子どもに運動を楽しんでほしい。だけど、どうしたら良いかわからない……。そんな保護者のかたへ。
TVなどで活躍するアクション俳優のおふたりが運営する、「体を動かす楽しさを教える」子ども向け運動クラブへこそだてまっぷ編集部が潜入してきました! また、おふたりが考える「子どもと運動」についても詳しくインタビュー。今日からでもご家庭で実践できることがたくさんですよ。
インタビュー/真貝友香 撮影/田辺エリ イベントレポート/こそだてまっぷ編集部
苦手でも、勝負に負けてもOK! 「遊び」感覚だからこそ楽しんで運動できる!
【内藤好美さん・梶原颯さんインタビュー】

自分自身はあまり運動が得意ではないけれど、子どもには運動を楽しんでほしい……と考える保護者は多いかもしれません。俳優の内藤好美さんと梶原 颯さんは、持ち前の運動能力の高さをアクションや特撮での演技に活かすほか、子供向け運動教室「マチョキッズクラブ」を運営し、子どもたちが運動を楽しむための指導を行っています。
運動が大得意でなくても、楽しむコツ、好きになるコツはある? 親ができる声掛けや、運動を続けるための心構えなど、今日からでもできるアドバイスをたくさんいただきました。
人と比べなくて大丈夫! 自分の中での成長を大事にしよう
現在、実践愛敬館空手道場の館長も務める内藤さんが、空手を習い始めたのは小学生の頃。
小さい頃から、近所に住むお友達と木登りや鬼ごっこ、うんていなど外遊びを通じて体を動かすことに親しんでいた内藤さんは、空手の練習も遊び感覚で楽しんでいたそうです。
梶原さんも幼少期から、運動神経がいいと褒められることが多かったと語ります。ただし、どちらかというと学生時代は勉強熱心な日々で、部活一筋というわけではなかったそう。
運動神経は遺伝すると考えられがちですが、梶原さんは自然発生的なものと捉えているようです。
「僕は幼少期にスポーツ系の習い事をしていたわけではなかったのですが、周りから“運動上手いね!” “すごい才能あるんじゃない?”と褒められることが何度もありました。高校時代も運動部には所属してなかったけど、運動会のレースでは、日本チャンピオンの記録を持っている陸上部のすごい選手に勝ったんですよ!
特別に何かをしたわけというより、自然と運動が好きになっていったので、運動をできる、できない判断したり、人と比べたりするのではなく、楽しいと思えればいいんじゃないかなと思っています。
例えばベンチプレスなら、○○さんは何kg上げたではなく、前は60kg上げるのが限界だったけど、今は65㎏まで上げられる、そんな成長を自分で感じられたらいいのかな。僕たちが運営しているマチョキッズクラブも、そんな気持ちを大事にしている運動教室なんです。」(梶原さん)
「運動が苦手な親御さんは、お子さんと一緒に運動するのは抵抗があるかもしれないので、コーチ気分で声がけしてあげるのもいいと思います。たとえば公園で鉄棒にぶら下がって、“これ10秒耐えられたら、次は20秒に挑戦しよう!”とか、一緒にやらなくても、子どものやる気を引き出せる方法もあるんですよね。最初はレベルを下げたところから始めると、楽しく取り組めると思います」(内藤さん)
「逆に、自分は運動得意だよ!という保護者さんなら、自分の真似をしてもらうのが一番いいかな。“あそこまでかけっこで競争しよう!”とか、一緒に遊び感覚で動いて、できた時にたくさん褒めてあげたら“体を動かす=楽しい”って気持ちに繋がると思いますよ」(梶原さん)
できなくても楽しい、負けても楽しい!
