【掃除を通して培われる力】学校では現在でも「ほうき」と「ぞうきん」

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こんにちは、現役小学校教諭の舟山由美子です。
年末は大掃除を行う学校も多いことでしょう。今回はお掃除をテーマに取り上げたいと思います。

目次

ほうきとぞうきん、学校の掃除道具は「文化財」級

小学校に入ると、ふだん使っている教室の掃除は子どもたちが行うことがほとんどです。

学校で使う掃除用具に関しては、基本的には、ぞうきんやほうきなど、児童の手で動かせる物です。ぞうきんは、机ふき用と床ふき用で一人2枚が必要な学校が多いでしょうか。ほかにはT字型ぼうきや、カーペット用のゴミ取り手動機があったりするぐらいです。

これはお父さんやお母さんが小学生だった時代と、それほど変わっていないのではないかと思います。今までの勤務校で、各教室に1台ずつ掃除機が備えられていた学校もありましたが、それはとても珍しいケースだったと思います。もっともそれを使うのは教員だけで、放課後にもう一度掃除をしたり、児童の清掃がない日に使ったりしていました。

今の時代、ほうきやぞうきんだけで掃除をしている家庭はどれくらいあるのでしょうか。クラスで尋ねると、お掃除ロボットがある家のほうが、ほうきがある家よりも多いくらいです。学校で使っている掃除の道具はほとんど「文化財」なみと言ってもいいでしょう。家でほうきを使ったところを見たことがない子がほとんどなので、ほうきを使う手の向きから始まって、使い方を一から教えなければなりません。私が子どもの頃は、先生は監視役だった印象があるのですが、担任が率先して手本を見せないといけない時代です。

掃除をきちんと教えると短期間で身につく1年生

掃除をする場所の範囲は、学年によって違います。1年生は、基本的に自分の教室とその廊下ぐらいです。学年が上がるにしたがって、特別教室(音楽室・図工室・理科室など)や、玄関、階段、体育館などの分担場所が増えていきます。

トイレについては、私が教員になった20年ぐらい前は子どもがしていましたが、その数年後には、子どものトイレ掃除はなくなりました。理由は明確ではありませんが、トイレ掃除には専用の洗剤(薬剤)を使うことがあったり、床がタイル張りから乾式タイプのトイレが増えており、そのための特別なやり方で行う必要があるためだと思います。

入学当初は、6年生が1年生の掃除のお手伝いに入りますが、私は、掃除の仕方が一番効果的に身につくのは1年生だと思っているので、6年生のお手伝いは最小限にして、しっかり教えたいと考えています。そうすると7月ぐらいには、ほうきのはき方やぞうきんがけのやり方、ぞうきんの絞り方を、上級生に負けないぐらい上手にできるようになるのです。つくづく1年生の時期は大切だと思います。

「掃除がしっかりできること」の大切さ

私たちは、自分の身の回りは自分できれいにするという感覚を持っていますね。海外では、掃除は「仕事」という捉え方もあり、専門の人のやることと、ある種徹底している国もあるようですが、日本では、掃除は「生活指導」や「道徳」の領域のものなのだと思います。日本が清潔な国と言われるのも、こうした常識が大きく影響しているのではないでしょうか。

また、掃除は「マナー」に関わる部分もありました。昔は、家まわりを掃除するときは、少しずつお隣さんの所も掃除するように言われました。そうしてお互いにきれいにし合ったのです。しかし、今は、マンション住まいの子が多いので、こうした考え方はなかなかわかってもらえません。

私は教員になったばかりの頃、保護者会で、「どんなに勉強ができても、給食の当番や、掃除がしっかりできなくてはダメだと思っています。ですからこのクラスでは、それらの仕事をしっかりできるように指導したいと思います」と伝えたことがあります。新人教師への励ましの意味も込めて、賛同の拍手をいただいたことを覚えています。

そのときの考えは今でも変わっていません。掃除を通して、清潔に対する意識や習慣だけでなく、マナーなどの社会性や協調性、思いやり、そして集中力など、子どもが育っていく上で大切な、さまざまな力が養われます。生活様式や掃除用具は変わっても、こうした掃除の意義は変わらないはずです。

年末の大掃除、子どもにも何かしらの役割を与えて、毎日学校でやっているぞうきんがけなどの「得意技」が披露できるような機会を作ってみてはいかがでしょうか。

この記事の監修・執筆者

小学校教諭 舟山 由美子

ふなやま ゆみこ/東京都の現役小学校教諭。
長年の小学生の指導経験に基づいた、
教育・子育てアドバイスに定評がある。

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