気になる“子どもの友だち関係”で、親が大切にしたいこと~親野先生オススメの「友だち絵本」も紹介~

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気になる“子どもの友だち関係”で、親が大切にしたいこと~親野先生オススメの「友だち絵本」も紹介~

新年度が始まって2か月。新しいクラスになった子も多く、新たな環境に少しずつ慣れてきたころでしょうか。
なかには、気が合う友だちを見つけたり、友だちのグループができたりと人間関係ができてきている時期ですね。
そうなると、トラブルも増えてきて、この子とは馬が合わないかも…、いやなことを言われちゃった、いじわるされちゃった、といった友だち関係の悩みが出てくるころでもあります。
そんな子どもの友だち関係。親はとても気になるけれど、どこまで踏み込んでいいのか、どんなふうに向き合っていけばよいのか、お悩みのママパパも多いのではないでしょうか。
今回は、教育評論家の親野智可等先生に「子どもの友だち関係」で親が大切にしたいことについて詳しくお話をうかがいました。

お話/教育評論家 親野智可等

目次

「子どもの友だち関係」で、親が大切にしたいこと

【その1】子どもの様子をよく見る「観察力」

まずは、お子さんが学校から帰ってきたとき、どんな様子かをよく観察することがとても大切。ぼんやりと見ていると見過ごしてしまうこともありますが、

  • 表情
  • 声の調子
  • 様子
  • 持ち物

などをよく見ると、お子さんが今、どんな状態にあるのかということを見抜ける場合があります。いつもと様子が違うときは、もしかしたら困りごとを抱えているのかも? とすぐに対応策を立てることができますね。

【その2】話しやすい雰囲気づくりを

そのためには、日ごろから共感的に話を聞くことがとても大切。たとえば、

「学校で先生に怒られちゃった」
「あんたがちゃんと聞いてないからでしょ!」

と否定的な反応を返してしまうと、お子さんはそれ以上の話ができなくなってしまいます。そこで、共感的に寄り添った会話をしてみると、

「そうだったの?いやだったね」
「隣の子だって悪いのに、先生ぼくだけを怒ったんだよ」
「それはママもいやな気持ちになっちゃうわ」

といったように、子どもは自分の話をしやすくなります。すると、友だち関係で困ったときも、お子さんは悩みを打ち明けやすくなります。子どもは、親に話を聞いてもらうだけで気持ちがすっきりとして軽くなったりするもの。同時に、子どもの情報もたくさん入ってきます。「もしかして、この子は隣の席の子が乱暴だから困っているのかな」「遊びたい子がいるのに、誘えなくて悩んでいるのかな」といったように、困りごとの様子がより具体的に見えてきますから、対応策も立てやすいですよね。

励ましたいな、アドバイスをしたいな、というときは、お子さんの話をたっぷりと聞いてから、最後に伝えてみるとよいでしょう。ただし、子どもの話を共感的に聞きつつも、その話を全て鵜呑みにしないように気をつけてください。なぜなら、子どもは一面的な見方しかできないこともあるので、ウソをつくつもりがなくても、結果的に事実と違う話になってしまうこともあるからです。共感しつつも、「相手には相手の言い分があるはず」という意識でいる必要があります。

【その3】家族で「友だちごっこ」もオススメ

「ロールプレイ」という手法もあります。
「ロール=役割」「プレイ=演じる」、簡単にいえば「友だちごっこ」です。

「友だちと遊びたいときは、“入れて”って言わなくちゃだめだよ」と伝えて送り出しても、なかなか言えないことが多いもの。そんなとき、「友だちごっこ」で、家族で学校の遊びの様子を再現してみましょう。

たとえば、ママとパパが友だちの役をして「○○ゲームをして遊ぼうよ!」と話しているところに、「おもしろそうだね! わたしも入れて」と実際にことばにして伝えるシミュレーションをするのです。一度、口に出すことを経験していれば、実際の場面でも心の準備ができて、言いやすくなるという効果があります。

慣れてきたら、「もう始まっちゃったから、ダメだよ」と、あえて少し難しい返しもしてみましょう。そこで、黙ってしまうのではなく、「じゃあ、1回目が終わったら入れてね」「じゃあ、ここで見ていてもいい?」などの返し方ができるように練習するといいですね。簡単にできますので、ぜひ、試してみてください。

友だちができない・いない子にも、4つのタイプがある!