「マチョキッズクラブ」は”誰も取りこぼさない”運動教室
『ウルトラマンブレーザー』での共演をきっかけに意気投合したふたりは、子ども向け運動教室「マチョキッズクラブ」を運営しています。
”どんなお子さんも楽しく運動できる場所”をモットーにするマチョキッズクラブに来るのは、運動神経抜群タイプというよりは、どちらかというと運動は苦手というお子さんが多数派だそうです。
「マチョキッズクラブでは誰も取りこぼしたくない。そんな気持ちを大事にしています。
“うちの子は運動会でも徒競走が最下位で”……とおっしゃる方もいらっしゃいますが、“最下位でも別によくない?”という考えです。参加したことがOK、自分ができたことがOKで、基本的には勝ち負けにはこだわりませんし、勝ったら嬉しい! だけど負けても楽しい! というスタンスなんです。逆に“負けたから何?”くらいの気持ちを育ててもらいたいですね。」(内藤さん)
「そうそう。負けても、よく頑張ったね! ここが良かったよ! など、とにかく褒めることを意識しています。その上で“ここを工夫するともっと良くなるよ!”と付け足す感覚ですね。」(梶原さん)
「苦手意識があっても、いざ教室に入って、親以外の大人から教わると意外とすんなり聞ける部分もあったりするんですよね(笑)。家庭内で悶々とするよりは、外部でプロに頼ると道が開けることもあると思いますよ!」(内藤さん)
ゲームや勉強、人それぞれの好奇心に合わせたアプローチで運動に関心を持たせることもできる!
アスリートとして、指導者として、多様な競技への経験と知見を誇るふたりは、「運動に関心を持ってもらうためには、様々な角度からのアプローチが可能」だと語ります。運動と言っても、走ることやスポーツがすべてではなく、より広い意味で捉え、それぞれの興味・嗜好に組み合わせる提案をしてくれました。
「私自身、運動は好きだけど実は走るのはあまり得意じゃないんです。お子さんも同じように水泳はできそう、ダンスは好き、など興味の矛先を探してもいいかもしれません。たとえば、何でもよじ登っちゃう子ならパルクールの体験教室に行ってみる。楽しければ続ければいいし、なんか違うなと思ったらほかのものを探せばいい。
いろいろ考えたり探したりしたうえで、やっぱり運動には興味が持てない、勉強している方がいいという場合は、勉強中に体が縮こまってしまわないようにストレッチをしてみるのはどうでしょう。握力を鍛えたり、手先やつま先を動かしたりするのは脳への伝達という観点で勉強にもいい効果が出るという研究結果もあります。
そうやって、一人ひとりの興味の方向性にアプローチするだけでも、運動を好きになる導入になると思いますよ。」(内藤さん)
「マチョキッズクラブだと、『ウルトラマン』シリーズや、SASUKEに出演したことで、僕たちのことをヒーローだと思って教室に来てくれるお子さんがたくさんいます。それを考えると、憧れの人に会えるからとか、その人みたいになるために運動してみるというきっかけもアリじゃないでしょうか。
その人に近づくためのアイテムを取り入れるのも良いですね。たとえば、筋トレの後にはプロテインの摂取が欠かせないので、“これを飲んで筋トレしたら、あの人みたいになれるのかな?”と思えたら、運動がより楽しくなると思いますよ!」(梶原さん)
「実際、颯の筋肉は子どもたちに大ウケしているもんね(笑)! 私も子どもの頃、よく『筋肉番付』を見ていたので、SASUKEは印象に残っています。
私は、個人的にはトレーニングするときのウェアにこだわっています。激しいトレーニングをする日は赤にしようとか、一緒に運動するコミュニティによっては黒にしようとか、色合いやテイストを変えるのは気分もアガりますよ。」(内藤さん)
また、多くのお子さんが夢中になっているゲームやスマホも、”子どもが何かに興味を持っている状態”を大事にしてほしいと言うふたり。
eスポーツのようにデジタルとスポーツを掛け合わせたものや、YouTubeでスポーツのコンテンツを一緒に見るなど、子どもの興味から運動の接点を探してみることも十分可能だと語ります。
「私は乗馬が趣味なので、特に何もしないときは乗馬チャンネルを流しっぱなしにしたりします。ゲームをしながらも、テレビではスポーツ番組や中継を同時に流しておくと、映像だけでも目に入ってくるだけで、興味を持てたり、意識が少し変わったりするんじゃないかなと思います。」(内藤さん)
また、運動に対して既に苦手意識を持ってしまっている子、「運動なんて嫌い!」と思ってしまっている子に対しても理解を示すふたりは、保護者ができることとして、次のように提案してくださいました。
「本当に動くのが嫌とか、元々体力がない場合もあるし、学校の授業でできないとか比べられるのが嫌だ……ってパターンもあると思います。
学校では、先生方も全員を同じレベルに底上げしたい気持ちから、できる子に合わせて強度を設定することもありますよね。できない、もう無理、と思ってしまった子に対しては、「嫌なら無理をしなくていいし、学校ではなく別の場所で体を動かすことが楽しめそうなら、そこに行ってみよう」って提案してあげると、苦手意識を克服するきっかけになるんじゃないかな」(内藤さん)
モチベーションが低下しているとき、強度を下げてちょっとでも続ける?or いっそ休んでみる?
