドバイスを片づけのスペシャリスト・中矢くみこ先生にうかがいました。
文/こそだてまっぷ編集部
片づけは子どもの生きる力につながる
家の中が散らかってしまう方の多くは、自分にとって何が必要で、何が不要かを判断するのが苦手です。子どものうちから片づけを通して、必要なもの・不要なものを判断する練習をしておくことは、将来自立して生きていく力につながります。子どもの人生を豊かにするためにも、自分で片づけられる子どもに育てていきましょう。
ここから、自分で片づけられる子どもになるための5つのメソッドをご紹介します。
1.片づけるものの定位置を伝える
片づけとは、一般的には「使ったものを定位置に戻す」こととされています。使ったものを決められた場所に戻せば、部屋は散らかりません。「うちの子は片づけられない」と思っている保護者もいらっしゃいますが、単に「片づけなさい」とだけ言われても、子どもは何をどうしたらよいのかわからない場合も多いのです。「遊び終わったおもちゃは、ここに戻そうね」と具体的に説明すると行動に移しやすくなります。
2. ものの定位置を決める
子どもが片づけやすいように、ものの定位置をつくりましょう。
たとえば、学校から帰ってきた子どもがランドセルを片づけられるようにしたいのなら、ランドセルの定位置をつくることから始めます。このとき、保護者が「ここに片づけなさい」と決めつけるのではなく「ランドセルをここに置くのはどうかな?」などと提案し、子どもの意見を聞きましょう。
幼児や低学年だと、自分でゼロから考えることは難しいですが、いくつかの選択肢の中から選ぶことはできます。「ここに置く? それともあっちのほうがいい?」などと本人が選べるように、複数の選択肢を提示するのもよいでしょう。命令や強制でやらせるより、自分の意思で決めたほうが、子どもはやる気になります。
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3.時間を区切って取り組む
子どもが片づけをする際にタイマーなどで時間を区切る、あるいは時間を測るなどの方法もオススメです。
たとえば、「机の片づけを5分だけがんばってみる」などです。単純に「机の上を片づけよう」だけでは、子どもにとって片づけが“終わりのない”作業に思えてしまうため、なかなかやる気が起きません。ですが、「5分だけ」などと時間を決めておくと、終わりが見えるので取り組みやすくなります。また、実際に片づけてみたら、3分で終わったという体験をすれば「片づけって、意外と早く終わるんだ」と気づけることもあるでしょう。
子どもによっては「何分でできるか、やってみよう!」などと時間を測ると、ゲーム感覚で楽しく片づけに取り組める場合もあります。
片づけをする際に時間を測ると、行動に対する時間感覚が身につきます。ひとつの物事を終わらせるのにどのくらい時間がかかるのかを見通して計画を立てるなどの時間管理能力を養うのにも役立ちます。
4.リビング学習はゾーン分けを
幼児や低学年の場合、最近は、リビングで勉強をしているご家庭も多いようです。家族の生活用品と子どもの学習用品が交ざると、どうしても散らかりがちになり、必要なものが見つからなくなることがあります。このようなご家庭では、ものが交ざりにくいようにゾーンを分けることが重要です。
子どもの学習用品については、箱やワゴンなど定位置を決め「ごはんのときは、勉強道具をいったんここに置くといいんじゃない?」などと提案してみましょう。「使わないときは、ものを定位置に戻す」という行動を繰り返し続けていると「片づけはそれほど面倒ではない」ということが理解できるようになり、片づけの習慣が身につきます。
勉強道具を収納する箱などは、勉強をする場所から近すぎると片づけを意識しにくいため、1、2歩程度離れた位置に配置するのがオススメです。
5.好きなものを選ぶ練習を
成長に合わせて子どものものがふえていくのは、仕方がないことです。保護者目線では「これはもう不要だから処分したい」と考えるものもあるでしょう。ですが、保護者が先回りして勝手に子どものものを整理するのは禁物です。その習慣が身についてしまうと、「自分がやらなくても、大人がやってくれるから、やらなくてもよい」と思いこみ、いつまでたっても自分で片づけることができなくなってしまいます。
子どものものを片づける際は、本人といっしょに「仕分け」をすることから始めましょう。まず、整理したいもの(たとえば、おもちゃや、子どもが園や学校などで作った作品など)を全部取り出して並べます。次に「この中で、あなたが好きなものはどれ?」と本人に選んでもらいます。これは「自分にとって、今何が大切か、そうでないか」を判断して仕分ける練習になります。このとき、保護者と異なる意見だったとしても、本人が判断したことは否定しないようにします。そして子どもが選んだものは残し、ほかのものは本人が納得したうえで処分してもよいでしょう。
子どもが片づけに対して抵抗感をもつのは「自分が大切にしているものを勝手に捨てられてしまう」といったネガティブなイメージを植えつけられていることが原因になっている場合も多いのです。
うまく片づけられたら認めてあげよう
うまく片づけられたときは、保護者が「自分で決めたとおりにできたね、えらいね」と、その都度認めてあげると、子どもの成功体験につながり、達成感や自己肯定感を育むことができます。
もし、本人が自分で決めた場所に片づけることができなかったら「なぜ、できなかったのかな? 次からは、こうするのはどう? 」などとトライ&エラーを繰り返しましょう。時間をかけて子どもといっしょに解決策を考えるプロセスも重要です。
片づけを通して、自分にとって何が必要で何が不要かを判断する練習をすることは、判断力や自己管理能力などの生きる力につながります。年末の大掃除や春の年度替わりなど片づけに向き合う季節。子どもが「自分にとって大切なものは何か」を考える機会を上手に活用していきましょう。
この記事の監修・執筆者
日本ライフオーガナイザー協会所属。ICD※認定ADHDスペシャリスト。片づけ脳力トレーナー(初級)。
長年にわたり、片づけに悩むクライアントのサポートに尽力。ものが多くてもスッキリ片づくワンアクション収納に定評があり、雑誌など数多くのメディアで活躍中。自身も小・中学生4人の子育てママ。
※ICD:アメリカの研究機関Institute for Challenging Disorganizationの略称。
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