親が「子どもの友だち関係」にどこまで踏み込んでよいか、迷うことがありますね。子どもに友だちができないと親が不安になってしまい、過干渉になりがちです。踏み込む前に、まず、「友だちがあまりできない子」には4つのタイプがあるのを理解するのが大事です。自分の子がどのタイプか見極めて、その子に必要なサポートをしてあげるとよいでしょう。

《タイプA》 友だちが欲しいのに、なかなかできない。
特に避けられてはいないようだ

このタイプの場合、幼稚園、保育園、小学校の低学年なら、大人がひと声かければ、すぐ遊びの仲間に入れてもらえます。もちろん、小さい子でも馬の合う・合わないはありますが、それも保育士や先生が見ていればわかります。初めのうちは、友だちに声をかけてもらうように、先生に相談するなどして、フォローしてもらってもよいですね。そのうち大人が声をかけなくても、友だちのほうから誘ってくれるようになります。さらに、これによって、友だち体験が積み重なっていけば、自分から友だちの輪に入っていくことができるようになるはずですよ。

《タイプB》 友だちが欲しいのになかなかできない。
どうも避けられているようだ

このタイプの場合、避けられている原因について親子で改善に努めることで改善することがあります。といっても、親が口だけで直すように言ったり叱ったりするのは逆効果です。特に、お子さんが自己中心的で攻撃的な状態になっている場合はなおさらです。その場合は、その子が親の愛情を実感できるようにしてあげることが何よりもいちばんです。たとえば、話を共感的に聞いたり、叱ることをやめてたくさんほめたり、親子の触れ合いとコミュニケーションの時間をふやしたり、といったことを心がけてみましょう。もちろん、子どもが持って生まれた資質もありますから、すぐには改善しないこともあります。しかし、お子さんのことを信頼し続け、親が忍耐をもって長い目で接すれば、状態はだんだんとよいほうに向かっていくでしょう。

《タイプC》 もともと友だちといるより一人でいるほうが好き。必要に応じて友だちと遊んだり協力したりできる

このタイプの場合、それほど心配する必要はありません。
なぜなら、「友だちといる力」と「一人でいる力」の両方をもっていて、後者のほうがやや勝っているだけだからです。

親はつい心配になり、子どもが一人で何かをしているのを見て、「友だちと遊ばなきゃダメでしょ!」と言ってしまいますが、このタイプの子にとって、そのような強制はとても苦痛。友だちと遊びたくなったら遊ぶのですから、それよりも、一人で過ごす時間が充実したものになるよう手助けをしてあげましょう。絵が好きなら、いろいろなお絵かき用具やきれいな絵本を用意してあげたり、ブロックが好きならブロックの数や種類をふやしてあげたりなどして、さらに好きなことを深められるようにできるとよいですね。

《タイプD》 そもそも友だちをまったく欲しがらない。
いっしょに遊んだり協力したりする気もない

もしかしたら生まれつきの特性が原因であることも考えられます。場合によっては、早めに専門家に診てもらう必要があるでしょう。もし、生まれつきの特性が原因だとわかれば、それに応じた支援を始めることができます。もし、生まれつきの特性でないとわかれば、その子に応じた対応を取ることができますね。

親がいつまでも一人で悩んでいても、はっきりしたことは何もわからないままです。お子さんのためにも、専門家に相談してみましょう。

子どもに読み聞かせたい!
親野先生オススメの“友だち絵本”
4選

さまざまな絵本を読むことも、友だちについて考えるきっかけになる大切な時間。絵本を通して、今の自分の気持ちを知ったり、友だちの気持ちに気づいたりすることにもつながっていきます。ぜひ、お子さんといっしょに読んでみませんか?

友だちづくりを応援する『さくらちゃんのかえりみち』

作/かさいまり 絵/吉田尚令 1,650円(税込) Gakken

【あらすじ】
新しいクラスにまだ仲良しの友だちがいない、さくらちゃん。放課後、友だちといっしょに帰りたいのに、1分で家についてしまうさくらちゃんは、帰り道に一人ぼっちです。そんなある日、転校生のあおいちゃんがいっしょに帰ろうと声をかけてくれます。うれしいさくらちゃんは、つい、家が遠いと嘘をついてしまって…。

【オススメポイント】
これを読んで「そういうこともあるよね」「わたしもそうだなあ」と感じる子は多いのではないでしょうか。そんな子どもの気持ちに寄り添った描写がすてきな一冊です。

そして、子ども目線のさまざまな心の動きを読むことで、いつか自分が同じような経験をしたときに、「絵本でもこんなことがあったな」と思い出して、自分の心理状態をメタ認知できることにもつながります。一度、絵本の中で心理的にいろいろな経験をしていると、似たような気持ちに出合ったときに、自分の気持ちを客観視できるようになります。

やがて、自分だけでなく、周りの子や友だちが同じような状況にあるときに、「今、こんな気持ちじゃないかな」と想像することができるようになり、それが思いやりの気持ちにもつながっていきます。このような、子どもの心理描写がわかりやすく描かれている絵本をたくさん読んであげたいですね。