いざ運動を始めても、思うように上達しない、目標までたどり着けない……など失敗や挫折はつきもの。継続が重要だからこそ、モチベーションをどう保ち、気持ちを切り替えるのが良いか尋ねると、ふたりからはそれぞれ方向性の異なる答えが返ってきました。
「僕の場合、トレーニングは習慣化されてしまっていて、やらないとむしろ気持ち悪いくらいにはなっていますが、もちろん“今日はちょっとやる気がわいてこないな”って日もあります。でも少し量を減らしたり、調整したりしながら続けると“やっぱりやってよかった! やると気持ちいいな”って思えるんですよ。運動量を少し減らしたからといって、その後もずるずると引きずられないのは、もうリズムになっているからでもありますね。」(梶原さん)
「私は中学生の頃、すべての習い事が嫌で、空手も行かなかった時期があるんです。友達と遊びに行きたい! ゲームセンターに行ってプリクラを取りたい!って(笑)。
結果的に半年くらい休んだら、ある時ふと“もう十分休んだし、やっぱりまたやろうかな”と思えたので、通い出したら先生たちも“おお、久しぶり!”って気軽に声をかけてくれて、そこから今まで続けています。女性は特にホルモンバランスもあるから大人になってからも“今日は動けない”って日がありますよね。私もそういう時は、ストレッチだけして、水を2リットルだけ飲もうってハードルを下げて、これだけできたからOK! って考えるようにしています。
でもやる気って勝手に出るものではなくて、颯が言うように、動くと出てくるものでもあるので、無理やりやって、小さいハードルを超えることで解決できる場合もあるかもしれません。
だから嫌だなってときは少し休んでみる、距離を置いてみる、もしくは強度を下げて小さな“できた!”を増やしていくといいんじゃないかと思います。」(内藤さん)
どうすれば子どもが運動に取り組めるか、行き詰まってしまったら家庭内だけで悩まずに気軽にマチョキッズクラブのような教室に遊びに来てほしいとふたりは口を揃えます。「たとえ継続的に通わなくても、一回遊びに来てくれたら、何かしら問題解決の糸口が見つかるはず」と内藤さんも語るように、まずはプロに相談してみるのも一つの手かもしれません。
「こうしなくてはいけない」と1つのルールに決して縛られることなく、多様な選択肢やアプローチに言及してくれたふたり。特にマインドセットは運動に限定することなく、大人も参考にしたい部分がたくさん。しなやかでタフなふたりの言葉に説得力を感じるひと時でした。
ふたりが繰り返し強調していたのは「楽しむこと」や「褒めること」といったポジティブさと、勝ち負けや他人との比較にこだわりすぎない大らかさ。周囲のサポートをうまく借りながら、お子さんの成長を見守っていけたら良いですね。
子どもたちがみるみる笑顔に! ふたりが運営する運動クラブ「マチョキッズクラブ」とは?
そんな内藤さん、梶原さんが主催する「マチョキッズクラブ」に、こそだてまっぷが潜入してきました!
秋も深まる時期に開催された今回のテーマは「ハロウィン」。みんな、ヒーローや怪獣、黒猫など、思い思いの仮装をしての参加です。
ハヤテコーチ(梶原さん)とコノミン(内藤さん)の呼びかけで集まったら、まずはみんなで大きな木の下までダッシュ!