友だちになったきっかけの絵本『あのときすきになったよ』

作/薫くみこ 絵/飯野和好 1,320円(税込) 教育画劇

【あらすじ】
おしっこをよく漏らす、“しっこさん”は、わたしのうしろの席に座っているクラスメイト。ときどき、わたしの邪魔をするしっこさんがあまり好きではありませんでした。あるとき、クラスで飼っていた金魚が死んでしまいます。クラスの子が水槽に牛乳を入れて死なせてしまったのですが、「ごめんで すめば けいさつは いらないよ」としっこさん。先生はしっこさんを叱ったけど、わたしはしっこさんのことばになるほどね、と感心し、ふたりの関係が少しずつ変わっていきます。

【オススメポイント】
最初のころ、わたしはしっこさんのことがあまり好きではなかったけど、ちょっとしたきっかけで仲良くなっていく…。この関係性の進み具合が、なんとも子どもらしい等身大のリアルさをもっていて、物語に共感しながら友だちについて考えることができる一冊です。

金魚を死なせてしまった子が「ごめんなさい」と謝ったとき、しっこさんが「ごめんで すめば けいさつは いらないよ」と言ったことに対して、わたしは“なるほどね”と感じる場面。こんなふうに、時に非道徳的なことに共感してしまうときってありますよね。人生は、道徳教材のようなことばかりではありませんから。そんなリアルな感情の部分も、お子さんといっしょに味わいながら読んでみてほしいですね。

タイトルにある、好きになった「あのとき」とは、いつのことなのか、考えてみるのも楽しいですよ。

隣の席の友だちは怪獣…!?『となりのせきのますだくん』

作・絵/武田美穂 1,540円(税込) ポプラ社

【あらすじ】
わたしの隣の席はますだくん。机に線を引いてここから出たらぶつぞと言ったり、消しゴムのカスがはみ出したら椅子を蹴ったり。わたしにとっては怪獣みたいにこわいクラスメイト。

ある日、そんなますだくんとわたしはけんかをします。お気に入りの鉛筆をますだくんに折られてしまい、消しゴムを投げたらびっくりしていたますだくん。ふたりの仲はどうなるのでしょうか?

【オススメポイント】
大人が読むと、この本のメッセージはなんだろう?と考えてしまいがちですが、必ずしもそれを明確にしなくて大丈夫。ますだくんの立場、主人公のわたしの立場、いろいろな目線から物語を味わうこともとても大切です。

たとえば、大人が見れば、仲よくなりたい子にちょっかいを出したいますだくんの行動に気づけますが、子どもにとっては、なかなかわからないものですね。クラスにますだくんのような乱暴な子がいたとき、「わたしもいやな気持ちになったな」とか「そうそう、怪獣にしか見えないよね」と主人公に共感しながら自分の気持ちを消化していったり、さらに読み込むと、「こういうことをしちゃったら、学校に行きたくなくなっちゃうよね」と感じたり。そのようにして、人物に共感しながらさまざまな気持ちに気づくことができたらいいですね。

メッセージを伝えたい『すきなものがちがうけど』

作/リンダ・アシュマン 絵/イヴ・コイ 訳/福本友美子
1,760円(税込) ほるぷ出版

【あらすじ】
「ロケット だいすき。」「きしゃが いいな。」
「あついひ だいすき。」「さむいひ だいすき。」
ふたりは、すきなものを教え合うなかで、ふと気づきました。
「すきなものが、ぜんぶ ちがうよね?」でもふたりはとっても仲良し。自分とは違っていても、お互いを認め合って仲良くなれることを教えてくれる友だち絵本です。

【オススメポイント】
園にも小学校にも、実にいろいろな子どもがいます。子どもたちはみんな、それぞれの家庭の文化や親の価値観に大きな影響を受けているからです。当然、好きなもの、考え方、言葉づかい、行動などがみんな違うわけです。

そんな中で子どもは、自分がこれまで見たこともないような行動をしたり聞いたこともない言葉をつかったりする友だちに出会います。そして、驚いたり怖さを感じたりしながらも、自分と違う友だちと人間関係を作っていくのです。この『すきなものがちがうけど』という絵本は、そうした子どもたちが感じているちょっとした違和感に寄り添いつつ、それを乗り越えることの大切さを教えてくれます。

年齢を重ねていくにつれて、お子さんの友だち事情は見えなくなり、親は心配になってきてしまうものです。日ごろから話を聞いたり表情を見たりしてコミュニケーションをとりながら、お子さんがよりよい友だち経験ができるよう、見守っていきたいですね。

この記事の監修・執筆者

教育評論家 親野 智可等

長年の教師経験をもとに、子育て、親子関係、しつけ、勉強法、家庭教育について具体的に提案。著書多数。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても著名。X、Instagram、YouTube、Blog、メルマガなどで発信中。オンライン講演をはじめとして、全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも大人気となっている。

音声配信サービスVoicyの配信番組「コソダテ・ラジオ」の2022年12月の金曜マンスリーゲストとして出演。「家庭での学習習慣」について熱いトークを配信しています。

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