梶原さんと競走するほど走るのが得意な子もいれば、恥ずかしくて保護者のもとに戻ってしまう子も。運動が嫌いでも、みんなと一緒にできなくても、その子ができること・やりたいことを探りながらサポートしてくれます。コーチたちの目が全員に行き届くよう、クラブでは毎回人数制限を設けています。
一度は体験したことがある基本の準備運動も、憧れの人と一緒にするのはやっぱり特別。梶原さんに「声出そう!」と言われて、元気な声が公園に響きます。
続いてのメニューは「氷オニ」。梶原さん扮するマッチョなゾンビから逃げ回ります! 氷漬けになってしまった人は、元気な人にタッチしてもらうと氷が解けるルール。「助けてー!」の声に、逃げ回りながら仲間を助ける姿も多く見られました。
怖くて泣きそうになってしまった子もいましたが、内藤さんやコーチたちが優しく名前を呼んでみんなの輪に送り出してくれました。少しでも「みんなと一緒にやった」「仲間に入れた」という経験が大切だと、内藤さんは語ります。
スクワットや腕立て伏せを取り入れた本格的な運動も、「早く10回やり終わって、コーンを取ったほうが勝ち」とエンターテインメント性を持たせることで楽しくクリア。
負けたら近くの木まで走る罰ゲーム付きでしたが、勝ち負けにこだわることなく「負けちゃったー!」とみんな笑顔で走っていきます。
氷オニで培った絆から、初対面の子ども同士で自然と助け合いが生まれている姿も印象的でした。
他にも、横跳びと前跳び、四足歩行(ハイハイ)などの運動、リレー選手からの「速く走るコツ」の伝授など、おうちで行うのは難しいメニューがたくさん。
「マチョキッズクラブ」は、猛暑などの例外を除きほぼ毎回が屋外での開催。思い切り動ける、広い場所で行うのも、運動の楽しさを味わうのに効果的なんだとか。
最後に、今日習ったことを活かしてチーム対抗リレー! 「がんばれー!」の声が止まない白熱の時間!
最後に、名前入りの賞状をもらって、楽しい時間は終了。
クラブの様子を見守っていた保護者の方々は、「うちの子があんなに楽しそうに走っているのを初めて見た」「また参加したい」と保護者同士で語り合うなど盛り上がっていました。
参加者の保護者の方々にお話を伺うと、小さなころから体を動かすのが苦手な子、発達特性から人と関わるのが不得手な子、体操教室に通っていて運動が得意な子、と子どもたちのバックグラウンドは多種多様。
それでも参加した全員が笑顔になるのは、「マチョキッズクラブ」の「誰ひとり取りこぼさない」という理念の強さ、一人ひとりへの目配りの丁寧さの賜物と感じました。
「マチョキッズクラブ」は、不定期開催。募集の際は内藤さん、梶原さんのSNSで告知が行われます。
子どもの「体を動かすのって楽しい!」を丁寧に手ほどきするプログラム。プロの力を借りたくなったときには、頼ってみるのもいいですね。
内藤好美(ないとう・このみ)
1994年11月18日生まれ。太田プロダクション所属。
アクション俳優。実践 愛敬館空手道場館長、SAVAS公式アンバサダー、NIKEオフィシャルトレーナー。
2023年『ウルトラマンブレーザー』ミナミ アンリ役、2024年『爆上戦隊ブンブンジャー』ステア役など。
自らが館長を務める愛敬館空手道場での指導のほか、子ども・大人をそれぞれ対象とした運動教室や、女性向け護身術クラス、一般向けのストレッチ講座などを開催し、精力的に活動中。
X(旧Twitter)▼https://x.com/konoooomin
Instagram▼https://www.instagram.com/_ko._.no_/
梶原 颯(かじはら・はやて)
1994年06月04日生まれ。
アクション俳優。VITAS公式アンバサダー。
2023年『ウルトラマンブレーザー』バンドウ ヤスノブ役、2024年『横浜キョンシー』世音ソラ役など。
2020年よりTBS系列『SASUKE』に出場。1stステージ歴代最速タイムをたたき出すなど、その身体能力を活かし、演技だけではなくアスリートとしても活躍中。
X(旧Twitter)▼https://x.com/kajikajihaya
Instagram▼https://www.instagram.com/hayate_kajihara
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